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顎関節症という歯科医療被害3-11 初診から3年間放置され続けた13歳女性患者のMR像

(48P)

[図12]変形性顎関節症の修正矢状断MR像(T2*)
上段に平衡状態、下段に大開口状態、
初診時(左)、1年後(中)、3年後(右)で
それぞれのMR像を比較して示している。
このMR像は13歳女性患者のものであるが、
専門外来を訪れても歯科原因が放置されたまま
その場しのぎの保存療法で経過観察され続け、
僅か3年で顎関節骨格が著しく変形している。

 次は「変形性顎関節症の修正矢状断MR像(T2*)[図12]」の説明文である。

「下顎頭の縮小化(deformity)、
     萎縮(atrophy)、突発性下顎頭吸収と
  呼ばれることもある。患者は13歳女性。      初診時、復位性顎関節円板転位で
                                    骨変化は認めない(a)。
    初診から1年後には
        非復位性顎関節円板転位に移行し、                 下顎頭皮質の断裂と下顎窩の
                   平坦化・不正が生じている(b)。」

「初診時、(中略)骨変化は認められない(a)。」とあるが、[図12 a]を観察すると初診時には既に下顎頭の前縁が鋭的に変形しているのが分かる。関節円板が前方転位して下顎頭が擦れて骨変化したことが明らかな状況なのだ。

a閉口状態の構図を私が解説したもの
僅かながらも既に下顎頭前方部分が凹んでいて
それに合わせるように側頭骨関節面にも
出っ張りが生じている(黄色⬆)。
担当著者は稚拙な観察日記を記すばかりで
患者の骨格が変形した原因を何一つ語らないが、
年齢を考えると歯列矯正で矯正装置を装着して
円板軟骨が抜けたまま歯を連結固定したことで
開口動作の度に下顎頭が関節隆起に打ち付けられ
顎関節骨格が損傷・変形したものと思われる。
a大開口状態の構図を私が解説したもの
ぼやけて輪郭が不鮮明ではあるが、
このMR像で下顎頭の上に「復位」しているはずの
円板軟骨のような明るい像は確認できない
(下顎頭周辺の暗い像は関節腔と関節液である)。
初診時の患者は復位性顎関節円板転位だったと
この著者の説明文に記されているが、
初診時に撮影した開口状態のこのMR像で
円板軟骨が何処にあるのか全く示してもいないし、何を根拠に患者が復位性だとするのか不明であり、全くもってデタラメな画像診断である。

 既に先の解説で私がその存在は否定したことだが、百歩譲って復位性が存在して初診時の患者が復位性顎関節円板転位だったとして、初診時開口状態のMR像aを見ても開口動作で復位しているはずの円板軟骨とおぼしき明るい像が下顎頭周辺を見ても何処にも確認できないのはどういうことなのか。お得意の矢印やアルファベットすら何一つ無いことからも、担当著者自身がこの酷くぼやけた大開口位のMR像の構図を全く理解していないに違いない。
 一瞬で終わるカメラのシャッターとは異なり、MR撮影には長時間を要するので患者が開口状態を維持することは難しく、どうしても身体の震えで信号が乱れて像がぼやけてしまうのは仕方ないことではある。だが、閉口状態の像はあまりぼやけてはおらず、初診時閉口状態のMR像を解析すると下顎頭の前方部分が凹んでいることが分かる。
 円板軟骨が抜けて顎関節で上下に隙間が生じた状態では開口動作の度に下顎頭が関節隆起斜面に打ち付けられてしまう。歯列矯正装置やブリッジのように歯を連結固定したままでは円板軟骨が抜けても歯が動けず沈み込めないので顎関節はいつまでも浮いた状態となる。下顎頭が打ち付けられ続けて前方部分が陥没するように変形していくのが顎関節骨格変形のよくあるパターンであるが、この女性患者は初診時のMR像でもその状況が十分に見て取れるのだ。
 初診から1年後のMR像bを見ると初診時aで凹んでいた下顎頭が更に大きく陥没していおり、陥没した下顎頭の前方部分では同じ形状で側頭骨関節面が出っ張るように変形している。円板軟骨が抜けて開口動作の原位置で顎関節が浮いたままになり、開口動作の度に下顎頭が打ち付けられて変形した何よりの証拠である。実に恐ろしい話であるが、悪条件が揃えば僅か1年でここまで顎関節骨格の変形が進むのである。

b閉口状態の構図を私が解説したもの
下顎頭と側頭骨関節面の変形が
初診時よりも顕著になっている。
恐ろしいがたった1年でも原因状況が放置されれば
これほど酷く骨格の変形が進行する事もあるのだ。
b大開口状態の構図を私が解説したもの
輪郭がぼやけているので不鮮明ではあるが
閉口状態のMR像とあわせて考えると
おおよそこのような状況であると思われる。
このMR像では下顎頭周辺を見ても
円板軟骨とおぼしき明るい像は見当たらず、
円板軟骨はこの観察断面よりもずっと内側にある。

