【感想】映画『若おかみは小学生!』は「子どもの感情」を「大人の世界」で素直に出す構成に号泣させられる
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どう見ても「子ども向け」にしか思えなかったアニメ映画は、実は超「大人向け」でもあった
この映画を観ようと思ったきっかけは、ヤフーニュースです。公開後に、「大人がハマってる」という記事を見かけて興味を持ったのですが、確かにこれは大人が観てもハマる映画だと感じました。
冒頭からずっと良い感じに展開していくのですが、最後の最後は「そう来るか!」という展開で、号泣させられてしまいました。
まずは内容紹介から
小学生の関織子(おっこ)が、家族でおばあちゃんのところへ遊びに行くところから物語は始まる。おばあちゃんは、花の湯温泉にある「春の屋」という旅館の女将で、それは楽しい旅行になるはずだった。しかし旅館からの帰り道で交通事故に巻き込まれ、両親は死亡、奇跡的に無事だったおっこは、春の屋に引き取られることになってしまう。
蜘蛛やヤモリなど、普段目にしない生き物に思わず奇声を上げてしまうほど、それまでとは違う環境で生きていくことになったおっこ。おばあちゃんが離れに用意してくれた部屋での生活が始まった。しかしその部屋にいるとなんだか声が聞こえてくる。見上げると、なんと天井に浮かんでいる少年がいるではないか。
その少年はどうやら幽霊で、しかもおばあちゃんの古くからの知り合いだという。誠という、おっこにしか見えないその幽霊少年と共に、仲居さんや料理長に挨拶しにいくのだが、誠がやいのやいのとうるさいせいで、おっこは成り行きで春の屋の若おかみを目指すことに決まってしまった。おっことしては承服しがたい展開だが、思っている以上に誠が喜んでいる姿を見て、嫌だとは言えなくなってしまう。
さっそく手伝いを、となったのだが、おっちょこちょいなおっこはドジを踏んでばかりだ。しかし、お客様に喜んでもらえる喜びを実感し始めると、少しずつ若おかみとしての自覚が芽生えていく。
おっこが転校した小学校の同じクラスに、花の湯温泉をここまで牽引してきた秋好温泉の跡取り娘・秋野真月がいる。おっこと同じ小学生なのだが、真月は抜群の発想力で温泉全体を盛り上げるプランを進めるやり手だ。2人は事あるごとにぶつかることになるが、共に「老舗旅館を守る」という意気込みは共通している。
両親を喪った悲しみを表に出さないようひた隠しにしながら、若おかみとして精進していくおっこ。なぜか誠以外にも「目に見えない存在」は増えていき、彼らと関わりながらおっこは両親のいない日々を過ごしていく……。
小学生が大人の世界で頑張っているからこそ、大人が見ても楽しめる
私はまず、この映画の設定が非常に秀逸だと感じました。「大人になったら恥ずかしくて言えなくなってしまうような『どストレート』なセリフが違和感なく溶け込む世界」を描けるからです。
この映画では、喜怒哀楽の感情が非常にシンプルに分かりやすく表現されます。基本的に子ども向けに作られている映画のはずなので、当然と言えば当然です。
さて一方で、映画でもマンガでも小説でも、大人になってから触れる物語は、喜怒哀楽をストレートに描かないものが多くなるでしょう。多くの人がそうだと思いますが、子どもの頃には恥ずかしげもなく言えたこと、やれたことでも、大人になると躊躇してしまうようになるものです。どうしても、「大人なんだから」と自分を制御してしまい、ストレートに感情を表に出すことは少なくなるでしょう。
だから、大人の世界を描く物語は、ちょっとした仕草、僅かな表情の変化、いつもと違う言葉遣いのような些細なものの積み重ねによって様々なことを描き出していきます。別にそういう作品の是非を問いたいわけではありません。大人になるとどうしても「どストレートなセリフ」にはなかなか出会わなくなる、と言いたいだけです。
しかし、「どストレートなセリフ」が出てくるだろう子ども向けの作品に触れれば感動できるのかと言えば、そうでもないでしょう。私は大人になってから、子どもの頃大好きだった小説のシリーズを読み返してみる機会がありましたが、正直、何を面白いと感じていたのかも思い出せませんでした。子ども向けの作品には「どストレートなセリフ」は多々出てくるでしょうが、それらは「子どもの世界の話」という風に処理されてしまい、大人にはなかなか響かないのではないかと思います。
だからこそ、この物語の設定は絶妙だと感じました。
主人公のおっこは、若おかみとして大人の世界で働きます。もちろん、「子どもだから」と許される場面もありますが、客商売であり、おばあちゃんも厳しいので、「子どもだから」という甘えがそこまで通用する世界ではありません。
しかし一方で、おっこは「小学生」なので、当然「小学生」的な反応をしてしまうこともあります。いくら大人の世界で頑張っているとはいえ、すべて大人と同じにできるはずがないし、直面している状況に「小学生」らしい振る舞いをすることはなんの違和感もないわけです。
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