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音信不通亭日記2 パンビオ死屍累々

十月二十九日(金)
パンビオ(パンジー、ビオラ)のことばかり考えながら暮らす。種全部蒔いておけばよかった。八月末から、いや九月上旬、中旬からでも十分だろう。そこから二週間ごと三回くらいに分けて蒔き切っておけばよかった。十月も末になるまでぼんやりしていたことが本当に悔やまれる。苗ができすぎても困るからなあ、余ったらどうしようかなあ、お隣に分けるか、幼稚園にでも持たせるか……などと考えていた八月下旬の私の頭を思い切り叩いてやりたい。敗軍の将の険しい顔で駄目になった苗をよける。ほぼ全軍消滅。戦なら切腹ものだ。お金はそんなにかかってないから……と別の自分が囁くが、断固これは金の問題ではない。敗北だ。負けたのだ。ああ誰かのせいにしたい。誰かに責任取ってもらいたい。だが本の人もネットの人も南九州の日差しの強さなど想定していない。何が悪いと言うならあの暑さだ。だが対策の取りようなどあったか? あの夏の暑さの中で、十分な光に当てながら気温二十度を保つなどということが果たして可能だったか? 私にはどんなに目を凝らしても不可能という文字しか見えない。何か知らんがクリサンセマムも消えている。お前は強いんじゃなかったのか。もう自棄だ。パンビオもクリサンも今から蒔く。年内に咲かす必要など元よりない。本の言うことが合ってないなら蒔く時期だってこちらの勝手だ。何しろヒマワリだって今満開なのだ。果敢に挑む高齢出産の気分。

十一月三日(水)
この間買ったばかりのバラの葉が早くも白っぽい。姫バラも大苗も。これが噂のうどん粉病? 無農薬でバラジャム作りたい、などと淡い夢を抱いていたが、ジャムになる以前に、バラはこんなにもうどんになりたがるものなのか。十一月に入ったので満を持してナフコの球根コーナーへ。だが未だ値引きはなし。この気温だから当然か。安売りの徒長気味ビオラ苗を見て地味にへこむ。家のと同じ時期に種蒔いて、ここまで立派に育ったのに、もうこんなにぞんざいな扱い。虐待された子供のニュースを見るのに似ている。そして今頃になって小さな種に微かな発芽の兆しが見られて喜んでいるのが空しくなる。GFベンレート水和剤とバラ用のスプレーを買うがベンレート一つで良かったのかもしれない。ついでにシャクヤク苗も買う。去年地植えにしたのは今一体どうなっているのだろうか。消滅したのか。それとも地中で生きているのか。場所ももう曖昧だ。庭の全体像が定まるまで、基本的には鉢植えで管理するほうが確実かもしれない。

十一月四日(木)
パンビオ、クリサン順調に発芽。ただ、大体いつでも発芽はする。問題はこの先だ。とりあえず徒長しないようにテラスに出すが、出したら出したで相変わらず強すぎる日差し。もう何が正解なのだか考えすぎてよく分からない。ずっと部屋で育てていたトルコキキョウの苗もついでに出す。奥のフェンスを覆っていたアサガオを片付ける。遠すぎてあまりよく見えなかったがフライングソーサー、かなり好きな色味の花だった。跡にはスイートピーを植える。苦土石灰を入れていたらSさんがグリーンピースの苗をくれた。その隙を狙ってゴマが脱走する。呼んでも元野良の悪い顔して空地でススキ食ってるだけ。追いかけると逃げる。腹立つ。もう知らん。出て行くなら出て行け。高原町くんだりまで病院連れて行ってやったのにあの恩知らず。言っておくが私もあんたにはそこまで心開いてなかったからね? 一時間で戻る。

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