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【ショートショート】炭水化物大量摂取ダイエット

巷では「炭水化物大量摂取ダイエット」の話題でもちきりだ。

NHKでも普通に特集されているし、子どもが学校から持ち帰る「保健だより」にもそのことが触れられている。

そんな訳ない。
だが、自信がなくなって来る。
「炭水化物の摂りすぎが肥満の原因」
と皆言っていたじゃないか。

近所に、炭水化物大量摂取ダイエットの「ジム」ができた。
月額8000円のところ、
初月お試し1110ダイエット円とのことだ。
語呂合わせになっていないじゃないか。
ジムに出入りする人を見ると、
とんでもない肥満体の人が出てきた。
THE・アメリカじゃん」と思ったが、
偏見な気がするので決して口には出さない。

🍚

ジムの前を通ったら
この前の「THE・アメリカ」が小太りくらいになっている。
おいおいおいおい待て待て待て待て
効果あるのか!?

🍚

翌日俺は1110ダイエット円を握りしめ
ジムへ向かった。
体脂肪率25%だし。

「入会おめでとうございま~す。」
色んな胡散臭いお金儲けの方法を煮詰めて圧搾して作ったコアにお湯をかけて戻したような中年女性が登場した。
「本日はガイダンスだけで~す。」
「一番大切なことを言いますので、絶対に心の引き出しに入れて金襴座布団を敷いてその上に「チョコン!」と供えておいてくださ~い。」
「ヤバいヤバい!これは宗教だ!」
そう思ったがカーテンが引かれて映像が始まった。

弥生時代。
農耕の始まり。
それ以降長きに亘り、
日本人はコメを主食としてきた。


つまり
コメは伝統的に食べ続けられており、全然悪いものなんかじゃない。
だから、食べれば食べるほど健康になる。
当然体型も理想的なものになってゆく。
だが、そんなことは問題ではなく
問題は日本人の「精神の回復」である。
とのことだ。

「大人しくしておこう。」と心に決める。
下手すると帰れないかもしれない。

やっと終わった…。
誰かが近づいて来る。
THE・アメリカ」だ!
「俺は教職員だ。職場から太りすぎでこのジムに行くように勧められて仕方なく来ている。
あんた、辞めるなら今のうちだ。」
彼が言うには、
すでに、このジムは文科省に刺さり込み「推奨されて」いる状態にある。
また、
太っている人は精神の回復ができていないとされ、余計に炭水化物を摂らされる。
本当に痩せたい人は摂取カロリーを超える猛烈な運動をするか、バレないように吐き出すしかない。
とのことだった。

やっぱり、「炭水化物大量摂取ダイエット」なんてウソだったんだ。
と同時に周りの雰囲気に流されて
1110ダイエット円払った自分が怖くなった。

🍚

「あら?H田さん」
隣の奥さんだ。
「全然カーボンジム来ないじゃな~い。どうしたの~。」
あそこカーボンジムっていうのか知らなかった。
もちろんあれ以来一度も行っていないし、
お試しで退会した。
「あなた太っているじゃな~い。精神の回復ができてないんだから行かなきゃ~。」
なんだこの胡散臭い話し方。
あのオバサンの話し方ソックリじゃないか!

🍚

「比例代表は、JCP日本カーボン党へお願しま~す!
精神の回復、JCP日本カーボン党!」
選挙カーが叫んでいる。

日本人の肥満率が過半数を超えた今、
恐らく今回の衆議院選でJCP日本カーボン党は過半数を獲るだろう。

もう間違えてようがどうだろうが民主主義なので仕方がないのだ。

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