仙台駅の待合室
仙台駅の西口から改札を通ると、すぐ左手に待合室がある。
入ると、すぐ左のカウンターには既に人がびっしりと腰かけている。中央に並ぶ病院にあるような椅子もいっぱいだった。二十三時半をまわった頃、ほとんどがスーツ姿であった。
二席ほど空いていた窓ガラス沿いの椅子に腰かけた。
ふとあるものが目につく。右斜め先、入り口との対面に位置したところにテレビが一つ拵えてある。堅苦しさの中に陽気を感じた。
バイトで通っていた居酒屋があった。その店はパンデミックの煽りでつぶれた。以来、その待合室には立ち寄っていない。
大学一年生の夏に初めてのバイト先として、駅近くの居酒屋に通った。面接の際に当時の店長が「楽しさは保証するよ」とこぼす。とても簡単な言葉に思えたが、何処か忘れられなかった。本当にバイトは楽しかった。
店長は突然店からいなくなることを告げ、やがていなくなった。
居酒屋の店長はテレビ番組のようだった。