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老いは進化だ | 『シルバー川柳 誕生日ローソク吹いて立ちくらみ』 社団法人全国有料老人ホーム協会+ポプラ社編集部(編)
誕生日がくると毎年『またひとつ賢くなったなぁ』と言うんです、うちの母。
老いることをポジティブにとらえようとか、そこまで母は考えてはいないとは思うのですが、自分の誕生日に私は母の言葉とそこに含まれるちゃめっけを思い出し、去年よりもユーモアと賢さを更新できてるかしら、とふと思ったりします。
ところで、はたして老いはネガティブなことなのでしょうか。
時に悲哀は、第三者の視点でみると可笑しみに映ったりします。
クレージーキャッツしかり。
なんだか私、老人が好きなようです。
うちの本棚には『独特老人』(後藤繁雄編著/筑摩書房/2001)、『シルバーアート老人芸術』(鞆の津ミュージアム監修/朝日出版社/2015)などがあるのですが、いずれの本からも老人と呼ばれる方々の、それはもう尋常じゃないパワーをいただきます。
そしてその尋常なさが、めちゃくちゃファンキーでぶっ飛んでておもしろい。
気が向いたら、それらの本についてもまたここでも書いてみたいと思いますが。
気が向いたらね(約束は苦手)。
さてさて、少し話がそれましたが、このシルバー川柳。
ある季節になると、テレビのニュースなどで耳にすることはあったのですが、あらためて一句一句読んでみると、悲哀と可笑しみが絶妙で、心の中で拍手喝采していました。
まず、この本のタイトルにもなっている一句。
誕生日
ローソク吹いて
立ちくらみ
もう、ジャケ買いですよ、こんなん。
最高。
イラストレーション(古谷充子さん)とブックデザイン(鈴木成一デザイン室)も、一句一句に合っていて最高で、読みやすく、素晴らしい。
シルバー絵本、というジャンルがもしあれば、そのジャンルで優勝です。
文字が大きいのも、老人と目が悪い人にとっても優しい。
(私も目が悪いのでありがたい)
中身より
字の大きさで
選ぶ本
という一句に共感する人々の意をくんでいるのでしょう。
さすがシルバー川柳です。
ありがとうございます。
すごい好きなのはこれら。
日帰りで
行ってみたいな
天国に
なぁお前
はいてるパンツ
俺のだが
湯加減を
しょっちゅう聞くな
わしゃ無事だ
デジカメは
どんな亀かと
祖母が訊く
うぅ、身につまされる…。
素敵な句がありすぎて全部書いてしまいそうなので、気になった方、ぜひお手にとってみてください。
※『作者の方のお名前(ペンネーム)、ご年齢、ご職業、ご住所は、応募当時のものを掲載している』とのことです。
いつか迎える我が進む道の先。
バリバリとプライドを持って働いたり生活していた頃と比較しては不甲斐なさにやる瀬なくなったりと、自分の出来ることやテリトリーが段々と少なく狭くなって、身体もいうことを聞いてくれない。
老いによりトホホな自分を感じたとしても、それを笑いに変えられる心のゆとりとパワーを持ちたいなと、人生の先輩方の日常を川柳というかたちでチラ見させていただき、切に思う今日この頃です。
老いは負いじゃない。
多分、「あるがままのその時々の自分を受け入れて諦めつつ笑い飛ばしていく」という美学=老い、かもね。
わたしも、人間としてどんどん進化していこうっと。
それにつけても、川柳っておもしろ!
社団法人全国有料老人ホーム協会+ポプラ社編集部『シルバー川柳 誕生日ローソク吹いて立ちくらみ』ポプラ社(2012)