税は財源じゃない? んなわけねーだろ! 経済オンチの夢物語をぶった斬る
ここ数年、SNSやらネットやらで、「税は財源じゃない!」と声高に主張する人たちが目につきます。 「増税は悪」「税金は国民から取り立てる不公平なものだから要らない!」みたいなことを言うわけですよ。いやいや、税金を払うのが嫌なのはわかりますし、政治家の使い道に不満もあるでしょう。だけど「税は財源じゃない!」というのは、ちょっとスケールを超えた話に感じませんか?
「国が通貨を発行しているんだから、政府はいくらでもお金が作れるんだ!だから税は財源じゃないんだ!」と、なにやら怪しげな理屈。これに触発されて、やたら専門用語を並べる人もいて、「国債でじゃんじゃん財源を作ればいいんだ!」みたいな話に突っ込んできます。。
というわけで、本記事では「税は財源じゃない!」「増税絶対反対!」「税金を取るなんてけしからん!」などと外野で叫び倒すポピュリストの皆さまに、「じゃあなんで税が財源って言われるわけ?」という基本的なところを、おさらいしておきたいと思います。
そもそも税って何?
税金というのは、国民(法人含む)が国や地方公共団体に納める強制的な負担のこと。何でわざわざ「強制的」なんて嫌な言葉を使うかというと、政府が公的サービス(道路、教育、福祉など)を提供するために、みんなから広く集めないと、財政が回らなくなるからなんですね。要するに「みんなが快適に暮らせるインフラ費用を負担しようや!」というのが税の根源です。形は違いますが、昔からある概念ですね。
道路や橋の建設・修繕
これは公共財の代表的な例。たとえば「うちの前の道路、 穴だらけで困っているんです!」というとき、「んじゃ俺がアスファルト買ってきて独力で舗装しときます!」という個人はごく稀ですよね? 基本的には行政がやるわけで、そのためのお金はどこから来るか? というと税金です。教育や福祉・公共サービス全般
学校の運営費用から警察や消防も、基本的に税金によって支えられています。消防車や救急車が有料だったら大変なことになりますよね。「あ、今火事なので消防呼びたいけど、うちは貧乏だからまだローン終わってないんすよ…」みたいな悲劇は避けたい。
こうして税が公的サービスのための原資になっている現実を見れば、まあ普通は「税は財源」だよね、となるんですよ。だって、払ってるし、使ってる。言い逃れできない事実です。
「税は財源じゃない!」組の謎理論を解説
さて問題の「税は財源じゃない派」。彼らがよく言うのが、「政府はいくらでも通貨を発行できるから、税なんて取らなくても政府はお金が作れる。だから税は財源じゃない!」というもの。
「お金を刷ったらそれで全部解決」論
→ いわゆる中央銀行が国債を買い取って、それを原資にじゃぶじゃぶ支出すればいいんだ、と。短期的には一見できそうな気がします。しかし当然ながら無制限に通貨を刷ればインフレ率が急上昇して、貨幣価値が下がる可能性大。「札を印刷すれば印刷するほど豊かになれる」と信じられるほど世界は甘くありません。ジンバブエに学びましょう。「税はインフレ調整のための仕組み」論
→ これは「政府支出→インフレする→税で需要を吸収して調整する」というもの。税はあくまでインフレを抑えるツールであって財源じゃない、というわけです。たしかに、税金には景気を調整する機能はあります。しかし、それはあくまで「副次的な効果」であって、「主な目的」ではありません。税金の最も重要な役割は、言うまでもなく「国の財源を確保すること」です。「税金なくても国債で回せるだろ」論
→ 国債はあくまで借金であって、元利払いを行わなければいけません。もし永遠に返さなくても許されるなら…と思うかもしれませんが、それこそ「財政破綻寸前でも大丈夫!」という幻想に近い。いつかツケが回ってきますし、利払いの負担は国民に返ってくる。要するに将来の増税かインフレ(もしくはその両方)につながりやすいのです。「国の借金は問題ない」論
→ …あのー、それはつまり、借金を踏み倒しても問題ないってことですか? 「国は絶対に潰れない」という、根拠のない自信はどこから湧いてくるのでしょうか?確かに、日本は今のところ財政破綻していません。しかし、それは決して「借金がいくらあっても大丈夫」という意味ではありません。借金が膨らめば膨らむほど、将来世代への負担が大きくなるのは当然の理屈です。これは、いわば「茹でガエル理論」です。熱湯にカエルをいきなり入れると飛び出しますが、水から徐々に温度を上げていくと、カエルは茹で上がって死んでしまいます。今の日本は、まさにこの「茹でガエル」状態なのではないでしょうか?
