日本の歌曲と詩 上田 敏の牧羊神から《別離 L’ADIEU 》
書棚を整理していたら、茶色に焼けた少し厚めの岩波文庫が目に留まりました。奥付けを見ると、昭和37年発行の『上田 敏 全訳詩集』。私のは同42年第七刷のもので半世紀以上ものあいだ手元にあったわけです。
ぱらぱらめくっていきますと、聞きなれた一編の詩に手が止まり、口ずさんでみると、それが歌になりました。昔、鮫島有美子さんのソプラノでよく聴いた「別離」という歌です。次に引用してみましょう。
原詩は、フランスの詩人 ポール・フォール作 L’Amour marin (1900)の中の «L’Adieu»。訳詩中の「手拭」は、「ハンケチ」とフリガナが振ってあります。
鮫島有美子さんのCDについては、ライナーノートにとても良い解説があるので、以下に引用します。
訳詩、團伊玖磨の曲、ともに、波が引いたり返したりするように、歌のリフレインが律動を生み、浜風に打たれているようにおおらかで気分が良い。最後の2連もきっぱりと言い切って粋で、洒落ていて、凛とした歌だと思います。
原詩が手元にないのが残念ですが、機会があれば入手して味わってみたい詩のひとつです。
というわけで、最後に私の文庫本の写真で締めくくりとしましょう。
余談ですが、
上の写真で見られるように、小口と地の二方はカットされて滑らかだが,天だけはアンカット。フランス装風の洒落た雰囲気を出すためだそうだが、むしろこの方が製本は大変だと言う。
岩波文庫については、おもしろい豆知識のサイトを見つけたので、リンクを貼っておきます。
クラシック音楽と本と💘さえあれば。お読みくださってありがとうございます。またどこかでお会いいたしましょう! ごきげんよう