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#318 ちょっと法律の話 ~借地借家法~

弁護士らしく法律の話します。

また借地借家法の話です。以前いろいろと書いたこともありますが,出勤練習していたら,また同じような事件に直面したので書いてみます。

どうやら,僕が弁護士として働いている愛知県内では,広く借地が用いられているようです。

あえて説明するまでもありませんが,「借地」は「土地を借りること」です。土地だけ(つまり,地面だけ)を貸しておいて,その上の建物は,借りた人が自分でお金を出して建てますす。建物の固定資産税も借主が自分で払います。

「土地を買うだけの資金がないけど,場所がいいから借りておく」といった感じで「借地」は使われているようです。

ちょうど,借地が用いられやすい土地柄なのかもしれません。「愛知県」といっても,名古屋のような中心部では,おいそれと土地を借りることはできません。借地料がバカになりませんから(笑)。借りるとしても,相当な資金力(+高額な借地料をペイできるだけのビジネスモデル)がないと,借りられないでしょう。

ただ,僕が働いている地域は,名古屋の中心部ほど地価が高額ではないので,土地を借りる場合,借地料はそこまで高額にはなりません。もちろん場所によってピンからキリまでありますが,例えば,100坪の土地の借りる場合,月額10万円程度で借りることもできたりします。

そして,この辺はクルマ社会なので,なにかビジネスをやろうとしたら,当然,来客用の駐車場を確保しなきゃいけないんですが,土地を借りていれば,その一部を駐車場として活用することができ,駐車場確保も簡単です。

こんな感じで,⑴借地料がそこまで高くないのと,⑵駐車場を確保しやすい,といった理由で,借地は活用されています。

でも,「借地」ですから,普通に考えたら,その土地はいつか返さなきゃいけません。「いつか返さなきゃいけない」土地でビジネスを営んでいるのはとても不安に思えます。

でも,その不安は法律上,ほとんど解消されています。「借地借家法」という法律があるからです。

この「借地借家法」は,僕らが住んでいるアパートにも適用される法律で,実はめちゃくちゃ身近です。「アパートの賃貸借契約の期間が終了しても追い出されない」という,僕らの生活の基本的な部分を保証してくれているのが,この法律です。こう考えると,めちゃくちゃありがたい法律です(笑)。

この法律のおかげで,私たちは,アパートの契約期間なんて気にせずに,立退きにおびえることなく,安心してアパートに住むことができているんです。

ただ,「借地借家法」という名前のとおり,この法律は「借地」と「借家」の両方に適用されるんですが,「借地」と「借家」でちょっと違うことが書いてあります。

アパートの賃貸借契約は「借家」として借地借家法が適用されます。ただ,今回のメインは「借地」です。

アパートの賃貸借契約についてだいぶ書いてしまいましたが,「借家」のほうはこれくらいにして,「借地」のほうの話に入っていきたいと思います。

さきほど,「いつか返さなきゃいけない土地でビジネスを営むのは不安」「でも,その不安は借地借家法で解消されている」と書きました。

こんなこと書くと,「借地借家法のおかげで,土地を返さなくてよくなっているのか?」という疑問が浮かんできます。この疑問に対しては「その通り」といえるでしょう。

これを土地を貸す側から見ると,「土地を貸したら最後,もう戻ってこない」と考えなきゃいけないことになります。というのも,土地の返還を請求できるのは,「正当の事由」が認められる例外的な場面に限定されているからです。借主が特に問題なく土地を利用している場合,土地を返してもらうのは極端に難しいです。

借主の側から見れば,普通に土地を使っている限り,貸主(地主)から土地の返還を請求されることはないと思っていて大丈夫です。

でも,ここから大事な話をします。単に「借地」といっても,借地借家法が適用「される」借地と,適用「されない」借地があります。そして,借地借家法が適用される借地だけが,↑に書いたような恩恵(例外的な場面しか土地の返還を請求されない)を受けられるのです。

