#191 うつ病発症当日・発症後336日目 ~よく頑張ったよ,おれ~
うつ病を発症し,短期間ではあるけれども,その原因や予防策を色々と自分なりに考えた結果,弁護士業界でも近年しばしば謳われるようになった「メンタルヘルス対策」は不要だという結論に至りそうです。
「不要」だけれど,誰しも,自分自身が精神疾患(その他の病気・ケガも含む)によって,職務遂行が不可能となった場合の方策は,事前に考えておかなきゃいけないと思います。「災害対策」と同じですね。地震などの災害はいつやってくるかわからないから,普段から準備を整えておかなきゃいけないのは,もはや常識となっていると思いますが,自分が精神疾患になるかどうかも,精神疾患になるまで予測できないので(僕はこう思うので,「早めに誰かに相談しよう」というかけ声ほど,無味乾燥な言葉はありません。自分が精神疾患になることを事前に気づけないのに「早めに誰かに相談」するなんて不可能です。),「災害対策」と同じく,普段から準備を整えとく必要があると思います。
具体的には,自分がいつ職務遂行が不可能になるかわからないので,その場合に,手持ちの事件を,誰に引き継いでもらうか考えておくのが,最も大事な対策だと思います。「自分は大丈夫」という精神論はアホくさいので,そんなアホ丸出しの自信に囚われるよりも,予測できない「もしも」のことを考えて対策を事前に講じておくべきです。それが「プロ」というやつだと思います。
と,自分のことは棚(棚どころか空の上の宇宙くらいまで)に上げたところで,今日もうつ病の経過を記録していこうと思います。(第1回目はこちら。第2回目も大事なのでこちらからどうぞ)
【過去のこと・思い出したこと(発症当日)】
さて,いよいよ,昨日のブログで発症前日(7月9日)から発症当日(7月10日)の朝までの経過を書きました。今日は,発症当日の朝の場面から書いていこうと思います。
その前に少し独り言ですが,発症直後のことを書くのは,どうやら気乗りしないようです。やっぱり,気が重い。とはいえ,最も書くべき場面だと思っているので,なるべく記憶が新しいうちに書いておこうと思います。
7月10日㈫:昨日のブログでも書きましたが,この日は,前日の午後11時に布団に入って寝付いたものの,午前1時半頃に目が覚め,不安と恐怖で一睡もできないまま朝を迎えています。一睡もしていないので,何時からを「朝」と呼ぶべきか定かではありませんが,とにかく,この日も沈んでいた太陽は東から昇りました。夜の間ずっと母が電話に付き合ってくれたわけですが,その母からのアドバイスで,精神科を受診し,その結果次第で仕事を休んだほうがいいと思うようになりました。そのことを上司に伝えるために,僕は,意識もはっきりしない中,午前7時28分に事務所へ行きました。確か,きちんとその旨を伝えることができたような気がします。上司の返答を正確には覚えていないのですが,「休まれたら困る」と言われたことだけは覚えています。
あと,僕の症状についていろいろと聞かれたような気がします。精神疾患ですから,何か目に見える所見があるわけではないので,どういう症状が現れたのかを質問するのは,至極当然だと思います。その質問に対し,昨晩(というかついさっきまで)一睡もできなかったこと,それまでの経験上「プレッシャーに折り合いをつけた」ら眠れていたのに昨晩は眠れず,それが不安と恐怖となって更に睡眠を妨げたこと,首の付け根部分のコリがひどいこと,そんなことを伝えたような気がします。それに対し,上司は,自分も毎晩睡眠薬を飲んでおり睡眠に問題を抱えていること,自分も首が凝っていることなどを説明し,「自分も苦しみながらも一生懸命仕事している」アピールをし始めたのです。こんなアピールをされると,「苦しいのは自分だけじゃないから君も頑張ろうよ」というメッセージに思えてしまいます。しかし,当時の僕に頑張る気力なんて1ミリも残されていなかったわけで,このメッセージは,僕に深い傷を与えたと思います。「ああ,僕の苦しみをわかってくれないんだ。理解しようとさえしてくれないんだ」というキズです。
(今から考えると,毎晩睡眠薬を飲んで眠っているような人に,「自分の苦しみを理解してほしい」と期待すること自体が間違っているとは思います。だから,今も↑の「深い傷」を引きずっているなんてことはありません。とはいえ,うつ病になったおかげで,こういう思考法を学べてよかったです。「他人を信じる」けれども「他人に期待しない」。なぜなら,自分以外の人が,自分に対して何を考え,どんなことをしてくれるかは,その人が決めることだからです。「他人を信じる」ことは,自分が幸せになるために不可欠なので,絶対に必要なんだけれども,その信頼に応えてくれるかどうかは,その人が決めることです。この「信頼」と「期待」を履き違えたらダメです。難しいですが,「テイク」を期待して「ギブ」したらダメなんですね。「テイク」を期待せずに「信頼」という名の「ギブ」をするんだけど,とはいえ,「テイク」がなければ,その人からはスッと離れればいいんです。「ああ,この人はテイクしてくれないんだ」とわかったら,その人はさっさと切り捨てる。だって,その人との人間関係は「信頼」が基礎とならないので,自分の幸せに結びつかないからです。むしろ,その人との人間関係は,自分を不幸へと誘(いざな)ってしまう。)
