学園ゴーストバスターズ2:夏のおもいで
三國青葉 2018 小学館文庫
恭夜と冴子の冒険譚の第二弾だ。
死者を説得する一色家の男児、憑かれやすい体質の恭夜。勉強は嫌い、ゲームが大好きな、心優しい男の子だ。
憑かれることにも慣れてきたのか、自ら進んで、霊を引き受けようとするようになった。
あんまり気軽に申し出るから、そのうち、取り返しがつかないような大事に巻き込まれないか、心配になる。
死者を斬る刀を顕現させる望月家の女児である冴子。勉強もできるし、家事も手伝うし、まじめでしっかり者の女の子だ。
魔を払う特別な刀を授かってはいるが、恭夜を守ろうと刀を手に取ることはしても、それを振るうことは滅多にない。
死者たちと関わり合ううちに、生きている人間に関わろうとするようになりつつある成長を、応援したい。
死者との関わり合いが、子どもたちを育てていく。
子どもの頃に命を助けてくれた医師に恩返しをしたい、高齢の女性。
娘と孫に会って謝りたかった、中年の男性。
かなわなかった初恋の痛みを教えてくれる、若い女性。
そして、昔、戦で死ななければならなかった、幼い少女。
霊になるほどの未練を、子どもたちが丁寧に接することで、彼らはほぐしていく。
その心残りであったものに触れるたび、ぽろぽろと泣きながら、子どもたちは生きることの大切さを学ばせてもらっていくのだ。
1巻では霊たちが成仏していくところまで描かれていたが、この『夏のおもいで』はその手前で章が終わる。
それがまた、よかった。
死者と正者のあわいを希薄にし、延長線上に位置することを感じさせられた。
この物語の中の死者は、得体のしれない恐いものではない。変質し、断絶したものではない。
もう死者となってしまった彼らも、在りし日には正者であり、人にはそれぞれの歴史があることを教えてくれる。
物語の舞台となっているのは、都会ではない。
地名がはっきりと出てくるわけではないが、あまり尋ねたことはない土地を景色を思い浮かべる。
地方都市というか、田舎町というか、兼業農家や専業農家も少なくはない景色。
夏の濃い緑、鼓膜を打つセミの声、影の長い夕暮れ、銀色に輝く川面。
商店街の道幅は狭く、少し色あせた看板やビニールの屋根もあり、町中が顔なじみで繋がっているような。
子どもが、子どもだけで、自転車でほんの少し遠出しても大丈夫な、そういう町。
その上、ご飯が美味しそうで、読んでいるとこちらまでお腹がきゅうと鳴きそうになる。
なんといっても、町子さんのおそばが美味しそう。
子どもたちが美味しいものを食べて、心置きなく笑い、ぐっすりと眠れる日々が、どれだけ貴いものか、今一度、思いを馳せることができた。
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