繰り返しになりますが,借地借家法が適用されない借地は,「いつか返さなきゃいけない」という不安が出てきます。

で,借地借家法が適用されるかどうかを分ける基準は,その土地の上に「登記された建物」があるかどうかです。登記された建物があれば,借地借家法が適用されます。逆に,登記された建物がないと,借地借家法が適用されません。

だから,建物を建てる目的で土地を借りて,実際にその土地の上に建物を建て,その建物の登記を済ませれば,めでたく借地借家法が適用されるので,「いつか返さなきゃいけない」という不安が解消されます。

「建物を建てないのに土地を借りるなんてことがあるのか?」と思う方もいるかもしれませんが,あります。例えば駐車場です。立体駐車場は「建物」ですが,アスファルト舗装したりして駐車場として使う目的で土地を借りる場合,土地の上に建物は建たないので,借地借家法は適用されません。

こういう前提知識を踏まえ,僕が今日直面した事例についてお話したいと思います。

これもよくあるんですが,土地を2個借りて,1つには建物を建て,もう1つは駐車場として使う,ということがあります。

それで,です。

↑に書いた前提知識を踏まえると,建物がある方の借地は,借地借家法が適用されますが,駐車場として使うほうの借地は,建物がないので借地借家法が適用されないことになります。

すると,建物がある方の土地については,「いつか返さなきゃいけない」という不安は解消されますが,駐車場として使っている土地は「いつか返さなきゃいけない」という不安は残ります。

というか,駐車場のほうの土地は,期限がきたら返さなきゃいけません。地主さんが引き続き貸してくれればそれでいいですが,ただ,決定権は地主さんにあります。借りている方は,地主さんを説得することはできますが,貸し続けることを法的に請求することはできないのです。

この結論は,借りている側として非常に困ります。

だって,借りている側としては,駐車場のほうの土地も,建物がある方の土地と一体的に利用しているわけで,一体的に利用しているからこそ,その土地に価値を見出しているのです。

片方だけ返せと言われても,建物がある方の土地だけでは十分な駐車場は確保できませんから,駐車場があることを前提にしたビジネスはたちまち頓挫してしまいます。

そのお気持ちは充分に理解できますが,この気持ちが法的に認められるかというと,かなり厳しいです。

そもそも,日本にあるすべての土地には「地番」といって,他の土地と区別するための番号が付けられています。

そして,さきほど,借地借家法が適用されるためには,土地の上に「登記された建物」が必要だと書きましたが,建物を登記すると,その建物の「所在地」が登記情報に明記されます。

で,その所在地は,土地の「地番」で表現されます。つまり,「この建物は,○○番という地番の土地の上に建っていますよ」ということが,建物登記の「所在地」欄に書かれるということです。

そして,「登記された建物」によって,借地借家法が適用「される」ことになる借地の範囲は,建物登記の「所在地」の欄に明記された土地「だけ」なんです。これは,最高裁判所が認める大原則です。

その結果どうなるかというと,先ほどの2個の土地を「建物用」と「駐車場用」で借りる例で言うと,めでたく建てた建物の登記情報の「所在地」欄には,建物用の土地「しか」明記されないわけなので,結局,建物用の土地「だけ」,借地借家法が適用されることになります。駐車場用の土地は,建物の「所在地」欄には書かれないので,借地借家法は適用されません。

その結果,駐車場用の土地は,原則として期限内に返さなきゃいけません。期限後に地主さんが引き続き貸してくれたとしても,地主さんの気持ちが変わることもあるわけで,その結果,「いつか返さなきゃいけない」という不安は解消されないまま残ります。

もう1つ怖いのが,土地が誰かに売られることです。

借地借家法が適用されると,「正当の事由」がある例外的な場面しか土地を返さなくてよい,という恩恵だけでなく,「土地を売られても大丈夫」という恩恵も受けられます。

当たり前ですが,借地は「契約」なので,契約当事者以外に効果はありません。つまり,土地を売られちゃうと,借地契約の当事者じゃない人が新しく土地所有者になるので,その人に対して借地契約を認めさせることはできません(自発的に認めてくれればいいですが,法的に認めさせる権利はないわけです)。

