自由で粋な江戸のカレンダー。 企画展「読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー」 すみだ北斎美術館
こんにちは。
すみだ北斎美術館にて、2024年12月18日(水)〜 2025年3月2日(日)まで開催される企画展「読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー」のプレス内覧会に行ってまいりました。
江戸時代は現行の太陽暦(グレゴリオ暦)と異なり、太陰太陽暦を使用していました。
太陰暦は月の満ち欠けの周期を1か月とした暦です。月の満ち欠けは、約29.5日を周期とするので、大の月(30日)と小の月(29日)が生まれ、同じ月でも毎年日数が変わりました。そのため、生活する上でその年の何月が大の月か小の月かを知ることが重要になり、小さな摺物(非売品の私的な版画)に描かれた絵の中に大小の月をしのばせた、ウィットに富んだデザインの暦が制作されるようになりました。
これが大小や絵暦と呼ばれるもので、江戸時代に大流行しました。
大小は、単に数字で月の大小を示すだけではなく、文字絵で描かれたり、狂歌に隠されていたり、月の異称や景物・風物に巧みに隠されていたり、とユーモアとウイットに富んで制作されました。
本展は大と小の月数の隠し方をいくつかのパターンに分類し、その魅力に迫ります。
江戸の暦
現在とは異なる江戸時代の暦法と、それに基づいて作られた暦を紹介。
伊勢暦
伊勢の暦師が発行した地方暦。伊勢神宮の御師(神職)が全国の檀家に大麻(お札)とともに配った江戸時代で最も代表的な暦。その年の方位の吉凶や各月の大小が記されています。
大小のパターン
月の数字の隠し方にはパターンがあり、これを5つに分類。
1.絵文字の大小:絵文字とは文字の形を利用して描いた絵のこと。月数が絵の輪郭などに隠されているパターンです。
角大師は平安前期の天台宗の僧、良源が角の生えた鬼となった姿のこと。
角大師が「正、三、五、十一、八、六」。1、3、5、6、8、11が天明6年の小の月。
良源は疫病が流行した際、人々を救うため鬼の姿となって疫病を追い払ったといわれています。そのため、角大師が描かれた護符は平安時代最強であったと。
三徳山入峰修行でいただいた「角大師護符」を思い出した。
2.文字化の大小:絵の中に書き込まれた文字に、月数が隠されているパターン。
右上の印章に「天保四癸巳大小」。綿が「六、小、正、五」、羊が「八、三、十」。天保4年癸巳(みずのとみ)の小の月は1、3、5、6、8、10。
3.月数入り絵の大小:描かれた衣服や調度などの意匠や模様として、月数を隠し込んだパターン。
印に「丙大」。虎の模様に「正、二、四、八、十、十一」。丙寅(ひのえとら)年で1、2、4、8、10、11が大の月は、文化3年丙寅。
虎の模様に月数を隠すなんて!素晴らしい感覚(センス)。
4.順番の大小:月数自体を絵の中に隠すのではなく、あるモチーフを長短、高低、前後などの対比を持たせ、順番に大の月と小の月を示すパターン。
龍のような亀が格好良かった!歌川豊広の「易占道具」。
「庚午春」。「陰大」、「陽小」の印。易占の算木は、黒一色の面は陽を、中央に別色を入れた面は陰を表す。右上から下に、陽、陰、陽、陰、陰、陽、陰、陰、陽、陰、陽、陰。庚午(かのえうま)年で、2、4、5、7、8、10、12が大の月。文化7年庚午。
5.文中の大小:絵と共に記される文章や狂歌などに月数が隠されているパターン。
蝉の鳴き声の「ミンミン」を巳年とかけて大小にしたもの。これぞウィットに富んだ、という形容が相応しい。
くねっと曲がった幹で「巳ン巳ン〜」と一生懸命に鳴く蝉がとにかく愛らしかった。声が聞こえてきそうな大小でした。
巳、ン、巳、ン、巳、ン、ン、ン、巳、ン、巳、巳、巳。13あるので閏月がある。1、3、5、8、10、11、12が大の月、寛政9年丁巳(ひのとみ)。
葛飾派の大小
明和(1764-72)初期に、大小の交換会が開かれるほど大小が流行します。
睦月などの月の異称や、雛祭などのその月を代表する行事、風物を隠し込んだ大小が作られました。
構図と色彩の美しさに目を奪われた葛飾北斎の「髪結いの武士」。
大小を依頼した人物も、依頼された絵師も、裏に秘められたものを探り、それを楽しむ感性と器量を持っていたと思われます。
衝立の鳥の大きさが、上から小、大、大、大、小、小、大、小、大、小、小、大。未年で1、5、6、8、10、11が小の月は、寛政11年己未(つちのとひつじ)。
大小に挑戦
ラストに、隠された月数を読み解く章が用意されています。
私が惹かれたのは葛飾北斎の「因幡の白兎」。ちょう出雲神話を読み返していた時でしたし、なんといっても大国主の花柄の衣とスモーキーな色合いが美しかった。
(記事「出雲王国へ / 島根① 14/47」)
隠された月数を読み解き、何年の大小かの解読に挑戦してみてください。
和邇(わに)はサメのこと。
太陰暦は必ず1日が新月で、15日が満月。
からだの50%以上が水分であるわたしたち。潮の満ち引きと同様に、月の影響を受けていると感じます。月のエネルギーを読み、それを最大限に発動させるための暦が太陰暦。そんな風に感じているので、来年は太陰太陽暦のカレンダーで過ごしたいと思っています。
太陽暦のカレンダーですが、ミサワホームが葛飾北斎の筆跡を集めて作ったカレンダーが販売されていました。素敵。
ということで、江戸のカレンダーを解読しに、すみだ北斎美術館へぜひ。
企画展「読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー」
会期:(前期)2024年12月18日~2025年1月26日、(後期)2025年1月28日〜3月2日
会場:すみだ北斎美術館住所東京都墨田区亀沢2-7-2
電話:03-6658-8936
開館時間:09:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜、12月29日~2025年1月2日、7日、14日、2月25日(ただし1月13日、2月24日は開館)
観覧料:一般 1,000円 / 高校生・大学生 700円 / 65歳以上 700円 / 中学生 300円 / 障がい者 300円 / 小学生以下無料