あたしとあなた
谷川俊太郎 2015 ナナロク社
美しい装丁に惹かれて手に取った。
箔押しの表紙に、青い薄紙のページ。
海に潜るような、空に昇るような。
言葉は軽やかなのに、けして分厚くはないのに、ずっしりとした読後感。
あたしとあなた。
そばにいるのに、わかりあえない。
あたしとあなた。
二人でいるのに、孤独が深まる。
あたしとあなた。
二人でいるから、対立してしまう。
まだ若く、未来に時間が多くあり、エネルギーがあり、共にあることを喜びとする「あたしとあなた」ではない。
共に生きてくることはできたけれども、共に死ぬことはできない、老齢期の「あたしとあなた」の言葉たちのように感じた。
もしかしたら、どちらかが認知機能の衰えから疎通性が低下していたり、他方を認知することが難しくなっているのかもしれない。
また、もしかしたら、それぞれに死期を迎えていたり、片方はすでに思い出のなかの人となってしまっているのかもしれない。
そんなひりひりとした孤独と、絶望を通り過ぎた諦念だけが持つ儚さ、軽やかさが、悲しくなった。
悲しくて、悲しくて、泣くことさえ許されない。
そんな風に、もの悲しい気持ちでいっぱいになった。
きっといつか、自分もまたこんな風に別れていくのだろう。別れるしかないのだろう。そんな未来を見せられた気がしたから、かもしれない。
あたしは
神を
探しに行く
迷子に
ならないように(pp.56-57)
迷子に、ならないように。
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