話を戻します。↑で「深い傷を負った」なんて書きましたが,とはいえ,その場で「傷つけられた」なんて感傷に浸る余裕すら僕にはありませんでした。判断能力・理解力が極限まで低下していた僕は,上司に↑のように言われて,「ああ,そういうもんか」と納得してしまったのです(だから,↑に書いた「深い傷」は,この時点ではまだ自分も意識できていません)。自分の症状を伝え,それに対する回答として,上司から「自分も苦しいアピール」を受けた僕でしたが,自分が正常じゃないことはなんとか理解できていましたし,母から精神科の受診を勧められていたこともあって,精神科を受診するために,その日に休むことを伝えることはできました。そして,午前8時34分に事務所を出て自宅に戻りました。自宅に戻った後,近くの複数の精神科に電話してみたのですが,その日すぐに診察できる病院が1つもなく,やっとの思いで見つけた精神科に,午前11時からの予約を入れ,10時25分に自宅を出ました。
(精神科って,その日にすぐ行けるもんじゃないというのも,この日に学べました。まあ,精神疾患は,直ちに命に関わるものではないので,すぐに受診できないのもよくわかるのですが,「不安に襲われている度」でいえば,いろんな病気の中でも結構上位に食い込んでくると思うので,すぐに対応できる病院がもっと増えてほしいなぁとも思います)
→今日はここまで
【今日経験したこと・経験して考えたこと(発症336日目)】
・今日できた仕事・勉強
今日は出勤しました。午前9時に出勤し,午後3時20分に退勤しました。少しずつ出勤時間が長くなっていて,嬉しいです。先月はそもそも出勤することすらできない日もあったので,大きな成長です。
そして,今日は『安楽死を遂げるまで』(宮下洋一,2017年)を読んでいました(リンクはこちら)。まだ読み終えていませんが,この本では,著者が実際に,スイスやオランダ,ベルギーなどの安楽死の専門家,安楽死直前の患者,安楽死で家族を失った遺族たちに対面して取材を重ね,その結果がまとめられています。著者自身も,安楽死の現場に立ち会い,その瞬間を見届けています。とてもジャーナリズムを感じました。安楽死に関して日本語で書かれた文献の中では,刊行年も新しいし,一級の資料だと思います。「安楽死」という言葉にも,①医師が致死薬を投与して死に至らしめる「積極的安楽死」,②患者が自らコルクをひねって致死薬を投与する「自殺幇助」(なお,致死薬は医師が用意し,投与するための設備(点滴など)も医師が用意します),に区別できるという基本的な知識から,実際の生身の遺族たちへの取材結果や,それとは打って変わって,安楽死を回避して元気に生きている人への取材結果まで書かれています。
僕が特に印象に残ったのは「安楽死が自殺抑止力」になっているという記載についてです。著者自身が「安楽死は自殺抑止力だ!」と主張しているわけではありません。しかし,精神病患者の安楽死についての記載部分で,「安楽死が許可されたから自殺せずに済む」と明言する精神病患者が出てきます。ここは非常に印象的で,というのも,この考えはシオランと共通するからです。シオランという思想家は,このブログでも書きましたが,「自殺できるから今日も生きていられる」と考えています。
「生殺与奪の権利を自分が有している」という考えは,生きるための動機づけに変換できるのですが,これと同じように,生きるのが苦しく,死にたいと考えている人は,安楽死ができなければ,自殺するしかないところ,逆に,自殺以外に死ぬ方法があるのであれば,わざわざ自殺する必要はないというベクトルに変換できるのです。
(もちろん,安楽死が合法化されたベルギーやオランダでも,誰しも安楽死できるわけではなく,「耐えられない痛み」や「回復の見込みがない」などの要件を満たす必要があります。精神病患者の場合,「耐えられない痛み」があるかどうかは,それなりに大きなハードルがあると考えていいと思います。※認められないわけではありません。)
安楽死制度が精神病患者の自殺予防になる場合があるというのは,重要な指摘だと思います。
・仕事・勉強以外に今日やったこと
さっきまで整体に行っていました。
【今日のうつ病】
昨晩は11時頃に布団に入りました。寝付きは良かったです。気づいたら7時頃のアラームで起こされました。アラームで起こされたのは久しぶりな気がします。8時間ほどぐっすり眠れたはずですが,絶好調という感じではありません。ぼちぼちですね。
今日もブログ書けてよかった!
それではまた明日!
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