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【驚愕】一般人スパイが北朝鮮に潜入する映画『THE MOLE』はとてつもないドキュメンタリー映画

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ドキュメンタリー映画『THE MOLE』は、元料理人が北朝鮮に潜入し極秘情報を手に入れる、フィクションとしか思えない衝撃作

『THE MOLE』は、映画館で予告を観た時から絶対に観ようと決めていた映画だ。とにかく、予告映像に詰め込まれた情報だけでも圧倒されてしまうほどだった。

なにせ、「元料理人であるデンマーク人の一般人が、スパイとして単独で北朝鮮に潜り込み、世界が仰天するような様々な真実を白日の下に晒す」という映画なのだ。しかも、その10年間の活動を、ドキュメンタリー映画として上映するという。予告を観ても、何をどうやったらそんなことが可能なのか、さっぱり理解できない作品だった。映画を観ている間もずっと、「この映画、ホントにドキュメンタリーなのか?」と疑問を抱き続けていたくらいだ。

映画を観終えた後、公式HPを見てみると、こんなことが書かれていた。

ちなみに本作は、昨年秋に英国BBCと北欧のテレビ局、今年2月には「潜入10年 北朝鮮・武器ビジネスの闇」という題名でNHK-BSにて放送され、大きな反響を呼んだ。あまりにもショッキングな内容ゆえに「本当にドキュメンタリーなのか?」という声が各方面から上がったが、専門家による映像の鑑定を行ったブリュガー監督は100%ノンフィクションだと言明。すでに国連とEUも本作の告発に関心を示しており、今後新たな国際調査へと発展していく可能性もあるという。

やはり、誰が観たって「本当にドキュメンタリーなのか?」と感じてしまうような映画というわけだ。これで「フィクションでした」なんて言ったら監督の人生は終わりだろうから、映し出されていることはすべて真実なのだと考えていいのだろうと思う。

また、この映画の監督がマッツ・ブリュガーだと知って、なるほど彼ならこれぐらいのことはやるかもしれないな、と感じた。私はこれまで、『THE MOLE』を含めて3作、マッツ・ブリュガーのドキュメンタリー映画を観てきた。他の2つは、『ザ・レッド・チャペル』と『誰がハマーショルドを殺したか』である。

どの映画も「イカれてる」としか言いようがない作品であり、ドキュメンタリー映画監督としても人としてもちょっと常軌を逸しているのだと思う。そして、そんな人物がこの映画の監督なのだと知って、映画の異常さには納得させられた。

ただ、後で詳しく触れるが、この映画は、マッツ・ブリュガー発案の作品というわけではない。元料理人が彼に映画制作を持ちかけたことで生まれたのである。

それではまず、この映画がいかに特異なのかから説明していきたいと思う。

北朝鮮の「秘密」を次々に暴き出すのは、デンマーク人の元料理人。そんな信じがたいドキュメンタリー映画

この映画で映し出されるのは、「北朝鮮という国家のヤバさ」である。一般人がスパイとして北朝鮮に潜入し、次々と知られざる秘密を暴き出していく。しかもその様子を堂々とカメラで撮影しているのだ。隠しカメラの映像もあるが、基本的には、手持ちのカメラで北朝鮮内部を撮っている。ある時など、スラム街にある廃墟の地下に作られた豪勢な高級レストランで行われた「秘密の契約」の様子を、契約にはまったく関係ない主人公が、手持ちカメラで当たり前のように撮影しているのだ。

映画で明かされる事実は様々である。以前から噂されていた通り、北朝鮮が「覚醒剤や武器の製造に関与していること」を明確な証拠と共に明らかにした。さらに、軍事の専門家ですら把握していなかった「北朝鮮製の兵器の価格表」を持ち出し、専門家を驚かせる。また、平和的な組織として知られている「KFA(北朝鮮親善協会)」のトップが、覚醒剤や武器の製造に関与していることさえも明らかにするのだ。

とにかく、出てくる情報に圧倒される。

これまで私は、北朝鮮に関する情報を積極的に収集したことはない。しかし、映画や本を通じてそれなりに北知識を得てきたと思う。映画だけに限っても、『私は金正男を殺していない』『トゥルーノース』『ザ・レッド・チャペル』などがそれに当たる。日本で生活する「一般的な人」よりは、多少は多く情報を有していると言えるだろう。

しかしこの『THE MOLE』は、私がこれまでに得てきた北朝鮮に関する全知識をあっさりと凌駕する、とんでもない情報量だった。最初から最後まで、「衝撃をもたらさない映像なんかない」と感じるほどのレベルであり、とにかくひたすらに圧倒されたというのが正直な感想だ。ヤバすぎる。

そして、何にも増して驚かされたのが、そんなスパイ行為を行ったが、元料理人の一般人という事実だ。しかも彼は、これまで諜報組織や軍などに属していたことはないのである長いこと料理人をしていたが、慢性疾患によって働けなくなり、福祉の下で生活している人物だと映画では紹介されていた。

そんなただの民間人が、長い時間を掛けて北朝鮮と信頼関係を構築し、「石油王」に扮した元外人部隊の男と2人で北朝鮮を詐欺に嵌め、その実態を暴き出そうとするのである。

本当に、何がどうなったらそんなことになるのか意味不明としか思えない展開の映画なのだ。そして、そんな驚愕の10年間を過ごした元料理人が撮り溜めてきた様々な衝撃映像を繋ぎ合わせて構成されたのが『THE MOLE』というドキュメンタリー映画なのである。

元料理人ウルリクは、なぜ北朝鮮に興味を持ち、どうして北朝鮮に潜入しようと考えたのか

北朝鮮に潜入しスパイ活動を行ったのは、ウルリクというデンマーク人である。映画では、彼がなぜ北朝鮮に関心を抱いたのか、そこまで明確には説明されない。少していのは、彼の子ども時代のある思い出だ。14歳の誕生日を祝う会に、東ドイツ出身の子も来てくれていたのだが、そこで「一党独裁体制の怖さ」を理解したと語っていた。そして、「地球上で最大の一党独裁体制国家はどこか」と考え、北朝鮮に関心を持ったということらしい。

そう説明されたところで、「メチャクチャ危険を冒してまで北朝鮮に潜入する動機」として相応しいようには感じられないが、実際に言っちゃってるのだから是も非もない。とにかくウルリクは、何らかの理由で、スパイ活動をするほど北朝鮮に強く関心を抱いたというわけだ。

では、ウルリクとマッツ・ブリュガーはどのようにして接点を持ったのだろうか? この話もよく分からない部分が残るのだが、とにかくまずは、マッツ・ブリュガーの映画『ザ・レッド・チャペル』についての説明をする必要があるだろう。ここでは、マッツ・ブリュガーと北朝鮮の関係に絞ってざっくり説明しようと思う。

マッツ・ブリュガーは、「北朝鮮との友好のため」という名目を表看板にしてコメディアン2人と共に北朝鮮入りし、北朝鮮内での撮影を敢行した。もちろん監視ついているし、撮影した映像もチェックされるのだが、彼は絶妙に見事な作戦を立ててある意味で北朝鮮を出し抜き、北朝鮮を大いに馬鹿にする映画『ザ・レッド・チャペル』を完成させる。マッツ・ブリュガーの北朝鮮入りを「友好のため」と信じていた北朝鮮は当然激怒し、それ以来マッツ・ブリュガーは二度と北朝鮮に入国できなくなってしまったというわけだ。

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