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どこかに埋もれて見つけられなくなってしまうと悲しいから自分の本棚に飾っておきたい。そんな記事を集めた、自分満足用のマガジンです。
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2023年1月の記事一覧

ショートショート【しりとり発電】

「んー、り、り、り、リピート」 「永久(とわ)」 「わ、わ、輪っか」 「回転ドア」 「あ、あ、朝!」 「再読」 「繰り返し!」  しりとりはそんな風に、僕の部屋でいつまでだって続いていく。くだらないことだと思うかもしれないが、今や僕の部屋にあるテレビも冷蔵庫もエアコンだって全部、このしりとりによって動いているのだ。  沢山の物でひしめき合うような僕の部屋の中でも、ひときわ異彩を放つその巨大な機械。今や僕の生活に欠かすことの出来なくなったそれは、「しりとり発電機」なる不思議な代

掌編小説/ドールハウスの夜

「ねえ、知ってる?」と妻は言う。 「知らない」とぼくは応える。  洗濯物をたたみながら、妻は微笑む。 「昔の人ってね、キャベツ畑から赤ちゃんが産まれてくると思っていたんですって」  そう言って、自分の下腹部を愛おしそうに撫でている。  寝つけない夜だった。  寝室のカーテンが少しだけ開いていて、その隙間から射しこむ光がぼくの顔を照らすからだった。目を閉じていても、街灯の白い光は瞼を透かして、ぼくの眼球に突き刺さった。カーテンを閉めればいいのだが、体はすでに眠りはじめていて

テーマパーク   |詩

羊男の頬へキスをしたら後ずさりしたけど彼の手をつかんで テーマパークへ行くの 羊男は首を振るけどわたしの誘いは絶対だからテーマパークへ行くの あたしの車に乗せてあげるわ 羊男の頬にキスをしたからその手をつかんで車にひきずりこんだの 夜の道をドライヴしてるわ そうね あたしが笑うと歯が見えるものね こわいものね、リップだってまっ赤だもの あたしが笑うとこわいのよね 外に出して出してって、するわよね そうよね テーマパークなんか夜中に着いたってあたりまえだ