 いずれにせよ円板軟骨の転位が復位性でも非復位性でも患者が顎関節動作に不調を来していることに変わりはないはずである。そして、その痛みや違和感が尋常ではないからこそ13歳の女性患者は顎関節症専門家を信じて大学病院顎関節症専門外来を訪れたはずだ。
 だが、結果としてデタラメなMR画像診断を受けても機械仕掛けの異常原因は把握されぬまま有効な治療が何一つなされることもなく、この患者は成長期の骨が潰れ終わるまでキチガイな変態口腔外科医師に動物実験の如く只々経過観察されていただけなのである。 
 この先に長く続くであろう若い患者の人生にどれだけの苦痛と弊害が生じるかを考えると元歯科医療従事者として痛ましい限りである。

 この書を幾度と読み返していて気づくことがある。それは顎関節症に関わる外科処置の症例患者は殆んどが女性だということだ。中には男性患者の症例も少数いたが、それらは明らかに他とは状況が異質であった。顎関節を患って症状が重症化するのは女性が多く、男性との有意差は明らかなのである。 円板軟骨が転位して抜けると顎関節動作の摩擦が大きくなり、脱臼の危険性も高まることで顎関節骨格に損傷を生じやすい状態となってしまう。症状が重症化するか否かは円板軟骨が転位した後で顎関節骨格の損傷に修復が追いつくか否かである。そこには顎関節動作の負荷だけではなく栄養状況と骨格強度も大きく関わってくる。
 女性は初潮を迎えると月経の都度多かれ少なかれ出血することになる。血液の成分が栄養の摂取で補う事が出来ればいいが、そうでなければ骨髄から血液の栄養を補うことになり、中身を栄養として供給した骨は脆くなってしまう。その状態が慢性化せずとも骨が脆くなる、または骨の修復力が弱まる時期が女性特有の体調の波によってもたらされる。しかし、ヒトが顎を使うのは毎日のことであり、顎関節が痛いからと言って食べなければ生きることも出来ないし、傷を修復する材料も不足してしまう悪循環に陥る。

 また、成長期の子供は骨格を大きくする為に大人よりも骨の強度が低い状況にある。大きくなろうとして皮質骨の上にただ骨を積み重ねていくのでは不要に身体が重たくなってしまうし、初めから骨太な状態を維持しようとすれば成長も遅くなって骨を作る材料も間に合わなくなってしまう。成長期といっても吸収できる栄養の量には限界があるので、ヒトが骨格を大きくするには先に薄い状態で骨の外枠を大きくしておいて、大人になった後で内側から骨を蓄積して強度を増す方が合理的なのである。そのため成長期の骨はよくも悪くも柔軟で骨格強度が低いので、機械仕掛けに不都合が生じると大人よりも骨が塑性変形しやすく関節骨格も損傷しやすいのだ。
 更に、女性は閉経を迎えれば、女性ホルモンが減ってしまう。エストロゲンには破骨細胞の働きを抑制する作用があるので更年期にエストロゲンが減ることで骨粗鬆症になりやすくなることが知られているが、老いてなお女性の骨が男性よりも弱く変形しやすい状況が続くのである。
 これらが顎関節の不調で重篤化する患者が女性に多い理由なのだが、この[図12]の症例を考えた場合、先に示した条件が患者に当てはまる。女性が初潮を迎え始める年頃で、まだ身体が成長段階にあり骨格強度が低いこと、そこに歯列矯正装置の装着などの歯科原因が加わると顎関節を損傷して急速に骨格が変形してしまう危険性が高まるのである。
 いったい誰が作った病なのか、「突発性下顎頭吸収」という病をエリート性国語力失調症の顎関節症専門医達にはレッテル貼りではなく病理を簡潔に説明して頂きたいものだ。

「初診から約3年経過、(中略)
         非復位性顎関節円板転位で
              関節円板形態が両凸レンズ状
     (biconvex)に変形している(c)」