ただ,借地借家法が適用されると,この原則が修正されて,土地所有者が変更されても,引き続き土地を借り続けることができます。このことを,さっき「土地を売られても大丈夫」と僕は表現しました。

だから,さっきの「建物用」と「駐車場用」の土地の例で言えば,建物用の土地は売られても引き続き借り続けられるので大丈夫ですが,駐車場用の土地は売られたら借り続けることができなくなってしまいます。

新しい地主さんが引き続き貸してくれればいいですが,あくまで決定権は地主さんにあります。新しい地主さんが「明日から貸さないよ」と言えばそれまでです。駐車場のアスファルトを剥がして土地を返さなくてはなりません。

こんな結論を回避するため,借主としては「土地の一体的な利用」を主張し,駐車場の土地についても借地借家法が適用されると言いたいところです。

よく引用される,ガソリンスタンドの判例があります。この事案は,ガソリンスタンドの敷地が,事務所部分と給油場所で異なる地番の土地だったというもので,地主さんが敷地を売却し,買い受けた新しい地主さんが,給油場所部分の土地は借地借家法が適用されないと主張し,土地の返還を求めました。

この事案で最高裁は,土地の返還を認めませんでした。

ただ,この事案は,「土地の一体的な利用」に着目して,給油場所部分の土地についても借地借家法が適用される,と説明してはいません。

確かに,給油場所部分の土地の地下にガソリンタンクが埋め込まれていて,ガソリンスタンドの運営に不可欠な機能を有していることには言及しています。

でも,この判決では,「借地借家法が適用されるから」という理由付けは一言もなく,あくまで「土地の返還を求めるのが信義則に反する」という理由で土地の返還請求を退けています。

この最高裁判決で僕が着目するべきと思うのは,

①ガソリンタンクが地下に埋設されていて,事務所部分の土地との一体性が極端に大きかったこと

②「借地借家法が適用される」とは一言も書いていないこと

の2点です。

この点を踏まえて「駐車場用」と「建物用」の土地の例を考えると,「駐車場として土地を利用している」だけでは,一体性はそれほど大きくないし(他に駐車場を借りることもできるし,徒歩や自転車で来るお客さんには一切影響がない),そして,最高裁も「借地借家法が適用される」とは明言していないわけですから,「駐車場用」の土地に借地借家法が適用される,とは言えないでしょう。

なので,結論としては,駐車場用の土地には借地借家法が適用されず,その結果,「いつか返さなきゃいけない」という不安が残り,なおかつ,「土地が売られたら新しい地主さんに土地を返さなきゃいけない」という不安も持ち続けることになってしまいます。

土地を複数借りる(借地)場合,その上に建物があるかどうかで,その後の法律関係が大きく変わります。「一緒に借りるから」といって安心せず,「駐車場用の土地」と「建物用の土地」の2つを借りることのリスクをきちんと考えましょう。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):463日(1年3か月と5日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):384日(1年と18日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):343日(11か月と8日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):317日(10か月と12日)

・出勤練習(2020年3月30日~):199日(6か月と15日)

今日で,出勤練習を始めて6か月と15日目になります。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,5か月以上出勤練習を積み重ねてきました。

今日は出勤し,午前9時~午後6時(定時)まで滞在予定です。

そんな今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),昨晩は午後11時29分に布団に入りました。一昨日の晩は寝つきが良かったですが,昨晩は少し寝つきに苦戦した覚えがあります。ただ,いつの間にか深い眠りに入り,朝6時50分頃に自然と目が覚めました。SleepCycle独自の睡眠品質は82%/100%と悪くありません。しかし,寝つきの悪さや,朝早く目が覚めてしまうのが気がかりです。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

僕の場合,疲労の蓄積が睡眠の質の低下という症状として現れます。睡眠の質の低下は,蓄積した疲労をうまく回復できていないサインなのです。少しだけその傾向があるようなので,今日も早く帰宅して晩ご飯を食べて,早めにお風呂に入ってゆっくり休息しようと思います。

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!→こちら

昨日のブログ→こちら

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

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