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立方体がテーマのアートの本(Artist Book)を手づくり!


⒈ 美術家ブルーノ・ムナーリ

私がアーティストブックをつくり始めたきっかけは、イタリアの美術界の巨人ブルーノ・ムナーリBruno Munari (1907-1998)を知ったことです。名著『ファンタジア』や「かたちの不思議」シリーズ『正方形』『円形』『三角形』はもちろんのこと、『きりのなかのサーカス』『闇の夜に』など数々の絵本に至るまで、いつ開いても新しい発見があり、飽きることがありません。

ブルーノ・ムナーリ著
ファンタジア
萱野有美 訳
2006年5月18日 第1刷発行
発行所 株式会社 みすず書房
「かたちの不思議」シリーズ

上記の写真に写っている本のクレジットは以下のとおりです。

① IL QUADRATO
LA SCOPERTA DEL QUADRATO
Bruno Munari
©1960 Bruno Munari
Tutti i diritti riservati alla Mauricio Coeraini s.r.l.

Prima edizione 1960 Scheimiller, Milano
1ª edizione 2005 Corraini, Mantova

② IL CERCHIO
LA SCOPERTA DEL CERCHIO
Bruno Munari
©1964 Bruno Munari
Tutti i diritti riservati alla Maurizio Corraini s.r.l.

Prima edizione 1964 Scheiwiller, Milano
1ª edizione 2006 Corraini, Mantova

③ 三角形
ブルーノ・ムナーリ かたちの不思議3
2010年11月12日 初版第1刷発行
著者 ブルーノ・ムナーリ
訳者 阿部雅世
装丁 アヴェ・デザイン研究所
発行所 株式会社平凡社


彼はまた、日本の折り紙にも深い関心を抱き、研究した人でもありました。

著書『ファンタジア』Fantasia の折り紙の記述箇所で、
内山光弘と柳宗理を紹介している

「オリガミは日本に古くから伝わる日常的な楽しみであり、小さな色紙を切ることなく、折ったり折り返したりしながら、動物や花や幾何学模様などの形を作るものである。1969年に亡くなった日本人のオリガミの大家,内山光弘は、その半生をオリガミ作りに費やした。幾何学や位相幾何学を試したり、取り入れたりしながら折り方を発明した。現在は若きデザイナー,柳宗理がその作業を引き継いでいる。なぜならオリガミの規則性はデザインに応用できる可能性があるからだ。」

『ファンタジア』ブルーノ・ムナーリ著 萱野有美 訳
2006年5月18日 第1刷発行 みすず書房
*引用本文中 太字は筆者による


⒉ ブルーノ・ムナーリに触発されて

ー折り紙で作る立方体とアーティストブック『CUBE』の関係ー

私もまた折り紙や絵本を愛する者。ムナーリさんの仕事を知るにつれて、あるアイディアが浮かびました。

折り紙で立方体を作るときにできる折り線をテーマに、手づくりのアートの本(この記事では以下、アーティストブックと呼ぶ)をつくったらおもしろいのではないか、と。

折り紙に使う正方形の紙は、そのままでは平面ですが、のりもハサミも使わずに立体物ができる秘密が、折り線にあります。折り上がった作品を崩して元の紙に戻したとき、紙の上に現れたたくさんのラインが交叉・平行するさま、複雑な関係性(relationship)を示す美しさにうっとりするのは私だけではないと思います。

もしかしたら、このアーティストブックは、平面と立体を自由に往き来する「魔法の扉」だ!と言えるかもしれません。(˶^ᵕ^˶)b

作成にあたって、我らがマエストロ・ムナーリの「読めない本」シリーズを大いに研究し参考にさせていただきました。"造形のファンタジスタ" ムナーリに感謝!

⒊ 作成したアーティストブック『CUBE』とはどんなモノ?

表紙:赤とマゼンタのコンビネーション


ユニット折り紙による立方体、組み立てへ
(2ピースで組む。折り方は布施知子さん考案)


折り紙を開くと折り線はこのように


折り線をテーマにつくったアーティストブック『CUBE 』
本体を開いたところ。
本と言っても文字はない


アーティストブックと折り紙のキューブ


変化とリズムを意識して、切ったり折ったり


ライトを当てると、窓を開けた部分に陰影が生まれ、思いがけない映像に出会える


濃い影がつくるドラマ


色は自由に思いのままに


⒋とっておきのおまけ「空想の補助線」について

最後に、折り紙に関係するおもしろいエッセイ集をご紹介します。

前川 淳 著
『空想の補助線 幾何学、折り紙、ときどき宇宙』みすず書房刊

カバー(ジャケット)と本体

折り紙と数学、パスタの幾何学、デューラー・コード、星の話、折り紙の歴史、紙飛行機の話、あやとり、堀 辰雄と数学者、千羽鶴の話‥‥科学と美術の壁を越えて縦横無尽に往き来する内容に魅せられます。

カバーをとると、表紙上部の紙飛行機の線画がいい感じ!


シンプルな仮フランス装。手になじんで読みやすい

以上、折り紙とアーティストブックのコラボレーションをお楽しみいただけたでしょうか。

アーティストブックについては、日本でどの程度認知されているのかわかりませんが、次のように言えると思います。

「アーティストが自身の作品や活動を、本の形で制作・発表する美術のジャンルである」

最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

クラシック音楽と本と💙さえあれば。またの出会いを楽しみにしております。ごきげんよう!

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