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【解説】映画『スターフィッシュ』をネタバレ全開で考察。主人公が直面する”奇妙な世界”の正体は?

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全然意味が分からなかった映画『スターフィッシュ』を自分なりに考察。主人公はどんな状況に置かれていて、一体何をしているのか?

私は普段、「自分なりのネタバレ基準に沿って、内容にあまり触れすぎない」というルールで本・映画の感想を書いている。人によって何を「ネタバレ」と感じるかの感覚は異なると思うので、私が書いていることに対して「ネタバレ」と受け取る人もいるとは思うが、あくまでも「私の中の独自の基準」に沿って判断しているというわけだ。

ただし、本作『スターフィッシュ』に関してはそのような制約を取り払おうと思う。つまり、「ネタバレを気にせずに内容について言及していく」というわけだ。なので、「本作をまだ観ておらず、かつ、内容について詳しく知りたくない」という方は、私の記事を読まないでほしい。

しかし本当に、鑑賞中は最初から最後まで全然意味が分からなかった。この記事で書く内容は、映画館を出た直後から感想を書き始めるまでの間に必死で考えたことである。まったく的外れの可能性もあるが、私と同じように「観たけど全然意味が分からなかった」という方は参考にしてほしいと思う。

映画『スターフィッシュ』の内容紹介

主人公のオーブリーは、親友グレイスの葬儀に参列した。そしてそこで彼女のいとこから、グレイスについて様々な話を聞く。「いつもオーブリーの話をしていた」「同じ曲ばかり聞いていたし、『曲に救われた』と言っていた」「『オーブリーなら分かってくれる』とも」などである。その後オーブリーは、グレイスの家に侵入する。カメに話しかけ、クラゲに餌をやり、隣家の夫婦の営みが見れるように設置された窓際の望遠鏡を眺め、オナニーをし、シャワーを浴びた。そうして彼女は眠りにつく。

翌朝。彼女は寒さで目を覚ました。そして世界が一変していることを知る。窓の外は雪で覆われ、テレビも電話も使えない。とりあえず発電機を回してから近場を歩いてみることにしたのだが、おかしなことだらけだった。遠くの方で上がる黒煙、砲撃されたのだろう破壊された車、雪上に散らばる血痕。

そして何よりも、目覚めた世界には誰もいなかった。人の気配が、まったく無かったのだ。

そんな外出の最中、不気味な音が聞こえてきたかと思うと、彼女は謎の怪物に襲われてしまう。慌ててグレイスの家まで戻り、ドアを閉めうずくまって震えていると、昨夜なんとなく手に取ったトランシーバーから声が聞こえてきた。昨日使ってみた時には誰にも繋がらなかったのに。そして、トランシーバーから聞こえてくる男性の声に従うようにして何とか怪物を撃退した彼女は、その後男性から「グレイスが遺したテープ」の存在を聞かされることになる。

彼女はそのテープを探し出した。そしてそこには、「このテープが世界を救う」と書かれていたのである。

残された情報によると、グレイスはどうやら「謎の信号」に囚われていたらしく、さらに、その秘密をオーブリーと共有しようともしていたようなのだ。グレイスはテープに遺した音声で、オーブリーに情報を伝えようとしていた。「謎の信号」は過去から現在に至るまでの様々な通信に紛れる形で私たちの元へと届いている。そしてその信号が、世界で起こる災害・事件・惨劇と相関関係があることは確かなのだ。だから、それらの信号がひと繋がりにループを形成していると安心できるのだが、どうしても1つ足りない。7番目の信号が。既に6つは集めて「私たちの場所」に隠してあるから、あと1つ見つけてほしい。

壁にはこの街の地図が貼られている。恐らくグレイスが貼ったのだろう。「映画館」「スーパーマーケット」「図書館」などに印がついており、きっとそこにテープが隠されているに違いない。しかしオーブリーは、部屋を出てテープを探しに行こうとはしなかった……。

私が考えた仮説とその理屈

上述の内容紹介は正直意味不明だろうが、その意味不明さは結局最後まで続く。全然説明されないし、何のこっちゃ分からない。ただ「作中で提示された情報を元に、何か合理的な説明をつけられないか?」と考えて、自分なりの結論には達した。それを簡単に要約すると以下のようになる。

オーブリーはグレイスの家に無断侵入した後、そこで自殺を図った。幸運にも一命は取り留めたものの、現在は植物状態のまま病院のベッドで横になっているところ。そして、作中で描かれるほとんどすべての状況は、「植物状態にあるオーブリーの脳内で展開されていること」である。

では、私がどのような理由からこんな結論に至ったのかについて触れていこうと思う。

まず本作中には、「オーブリーがグレイス宅で自殺未遂を起こしたこと」「植物状態のまま病院のベッドで寝ていること」を直接的に示唆するような情報は一切ない。なのでこの2点に関しては完全に私の想像だ。しかし前者に関しては、ほんの少しだけ根拠がある。

