創作都市伝説 【永楽村の奇跡】
第2幕 永楽村の奇跡
その村には昔からの風習で死を目前にした者に飲ませる神の奇跡と言う薬がある。なんでも、どんなに苦しそうにしていた者でも眠る様に死を迎えれるというその薬は、よその村から死を目前にした老人たちがこぞって求めるほどだと言う。
そんな薬を求めにある少年が1人、
「神の奇跡をください」。と言ってきた。
こんな少年が何故?と薬師はその少年の話を聞く。
少年の妹が父親から重度の虐待を受けており、毎日死にたい、死にたいと言っているそうだ。こんなに悲しいことがあるのかと、何度も少年の話を聞き、何度も苦悩したが、最後にはその薬を少年に渡してしまったという。少年は薬師に深々とお礼を言い、村へ帰っていった。村へ帰ると妹に神の奇跡を飲ませようとしたが思いとどまった。
本当に死ぬべきは妹ではなくあいつじゃないのか、と。その晩父親の食事にその薬を忍ばせて父親を毒殺することにした。しかしその晩、急な仕事で父親は帰って来ず、残り物になった食事を母親が食べてしまった。そう、食べてしまったのだ。眠る様に死んだ母親を見て少年は気を動転させる。そして想像した。これからあの父親と3人で暮らしていくのか、と。そんな地獄がこれから待っているのならばいっそのこと、と思い少年は妹と一緒になってその薬を飲み、眠る様に死んでいった。
朝になって父親が大きな包みを持って帰ってきた。父親は実は愛妻家で子煩悩なのだ。その包みは妻と子供達への贈り物だったのだ。愛ゆえに優しくしすぎると立派な大人に育たないと思い、自分は嫌われてもいいから立派な大人になってもらうんだ、と厳しく育てていた。しかし、出迎えたのは冷たくなった妻と子供達。一体、何が起きたのか、どうしたのか、何もわからないがわかるものがただひとつ、妻と子たちが死んだと言う事実だけだ。男は失意のどん底に落とされ、何もできなくなってしまう。そしてある村に行き男は言う。
「神の奇跡をください」
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