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【家族】映画『女優は泣かない』は、蓮佛美沙子が「再起を賭ける女優」を演じる笑い泣き満載の作品(出演:伊藤万理華、上川周作)

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映画『女優は泣かない』は、役者もストーリーも素晴らしい作品!特に蓮佛美沙子が素敵な笑わせ泣かせるハートフルコメディ

とても素敵な作品でした。正直なところ、これと言って何かが起こるような物語でもないし、舞台設定も実にミニマムです。それでも、「良い映画を観たなぁ」という感覚になれる素晴らしい作品だなと思います。

まずは内容紹介

主人公は、デビュー10年目の女優・安藤梨花。本名は園田梨枝。元からさほど活躍できていたわけではないのだが、あるスキャンダルが報じられたことですっかり落ち目になってしまう。そんな彼女に、再起を賭ける意味を込めて社長がある仕事を持ってきた。それが、「女優・安藤梨花の密着ドキュメンタリー」である。

その撮影のために梨枝は、久々に地元・熊本に降り立った。しかし、空港には誰もいない。社長に確認すると、当初彼女に付く予定だったマネージャーは別の現場に行くことになったのだという。つまり、一人でなんとかしろというわけだ。そしてそこにやってきたのが、イダテレのディレクターを名乗る瀬野咲。梨枝が「プロデューサーとか来ないの?」と聞くと、瀬野は「予算無いんで」と返す。その後彼女は、何かある度に「予算、予算」と口にするようになる。

その「予算」の話は、宿泊場所にも影響を及ぼした。瀬野は事務所の社長から、「安藤梨花は実家に泊まる」と聞いていたそうで、そもそもホテルは押さえていない。梨枝は「自分で出すからどこかホテルへ連れて行って」と瀬野に言うが、たどり着いたのはなんとラブホテルだった。撮影地周辺に近くて安いホテルなのだそうで、瀬野はここに泊まるという。さすがにそれは無理だと思い、自力で探すことにして瀬野と別れるが、スマホの充電は切れてしまい、田舎道には人も車も無い。それでも、偶然通りかかったタクシーをどうにか止めたところ、その運転手がなんと、高校時代の同級生サルタク(猿渡拓郎)だったのだ。落ちぶれた身でもあり気まずい再会となったが、知った顔なら遠慮は要らない。梨枝はホテルに連れていってくれとサルタクに頼み、そのまま後部座席で眠りに落ちた。

しかし、着いたと言われて目を覚ますと、なんと梨枝の実家の目の前ではないか。話が違う。しかしサルタクは、梨枝が家族に会うことを単に恥ずかしがっているとでも思ったのか、梨枝を置いてそのままタクシーを走らせてしまった。

覚悟を決めるしかない。実家に泊まる以外、他に選択肢はないのだ。

梨枝は、10年前に啖呵を切って飛び出した実家の玄関を久々にくぐった。母親が亡くなり、男手一つで3姉弟を育てた父とは、喧嘩別れしたままだ。そうやってしばし思い出に耽っていると、弟が帰ってきた。梨枝は弟に「帰ってきたこと、真希姉には黙ってて」と頼み込み、他の家族に挨拶もしないままドキュメンタリーの撮影に入る。

しかし、この撮影が大問題だった。瀬野が考えてくるプランは、いわゆる「ヤラセ」ばかりだったのだ。そのことを指摘すると瀬野は、「ドキュメンタリーにも演出は必要なんで」を繰り返す。しかし実は、ずっとバラエティ畑にいた瀬野には、ドキュメンタリーの撮り方など分からないのだ。

日々、瀬野との関係が悪化していく中、当然のことながら梨枝の帰還は姉・真希の知るところとなり、燻り続けていた家族の問題が再燃する……。

コメディな雰囲気からシリアスな展開へとガラッと変わっていく物語

本作は、冒頭からしばらくの間、とにかくコメディタッチで物語が進んでいきます。構図はとても分かりやすくて、「『どう考えてもあり得ない指示ばかりする瀬野』に『ドキュメンタリーの経験がなく、どう振る舞うべきか分からない梨枝』が振り回されていく」という感じです。普通ならなかなか成り立たない設定でしょうが、本作の場合、「梨枝がスキャンダルで落ち目になっている」という状況がとてもよく機能していると言えます。それなりにキャリアがあり、そこそこ名の知れている女優が、「ドキュメンタリーの何たるか」を理解していないだろう若手ディレクターの指示に嫌々ながらも従うのは、「もしかしたらこの仕事が、復活のきっかけになるかもしれない」と考えているからなのです。

梨枝としてはとにかく、瀬野の指示に従うのは癪でしかありません。しかしだからと言って、落ち目の彼女には他の仕事など無いのです。だから、女優としてこれからも生きていくのであれば、多少プライドを捨ててでもこのドキュメンタリーをやりきるしかありません。これが、梨枝が置かれた状況です。

そんなわけで、冒頭からしばらくは梨枝の状況がメインで映し出されるわけですが、しばらくすると、実は瀬野も似たような状況にいることが分かってきます。彼女は元々ドラマ志望で制作会社に入社したのですが、配属されたのはバラエティでした。バラエティの仕事はどうにも向いていないとしか思えないのですが、上司にいくら相談しても、「まずは与えられた仕事で結果を出せ」と言われるばかりです。

そんな中、安藤梨花のドキュメンタリーの話が降って湧いてきます。そこで上司は瀬野に、「このドキュメンタリーで上手くいったら、ドラマ班に俺から推薦してやる」と瀬野の前にニンジンをぶら下げることを思いつきました。上司のその言葉を信じた瀬野はこうして、「何が何でもこのドキュメンタリーで結果を残さなければならない」と考えているというわけです。このような状況に、彼女は置かれています。

つまり、どちらも割と崖っぷちにいるのです。

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