【毎週ショートショートnote】蕎麦でも気球は浮かんでる

人類は空を飛ぶ方法をずっと考えて来た。

鳥を見て「翼」でしか飛べないと思い込んだ。

「煙」も空高く舞い上がっていたが見過ごされた。

翼は正統で、
煙は異端だ。

だが、あるフランス人の兄弟が煙を集め宙に浮いた。

気球である。

翼を差し置いて、
煙が空を飛んだ。

コペルニクス的転回が起こる。

その瞬間から地球は公転を始めた。

風が強く吹き始めた。

その風を受けライト兄弟が空を舞った。

それからというもの
ヘリコプター、ロケット、ドローン、果ては舞空術まで何でも空を飛ぶようになった。

そんな折、
うどんのチェーン店が業績を浮上させた。

その店に入るときは、
「麺だけを注文する」と心に決める。
だが、
レジに至るまで天ぷらやいなりなどの強烈な誘惑に負け、気付いたら会計が跳ね上がる。

地に足をつけ入店したはずなのに
うどんが天ぷらの衣を纏い宙に浮いた。

うどんに出来るならラーメン、パスタ、ましてや「蕎麦でも気球は浮かぶ」はずだ。

麺類にもコペルニクス的転回が起こる。

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