【LGBT】映画『リトル・ガール』で映し出される、性別違和を抱える8歳の”女の子”のリアルと苦悩
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男の子として生まれ、「私は女の子」だと主張するサシャの苦悩と、その存在があまりに受け入れられない現実
映画に映し出されるのは、当時小学2年生のサシャという男の子です。しかしサシャは、「自分は本当は女の子だ」と主張しています。そのような現実が切り取られた映画なので、この記事ではサシャのことを「彼女」と呼ぶことにしましょう。
日本では「性同一性障害」という名称の方が一般的かもしれませんが、この記事では「性別違和」で統一したいと思います。サシャは、「性別違和」の感覚を2歳頃には既に感じていて、その苦痛に苦しんでいたというわけです。
私はその事実に驚かされました。まずはその辺りの話からしていきたいと思います。
映画を観てようやく解けた、私が抱いていた「誤解」
性的マイノリティーやLGBTQに関する話は、一昔前と比べて当たり前に話題に上るようになってきたと言えるでしょう。私は、同性婚は認められるべきだと思うし、性転換手術を伴わない性別変更もアリだと思います。スポーツなど、男女差が浮き彫りにならざるを得ない領域についてはまだまだ議論が必要だと感じますが、恋愛・結婚・社会的地位などに関しては、「性的マイノリティーであることによって何ら制限されるべきではない」という考えです。
しかし一方で、私はLGBTQには当てはまりません。私の周りにも、少なくとも私にそうであると明かしてくれた人はいません。過去に1人だけ、「性的欲求をまったく抱けず、セックスをしても何も感じない」という、「アセクシュアル」と呼ばれる状態にあると教えてくれた人がいたぐらいです。なので正直なところ、積極的に情報収集をしようという意識もありません。
そういう「意識低い系」である私にとって、「LGBTQ」に関する事柄はどうしても、「恋愛・結婚面」の問題として強く意識されていたのだと思います。メディアなどで性的マイノリティーの人が取り上げられる際も、「同性のことが好きだと気づいて、初めて自分の性自認に至った」という話が多い印象でした。だから「恋愛を意識する年齢になるまでその自覚は訪れない」のだとばかり思い込んでいたのです。
だからサシャが、2~3歳の時点で「性別違和」を自覚し、その辛さを訴えていたという事実に驚かされてしまいました。
サシャのような、心と身体の性が異なる人を「トランスジェンダー」と呼びますが、サシャのような性自認のプロセスのケースがトランスジェンダーの人にとって「当たり前」なのか「稀」なのか、その辺りは私にはちょっと分かりません。ただ、ネットでちょっと調べると、日本でもサシャのようなケースはあるようなので、頻度こそ分かりませんが、珍しいというほどでもないのかもしれないと感じました。
サシャが昔こんなことを言っていたと母親が語る場面があります。これも、映画撮影時よりもずっと前の話です。正直私は、「自分は男だ」という、心の裡から湧き上がってくるような感覚を実感したことがありません。「男の身体で生まれたし、男なんだろう」程度の認識なのでしょう。だからこそサシャの、「自分の身体は男だけど、実際は女なんだ」という主張にはやはり驚かされてしまうし、どうしても私には想像が及ばない感覚だとも思いました。
母親の苦悩、そしてフランス社会における反応
映画の主人公はサシャですが、サシャ本人はあまり喋りません。これまで彼女の心の裡をたくさん聞いてきた母親が、サシャの心情を代弁するような形で語る場面が多いと言えるでしょう。
そしてその過程で、母親自身が抱いている苦悩も告白します。
まずは当然、「性別違和」を抱えるサシャと向き合う時間が、母親にとって苦しいものになってしまいます。我が子の真剣な悩みに、母親は為す術もありません。性転換手術という手段は存在しているわけですが、幼い子供に対しては現実的ではないでしょう。だから母親は、「サシャの希望は叶わない」と伝えるしかないわけです。そのことは、サシャだけでなく母親自身をも傷つけることになってしまいます。
また、母親はこんな視線とも戦わなければならなくなります。
映画の舞台はフランスですが、私の勝手なイメージでは「フランスという国は、様々な理解が日本より進んでいる」のだとばかり思っていました。日本がLGBTQなどに対する後進国だということは理解しているのですが、フランスは勝手に先進国だと思っていたのです。だから、サシャと母親が直面する現実には驚かされてしまいました。あとで詳しく触れるつもりですが、サシャが通う学校の対応は、なかなか酷いです。一言で言えば「サシャの存在をとにかく認めない」というスタンスであり、闘争によってあらゆる権利を勝ち取ってきたフランスという国で起こっていることだとはとても思えませんでした。
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