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音信不通亭日記4 強気のナフコ

十一月十三日(土)
カーポートの横と表の庭に堆肥を入れる。そして最後まで残しておいたジニア、コリウス、ニチニチソウも引っこ抜き、跡に苦土石灰を入れる。千日紅はまだ彩りのため残しておく。ポット苗が大きくなりすぎて心配なので、畝の続きを作って植えつける。花壇の全体像は未だ定まらないが、とりあえずストック、ビジョナデシコをいくつか定植。一つだけ変な葉っぱだなと思っていたビジョナデシコの正体はクレオメだと気付く。昨シーズンの古土に眠っていた種が発芽したらしい。でもさすがに育たないだろう。急に寒くなりすぎた。去年植えたイチジクを一個初収穫。甘い。普通、一年目で実はつかないようだが、気候に合っているのだろう。確かにこの辺りではイチジクの巨木をよく見かける気がする。大きく育てることより、大きくなりすぎないように気をつけなければならない。

十一月十五日(月)
堆肥を入れて一週間経たないが、アサガオ跡地にスイートピーとキンセンカ、アグロステンマの残りを植え付ける。こぼれ種のアサガオが今頃いっぱい芽吹いている。スイートピーの摘心は一、二週間後。忘れないように。まだ小さいがスカビオサも植える。ポットに根が回るのを待っていたが、抜いてみると大変シンプルな根で、これがポットに回るのを待っていたら「十一月中に植え付けは済ませること」という注意書きなど守れるわけがない。だからこういうものなのだろう。ともあれ、花壇の一等地はこのスカビオサと決めていたので元気に育ってほしい。斑入りポインセチアの短日処理が成功し、去年より立派な鉢になったので室内に飾るが、年中気にし続けていたので全く季節感を感じない。

十一月十六日(火)
卵パックの小苗をまとめる。例の佃煮も卵パックの空いているところに思い切って移植。土を多めに取ったのでおそらく大丈夫だろう。今日は花壇仕事がないので、ずっとテラスに放置していた多肉類に目をやる。これだけダイナミックに草木が育つ環境にあると、なかなかこの手の植物には気が回らない。さすがに夏の間の水やりが足りなかったか、それともこのところの寒さのせいか、どれもあまり元気がない。今後、夜は中に取り込むことにして、とりあえず急を要するものは仕立て直す。そしてウンベラータが黄色いのが地味にストレス。GW頃に根を切り詰め丸坊主にし、夏には勢いよく復活していたのだが、その勢いのせいで早くもまた根詰まりしたのだろう。もうあまりいじる時期ではないので放っておくしかないが、一番姿がいい時には外にあって、家の中で眺める時期になるとしょぼくれているというのは、観葉植物の存在意義としてどうかと思う。

十一月十七日(水)
先週と何ら変わるところのない棚を前にして思わず足下がぐらついた。ナフコが強気だ。一歩も譲る気がない。どういうことなのか。もしかすると、担当の人が値引き札をつけるのを忘れているのか。あるいは、球根はこの時期に売り切ってしまわねばならないということを知らないのか。だがユリの類だけ安くなっているところを見ると、やはりそういうわけでもないようだ。つまりはこれがナフコの方針、今年のナフコは一味違うぞということなのか。ここにきてそんな本気を見せられるとは思わなかった。一体どうすればいいのか。冷静に考えて、これ以上このためだけにナフコ通いを続けるのは馬鹿げている。割引と言ってもせいぜい数百円の話に過ぎない。さっさと片を付けるほうが簡単に決まっている。頭では分かっている。だが……! そして何も手に取らずに引き返した。

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