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【驚愕】映画『リアリティ』の衝撃。FBIによる、機密情報をリークした女性の尋問音源を完全再現(リアリティ・ウィナーの物語)

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映画『リアリティ』は、「FBIが実際に録音した音声データ」を完全再現したという異色作。何故彼女は”反逆者”となったのか?

恐らく前代未聞だろう、衝撃的な構成の作品

なかなかに凄まじい映画だった。特に調べたわけではないからあくまでも予想でしかないが、恐らく「前代未聞」と言っていい構成の作品ではないかと思う。

なにせ本作は、「FBI捜査官が録音していた音声データのやり取りを一言一句完全に再現した映画」なのである。そんな作品、まず通存在しないだろう。

この音声データをどのような経緯で入手したのかは不明である。流出したのか、あるいはFBIが公開したのかなどについては分からないという意味だ。ただ、本作中でFBI捜査官から尋問を受けるリアリティ・ウィナーは、本国アメリカではかなり注目の存在だそうで(その理由は、本作を観れば理解できるだろう)、彼女への関心が悪い方向に向かないようにFBIが敢えて公開した、みたいな可能性もあるのではないかと感じた。

そう感じた理由の1つは、音声の一部が意図的に”消されている”からだ。作中には、音声データを文字起こしした文面も時々表示されるのだが、音声が消されている部分は文面の方でも黒塗りになっている。となると、「FBIがオフィシャルに公開した音源で、一部都合の悪い部分だけ伏せている」と考えるのが自然ではないかと思う。とはいえ、音声が消されている箇所は本当にごく僅かである。ほぼすべてのやり取りが音声データとして公開されていると考えていいだろう。

本作のような試みがこれまで存在したことがないとは言い切れないが、普通に考えてなかなか存在し得ない作品と言えるだろう。本作は、分類上は「フィクション」なのだと思うが、実質的には「ドキュメンタリー」と呼んでいい作品だと私は考えているのである。

リアリティ・ウィナーは一体何をしたのか?

では、本作の主人公リアリティ・ウィナーは、一体何の嫌疑でFBI捜査官から尋問を受けているのだろうか? まずはその辺りの話から始めていこう。ちなみに公式HPによると、本作とは別に彼女の伝記映画の制作が決定しているそうだ。彼女は恐らく、アメリカでは「知らぬ者のいない人」なのだろう。しかし、私は本作を観るまで彼女の存在をまったく知らなかったし、恐らく多くの人も同じではないかと思う。ちなみに、「第2のスノーデン」とも呼ばれているそうで、その呼称から何をしたのか想像出来る人もきっといるだろう。

25歳のリアリティ・ウィナーは当時、アメリカ国家安全保障局(NSA)の契約社員だった。諜報に関わる言語専門官のような立場で、普段はペルシャ語を英訳する仕事に従事している。他にも、ダリー語やパシュトー語なども得意だという。本当はアフガニスタンに派遣されるような仕事に就きたいと考えているのだが、その希望はなかなか叶わない。そのため、今はNSAで働いているというわけだ。

そしてそんな彼女はある日、ある情報をNSAから持ち出しメディアにリークした。リークしたのは、「2016年のアメリカ大統領選に、ロシアのハッカーが介入したかもしれない」という趣旨の報告書である。2016年の大統領選といえば、世界中が驚いた「ドナルド・トランプが大統領に選出された」時のものだ。そして彼女がリークした情報によって、「トランプ大統領の誕生は、ロシア政府によって仕組まれたものだったのではないか」という疑惑が生まれ、アメリカ中を大騒ぎさせることになったのである。彼女が、同じくかつてNSAに在籍していたエドワード・スノーデンにちなんだ呼ばれ方をされているのも納得と言えるだろう。

そんな彼女の元にFBI捜査官がやってきたのが2017年6月3日のこと。スーパーで買い物を終えたリアリティを、2人の男性捜査官が待ち受けていたのである。彼らはリアリティに、「君は機密情報の扱いを誤った可能性がある」と最初に伝えた。しかしそれからしばらくの間、核心となる話をしようとはしない。「令状はあるが、任意で協力してもらいたい」「ここで話してもいいし、我々のオフィスが近いからそこでもいい」「この犬は噛むか?」「食料品は、後で我々が冷蔵庫に入れておこう」「武器は持っているか?」など、世間話に近いやり取りが記録されていた。

2人の捜査官以外にもFBIの人間が大挙して押し寄せており、令状を元に家宅捜索が進んでいる。どうやらそれが落ち着くまでは、直接的な尋問は行わないと決めているようだ。そして家宅捜索が一段落したタイミングで、本人の希望通り、彼女の家のほぼ使用していない部屋で事情を聞くことになるのである。

とてもリアルな臨場感が記録されている

本作ではまず、本格的な尋問に入る前のやり取りがなかなか興味深かった。そういうマニュアルがあるのかどうかは知らないが、これから話を聞こうとしている相手の気持ちをほぐそうと考えているのだろう、FBIとの会話とは思えないやり取りが展開されるのである。飼っている犬が保護犬であることや、ジムでウエイトリフティングをやっていることなど、事件そのものとはまったく関係ない話であり、当然、尋問の際にこの時の話題が蒸し返されることもない。本当に、「単なる雑談」という感じである。

しかしだからこそ、凄まじくリアルだとも思う。この冒頭のやり取りは特に「映画的ではない」と感じたのだが、やはりそれは「実際の音声データを再現している」からだろう。冒頭ではとにかく、「核心に触れない形で少し会話の糸口を探ろう」「可能な限り威圧感を抱かせないように関わろう」という、FBI捜査官のスタンスがよく表れていたように思う。

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