本作は基本的にグレイスの家で展開されていく。そしてそんな室内のシーンの中に、「どこかから吊り下げられたロープ」が一瞬だけ映ったのだ。まさに、首吊り自殺で使うようなロープである。前後に説明らしきものがあったわけではなく、ただワンカット映っただけなのだが、「誰かが自殺した(あるいはその準備をしている)」とでも考えなければあまりにも唐突すぎるように思う。そのため私は、「オーブリーがグレイス宅で自殺を図ったのではないか」と考えたのである。

また後者に関しても、具体的にどんな状況なのかはともかく、「オーブリーが死に瀕している」と考えると理解しやすくなるだろう描写がいくつかあった。

最も分かりやすいのは、トランシーバーの男性と会話している最中に出てきた言葉だろう。オーブリーが男性に問いかける形で、「私死んだの?」と聞くのである。このシーンは、観れば納得してもらえるだろうが非常に唐突だ。内容紹介で書いた通り、この場面は「怪物に襲われたオーブリーが戻ってきた直後」のものである。そしてそこに至るまでの過程で、オーブリーに「私死んだの?」と言わせるような状況は出てこない。

なのでこのセリフを踏まえれば、「オーブリーが今まさに死の淵にいること」、さらに「『死んでいるかもしれない』とオーブリー自身が認識出来る何かが起こったこと」が想定できるだろうと思う。「死んでいるかもしれない」という認識が可能なのは、自殺を図ったか事故に遭ったかぐらいではないだろうか。そう考えると、状況的には自殺未遂の方が妥当であるように思う。

また、怪物を退治する場面でも似たような話が出てきた。オーブリーはトランシーバーの男性と協力する形で怪物を撃退するわけだが、その後男性がオーブリーに、「良かった。生きたいんだね」と口にするのである。これも前後に話の流れなどなく、普通には理解しにくい発言だが、「オーブリーが自殺を図った」と考えれば受け取りやすくなるだろう。そうなると、「この男性は一体誰なんだ?」という話になるかもしれないが、私は「特定の人物ではない」と考えている。オーブリーが過去に出会ってきた様々な男性のイメージが入り混じり、「オーブリーに『生きたい』と思わせる役割を担う人物」として具現化しているというのが私の仮説だ。まあ、特に根拠はないのだが。

さて、後で詳しく触れるつもりだが、オーブリーが自殺を図った理由について私は、「過去に犯した罪に耐えかねたのではないか」と考えている。そして、その「罪」にグレイスが関係しているというわけだ。一方、これも私の想像だが、「オーブリーはグレイスに『赦されたい』と思っているはず」である。つまりこういうことだ。オーブリーは今、「罪の重さに耐えかねてこの世から消えたい」という気持ちと、「『グレイスに赦された自分』として生き直したい」という気持ちの間で揺れており、そんな葛藤が、「怪物が跋扈する世界に放り込まれる」という状況とリンクしているのではないかと私は捉えているのである。

つまりオーブリーの脳内では、「死にたい」と「生きたい」の勢力が拮抗しており、「良かった。生きたいんだね」は「『生きたい』側の勢力のもの」と考えられるというわけだ。

さて、この点に関連するかもしれないこんなセリフがある。

グレイスが、私に選択を任せてくれた。

この言葉は、「かつては『人間が消えること』を願っていた」とオーブリーが述懐した直後に出てくる。だから、本作『スターフィッシュ』の物語を素直に捉えるのであれば、この言葉は、「『信号』の謎を解いて世界を元に戻す」か「『信号』の謎なんか無視して世界をこのまま終わらせる」かという選択の話として受け取るのが自然だろう。私も元々はそのように解釈していた。

しかし、作中で描かれる世界がすべてオーブリーの脳内で展開されていると考えると、また別の可能性も出てくるだろう。つまり、「『生きたい』という強い気持ちを持って植物状態を脱する」か「『生きたい』という気持ちを諦めてこのまま死ぬか」の選択というわけだ。あるいは、「自殺を図ったが一命を取り留めた」という状況そのものを「私に選択を任せてくれた」と捉えることも可能だろう。いずれにせよ、このような解釈を採用すれば、「オーブリーが死に瀕している」という状況の傍証になると言えるのではないかとも思う。

また、「オーブリーが病室にいる」と示唆する描写もいくつか拾うことが出来る。例えば本作では、ある場面で唐突に「起きて!」という声がどこからともなく聞こえるのだが、これは「病室で誰かに声を掛けられた」と考えれば理解しやすいだろう。また、目を覚ましたオーブリーが外に出ようとした時に現れた正体不明の男性については、「病室で寝ているオーブリーを起こそうとして叩くアクションから来ている」なんて風にも考えられる。

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

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