ご縁のあるものを探す旅
大きな通りから入ってすぐのところに、アンティークショップがあった。
古いトランクやソーダガラスのインク壺や、空の化粧瓶などが並んでいた。
ベビーピンクに塗られたドアや、白い棚。
そして、売り物でもある古いテーブルに、レエスの付け襟がたくさん並べられていた。
レエス編みのもの、リボンのついたもの、端にフリルのついたもの・・・。
フランスの蚤の市で見つけてきたのだと、若い女性店主は言った。
どんな人がつけていたのだろうと想像する。
それだけで楽しい。
そして、鈍く燻んだ銀器や、小さなブローチや指輪などのアクセサリー。
何に使うのかわからないような小物の類は、籠にまとめられていて、おまけにしてくれた。
その店は、大学の近くにあったけれど、いつの間にか消えてしまった。
その店でもらった軽井沢の公民館で行われる蚤の市のチラシをみて、毎年、夏には覗きに行ったものだった。
旧軽井沢に大学の寮があって泊まれたので、そこから雲場池や鹿島の森、そして、次の日は万平ホテルの方面と散歩もしながら、夕方に毎日、蚤の市を覗いた。
昔のガラスの金魚鉢が、どうしても欲しくなって、持ち帰ったことがある。
花が透かし彫りになっていて、楕円形をしていた。
ビー玉を入れて傍から見ていると、色が歪んで綺麗なのだった。
高いものは買わないし、買えなかった。
毎日、見るたびに迷っていた指輪は、
「まだここにいるのだから、貴方を待っていたのかも。」
なんて言われて、買ってしまった。
リング部分の金が少し剥げているシトリンの指輪だった。
古く大事にされたものが好きだった若い頃、ローマから連れ帰ったのは、小さなアンティークドールだった。
陶器でできた顔に花柄のワンピースの、手のひらサイズのその子は茶色い髪をしていた。
とても長く大事にしていたけれど、ある日、手放す時が来た気がした。
なぜかはわからない。
イタリアでコロナが流行り出した時。
この子は帰りたがっているのかしら・・・そう、思った。
そして、供養に出したのだ。
きっと、古いものとの相性を探りにいくの旅が好きなのだと思った。
合わない波動のものは、手にしない。
または、次の日には売れてしまっていたりする。
長い年月をかけて、
「もしかしたら、昔ご縁がありましたか?」
という相性のものを探す。
しっくりときて、サイズもぴったりで、というものは、今も長く愛用している。
縁があるもの。
人も物も。
そういうものを探しに、旅していた。