税は財源です
政府の支出に対する根源的な裏付け
政府がお金を使うとき、それを埋め合わせるための制度的支柱が税です。税金で支えるからこそ、政府が公債を出すときでも「最終的には政府には徴税権があるから債権を返せるはずだ」と、投資家は国債を買うわけです。わかりやすく言えば「おまえんち時々スネ夫が札束貸してくれるじゃん? 返すアテあんの?」と聞かれて、「うちは徴税権(数千万世帯から集められる強力なツール)ありますんで」と返すわけで、それが信用になる。信用度と税収の関係
政府の信用度は「ちゃんと税金を徴収して公的サービスを提供し、国債などの負債を返す力があるか」にかかっています。世界的に信用度の低い政府は、国債を出しても金利が高騰したり、最悪買い手がつかなかったりします。逆に言えば「財源となる税収」をある程度見込める国は、安定的に資金調達が可能。そうやって国や地方自治体の支出を運営している以上、税金は財源であると考えるのが妥当です。税はインフレ調整手段なのか
確かに、財政政策における増減税の景気調整という側面は間接的に持っており、無視できないものの、それだけをドヤ顔で「だから税は財源じゃない」と主張されても困ります。そもそもインフレ抑制をしなきゃいけない時点で、政府の支出(=通貨発行)には限度があることを自ら認めてるようなものです。そもそも政府の収入(歳入)は「税収」+「国債」+「その他」
確財政学で言うところの政府の歳入(収入)は、大きく分けて*税収・国債発行収入・その他(例:印紙収入や社会保険料等)に分類されます。ほとんどの先進国は、公共サービス(インフラ、教育、医療、防衛など)のコストを、主に税金で賄っています。不足があれば国債発行もしますが、将来的には税収で返済することが前提です。
「国債は借金だから返さなくても大丈夫」説を唱える人は多いですが、少なくとも市場から資金を集める国債は、満期がきたら何らかの形で返済(償還)する必要があるのです。借金に利息がつくなら、どこかでその負担を補填しなきゃならない。結局、それを支えるのが我々の血税であり、税は確実に財源の一つと言えるわけです。
そもそもMMTそのものが理論上と現実との乖離がデカすぎる
1. 経済モデルとしては面白いが…
MMTの主張は、「政府は自国通貨で借金しているのでデフォルトしない」「税金は通貨量を調整する道具」といった部分だけ切り取ると、確かにひとつの経済学モデルとしては興味深い部分もあります。しかし、実際には為替相場の変動、国債市場の信用リスク、政治的な意思決定の混乱など、現実には数多の要素が入り乱れます。理論上では「増税すりゃインフレは抑えられる」かもしれないけど、現実の政治で「はい、明日から税率10%アップね」なんて強行すれば、国民の大反発が起きて政権が吹っ飛びます。そうそう、そんなにシンプルにいかないんですよ、現実は。
2. 現実を無視したバラ色の夢はポピュリズムの温床
MMTを根拠に「ほら、増税なんかしなくていいんだ!好きなだけバラマキしようぜ!」みたいな甘い言葉を振りまくと、人気取りにはなるかもしれません。実際、「税は財源じゃない!」を叫ぶポピュリストが支持を集める場面もあるでしょう。ですが、常識的に考えて、税金を集めないで通貨発行をひたすらやっていたら、その国の通貨の信用も経済も崩壊しかねません。財政破綻に向かうピッチが速まるだけ。「そんなのありえない!」と目をそらしても、歴史の事実は容赦なく訪れます。
税が財源なのは当たり前、夢物語を語るなかれ
ポピュリストの中には「国の借金はすべて自国通貨建てなんだから、税収なんていらない」と何度も繰り返してくる方々がおりますが、それは理屈としては耳障りがいいだけの半ば妄想です。
日本政府が発行する国債の信用を支えているのは、将来の税収によって返済される見通しがあるからです。これを無視して「国債を無制限に発行し、通貨をいくらでも刷り、税金の心配はいらない」なんて言えば、いずれは財政の破綻が待っている。リフレインですが、ハイパーインフレという地獄絵図が歴史的にも証明済みです。
税金は政府が負う公共サービスの費用を支えるメインの財源であり、通貨発行は無制限ではない。
MMTの一部の言説は、理論としての見方はあっても、現実との乖離が大きく、安易に鵜呑みにしてはならない。
ポピュリストの「税は財源じゃない」論にほだされて夢見るのは自由ですが、それはあくまで絵空事の話であることを認識する必要があります。国としての信用が成り立つために、きちんとした財源(税収)が欠かせないという当たり前の話を、あらためて強調しておきましょう。
地に足ついた財政運営を
最後に改めて言いますが、「税金なんか集めなくても国債発行すればいいじゃん?」という話がもし本当に成り立つなら、こんなラクな世界はありません。そして歴史上、一度でもそれを完全成功させた国家があるなら、ぜひ教えていただきたいものです。しかし現実はそうはいかない。税収を主とした安定財源があることで、社会保障・公共事業・教育・防衛などが持続的に成立し、みんなが安心して暮らせる基盤を作ることができるわけです。お花畑の理想論よりも、ちゃんと税を軸にした財政運営をするほうが、よっぽど堅実でまともでしょう。
「税は財源じゃない」と言い張る人には、ぜひこの現実を直視していただきたい。もしまだ「税なんて無意味!国債ガンガン発行して経済成長だ!」と信じて疑わないなら、一度ハイパーインフレの恐ろしさを学んでみるか、あるいは少しリゾート気分で経済破綻国の現状を見学してくるといいかもしれませんね。