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書籍『満月珈琲店の星詠み』

望月麻衣・桜田千尋 2020 文春文庫

Twitterで見たそのイラストがとても魅力的で、すぐにそのアカウント、桜田千尋さん(@ChihiroSAKURADA)さんをフォローした。
疲れた人の前にあらわれるトレーラーカフェ。店長のふっくらとした猫の穏やかな表情と、美しい空。
夜明けになると閉店し、いずこともなく消えていく、そんなお店。
そのコンセプトだけで、十分に物語を感じることができる。
やがて、次々に天空や星空にちなんだメニューのイラストも紹介されるにつれて、そのお店がないことのほうが不思議になるような存在感を感じている人もいるのではないか。私のほかにも。

その満月珈琲店が小説化されたものが、本作になる。
京都を舞台にした、優しい物語となっていた。
最初は京都の街中の、あのぎゅっと凝縮したような空間のどこに、星空の広がるカフェを登場させるのかがわからなかったが、そこはそこ。
二条のあたり、木屋町でとか、かつて歩き回った地名がそこここに出て来て、それもまた、私には懐かしい思いがした。
伏見桃山は二年前だったか。研修で行ったところであるし。暑い暑い日、御香宮の前を通って、名前の美しさにうっとりしたこともよく憶えている。

もとのイラストから浮かぶイメージに、星詠みという占星術の要素を加えてあるところが、なかなか興味深かった。
思わず、自分のホロスコープを調べてしまったりしたぐらい。

人生に迷っている人に、星が未来を示し、おいしいスイーツやドリンクが元気を与える。
こういうお店に私は行きたい。

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