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【感想】のん主演映画『私をくいとめて』から考える、「誰かと一緒にいられれば孤独じゃないのか」問題

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とにかくのん(能年玲奈)が素敵な映画『私をくいとめて』から、「誰かと関わっていられれば孤独じゃない」への違和感について考える

とても面白い映画でした。やはりのん(能年玲奈)がとても素敵ですね。私は、みつ子と多田君の恋模様にはさほど関心が持てなかったのですが、みつ子が日常の中で抱く様々な葛藤にはとても共感できました。

まずは内容紹介

黒田みつ子は、「おひとり様ライフ」満喫している中の31歳独身OL。食品サンプルを作る講座にも、焼肉にも、基本的に1人で行く。「おひとり様サイコー」ってなもんである。会社ではひっそりと気配を消しているが、最初から優しく接してくれたノゾミ先輩とだけは気が合った。ノゾミ先輩のお陰でどうにか会社にも留まり続けていられている。また、ノゾミ先輩はおひとり様の先輩でもあるので、日々情報交換に余念がない。

友人と呼べる存在は、学生時代に仲が良かった皐月ぐらいだが、彼女は2年前にイタリアに行ってしまい、普段はLINEのやり取りのみ。みつ子には基本的に、話し相手がいない。

しかし、いると言えばいる。みつ子の脳内に。

みつ子には、「A」という脳内相談相手がいる。日々、日常の様々なことをAに報告しているのだ。楽しかったことや失敗したことなんかを話したり、これからどうしたらいいか相談を持ちかけたりと忙しい。みつ子の日常は、Aに報告することで完結するのである。

みつ子はある日、取引先の年下の営業マンである多田君が近所に住んでいることを知った。そして色んなきっかけを経て、「みつ子が作った料理を、多田君が家まで取りにやってくる」という関係になる。みつ子は多田君のことが気になっているが、恋愛に奥手なため一歩を踏み出すことができない。脳内でAが「家に料理を取りに来る男があなたのことを嫌いなはずがないし、きっと好きだから大丈夫です」と背中を押しても、躊躇してしまう。「彼女がいるかもしれない」「好きだけど、気持ちを伝えるだけの情熱が足りない」など、Aに言い訳ばかり繰り出してしまうのである。

そんなわけでみつ子は、多田君との恋愛にヤキモキしつつ、さらに何故か、これまで上手く付き合ってきたAとの関係にもモヤモヤしたものを抱えることになってしまい……。

黒田みつ子と、彼女を演じるのん(能年玲奈)が素晴らしかった

私は、のんが出演する映画は基本的に観たいと思っています。特にファンというわけではないのですが、芸能の世界にいる人の中ではかなり好きな人です。のんにしか醸し出せない雰囲気があるというか、のんにしか成立させられない世界観があるというか、そういう感覚を常に抱かされてしまいます。

映画『私をくいとめて』も同じように、のんにしか醸し出せない雰囲気、のんにしか成立させられない世界観が表出していると感じました。『私をくいとめて』は、綿矢りさの同名小説が原作だと知っていますが、それでも、「黒田みつ子」という女性がまるで「のん」に当て書きされたキャラクターであるように私には感じられたのです。もちろん、別にのんについて詳しいわけではないので、「私がイメージするのん」と「黒田みつ子」がダブるという話なのですが、その辺りの要素も、この映画をとても面白く感じさせるポイントなのだろうと思いました。

「黒田みつ子」についてもう少し具体的に触れてみましょう。彼女はおひとり様ライフを楽しんでいますが、決して「コミュ障」とか「引きこもり」といったタイプではありません。仲の良い友人こそ決して多くはありませんが、親しくなった人とは気安い間柄になるし、そこまでの関係にならない人に対してもそつのない接し方が出来ます。ネガティブな面を内側にかなり抱えてはいるのですが、外側からそれが見えるようなことはないし、彼女は恐らく「明るい人」みたいな見られ方になるのだろうと思います。

彼女には1人でいることをマイナスに捉える感覚は基本的になく、むしろ「孤独を楽しんでいる」といった感じでしょう。「1人でいることが寂しい」とか、「誰かと一緒に来られたら良かったのに」みたいに考えることもなく、ナチュラルに「孤独の方が向いている人」という感じがします。

そしてそのような雰囲気を、のんが実に見事に体現するのです。

のんが凄いのは、「美人なのにおひとり様が似合う」という点にあると言えるでしょう。今から書く話は多分に偏見が混じるもので、正直あまり気持ちの良い主張ではないのですが、私が感じた「のんの凄さ」を説明するのに避けては通れないので、不愉快かもしれませんが書こうと思います。

特に女性の場合そうだろうと思いますが、「容姿が良い人は周りが放っておかない」という見られ方になることが多いはずです。恋愛でも友人でもなんでもいいですが、「美人であれば交友関係的に得をする」という感覚を多くの人が持つだろうし、だからこそ「美人”なのに”1人でいる」みたいな見られ方にもなるでしょう。

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