冬の田園【エッセイ】
まだ夜気を残した朝は霞がかっていた。その霞は向こうの林の頭を、油絵の具を塗りたくったように輪郭をぼかし、それがまた恐ろしさを引き立てていた。あたり一面には田圃が敷かれているが、もう稲は全て刈り取られていて、役割を終えていた。私がその時目にした一帯の風景は殺伐と呼ぶのがふさわしいだろうが、しかしながらその枯れ果て朽ちる草木を見ていると不思議と安堵した心持ちを受けるのだ。田は何年も何年も同じようなサイクルを以て苗を育てては稲穂をめぐらしまた朽ちるという円環の理の中に生きているの