 3年後のMR像(c)では変形どころか骨格の原形を留めないほどに、若年女性患者の下顎頭関節面が無くなっている。

c閉口状態の構図を私が解説したもの
観察する修正矢状断面がの角度が大きく異るので
a、bと一概に比較できるものではないにしても
丸かった関節面が僅か3年で平坦に削れて
下顎頭の形状が著しく損なわれているのが分かる。
円板軟骨が下顎頭の上に被さっているようだが、
この著者は非復位性に移行したものとしており、
彼らの理屈でいえば復位しない円板軟骨は
閉口状態で下顎頭の前方にあるはずである。
だが、両凸レンズ状に変形した円板軟骨など
下顎頭の前方部分には映っていはいない。
繰り返すが下顎頭前方の暗い像は
円板軟骨ではなく関節腔と関節液である。
C 開口状態のMR像
あまりにもぼやけていて参考になる画像ではない。
ちなみに初診時よりも3年後の
開口位のMR像で輪郭がぼやけているのは
関節面骨格が変形して形状が大きく損なわれた事で
大開口動作時に掛かる咀嚼筋の張力に対して
骨格の支えが安定しなくなってしまい
MR撮影時に顎がブレて信号が乱れるからである。

 彼らは初診から骨が変形する苦痛を抱えた患者の身体を3年間も只々MRIで観察し続けていただけなのだ。そこに記された内容は画像診断と呼べたものではなく、自分の見たものを言葉にしただけの稚拙な観察記録でしかない。救いを求めてやって来た患者の苦しむ様を顎関節症専門医は実験体を覗くように眼の前でただ眺めていたのである。無能なエリート共の職務怠慢に、私は憤りを感じずにはいられない。

 ここでは[図12]に提示された同一患者のMR像6枚を解説してきたのだがMR像の左下にはそれぞれの観察断面が示されており、拡大して並べると下のようになる。

[図12]に提示されたMR像それぞれの観察断面
比較すると耳介軟骨との位置関係からも
観察断面の傾きがばらばらであることが分かる。

 それぞれを見比べてみると観察断面の傾きに大きな違いがあり、開口状態と閉口状態では観察断面が前後にずれるので相対的な位置関係や関節骨格の形状の変化を比較することは不可能である。妄想癖のある顎関節症専門医の気分次第でころころ変わる修正矢状断では骨格形状を単純に比較することは出来ず、観察基準が曖昧とあっては客観性に乏しく画像診断の信憑性が低いのも当然である。実際に連中の画像診断は終始誤診だらけであり、
むしろ暗い像を作りだして円板軟骨をでっち上げて病を創り出したり、疑いを向ける他者の目を煙に巻く為にわざと観察断面を傾けて状況を分かりにくくして解説を誤魔化しているのではないかと疑ってしまう。

大開口動作時の下顎頭の動き
大開口動作で下顎頭が動くのは正面方向であり、
経過観察して状況の変化を比較するのであれば
MRの観察断面は修正などせず
通常の矢状断に定めるほうが合理的である。

 円板軟骨の有無で多少楕円軌道になる場合があるものの、開口動作で下顎頭が動くのはほぼ正面方向である。骨格の状態や変形を確認するのであればおかしな修正を加えずに正面方向と並行な通常の矢状断面で観察するほうがよほど合理的である。
 なぜ顎関節症専門医が勝手な修正を加えて観察断面を大きく内側に傾けるのかといえば円板軟骨を映すことに固執しているためである。
 前方転位によって下顎頭と下顎窩の間から抜けた円板軟骨は外側翼突筋に引き寄せられて必ず顎関節内で下顎頭の内側前方に位置することになるし、抜けた円板軟骨は顎関節動作に全く機能も干渉もしなくなる。前方転位して大きくずれてしまった円板軟骨の位置をわざわざMR画像診断で調べる意味や必要性は何処にもないのである。
 ヤブ医者達がMRIで円板軟骨の描写に躍起になるのは顎関節動作の不具合と症状の原因を前方転位でずれた円板軟骨のせいだと決めつけて全ての不都合を責任転嫁するためである。それゆえにデタラメな画像診断で復位性やら非復位性やらと患者の円板軟骨に因縁をつけて外科処置を患者に勧め、顎関節を切り開いてなにも悪くない円板軟骨を切除し、
二度と戻らない患者の身体を医療廃棄物に捨てるのである。

 顎関節症専門医の画像診断は無駄どころか患者から治療の機会と時間を奪い続け、顎関節骨格の変形を促進させる結果につながりむしろ有害であるという皮肉な現実をこの13歳女性患者の悲劇が物語っているのだ。 


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