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猫に香水
柔軟剤を詰め替えようとして、手元がふらつき、ピュッ!と勢いよくこぼしてしまった。
弧を描いた柔軟剤の先には、詰め替える様子を眺めていた猫がいた。
あまりに突然で、猫は身をかわしたけれど、背中に一筋、柔軟剤がかかってしまった。
どうしよう・・・。
一所懸命拭いたけれど、いい香りがとれない・・・。
猫のマロ、怒っている。
「いくら俺がいい男だからって、柔軟剤の香りはないだろ!」
確かに、私はこの猫にぞっこんだ。
しかし、香水ではなくて、お洗濯の優しい香りって、どうなの?
猫のマロは、すごく神経質な雄だ。
病院でも大騒ぎして、犬のような声を出すし、毛はハリネズミのように逆立つ。
そして、神経質すぎて、具合が悪くても入院を断られる。
「この子には、入院は無理ですね・・・。」
そして、獣医さんに言われるままに、注射などの処置の際、体を抑えようものなら大変だ。
帰ってからも、決して忘れることはない。
「よくも、敵の味方をしたな!」
4ヶ月も怒り続けていた過去がある。
怒ると、まず
「にゃにゃにゃにゃー!にゃにゃーっ!」
と激しい口調で抗議をして、その後、これみよがしに息子にしか懐かない状態を維持し続けるのだ。
ちゃんとこちらを、ちらっと見ながらやる。
生後3週間で保護してからというもの、脱水症状だった彼にスポイトで水を飲ませ、猫ミルクを与え、大切に可愛がり続けたにも関わらず。
自分で言うのもなんだけれど、いわば命の恩人の私に・・・。
しかし、御恩なんて感じないワルな方が、格好いいかも知れない。
何かがきっかけで、また戻ってくるんだから。
でも、柔軟剤の香りはどうか。
私がその香りにしてしまったのに、なんだけれど、
もう少し、大人っぽい香水がいいかも。
実は、山種美術館の竹内栖鳳の斑猫に似ている。
緑の目がいい。
あと、口元にあるほくろもいい。
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