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【社会人留学2年目(交換留学中)】幸せは学びと人との関係に宿る。Sisuとは?~Week3~
こんにちは!
写真はフィンランドの冬の銘菓、ルーネベリタルトです^^
さて早速ですが、先日、とても面白い、印象深い出会いがありました。
土日にヘルシンキからフェリーで約二時間のエストニアへ行った帰りのこと。ヘルシンキ行きのフェリーで、疲れ切ってぼんやりしていると、隣に座っていた年配の男性が「フィンランドに住んでいるの?」と話しかけてきました。彼はビールを片手にご機嫌で、いかにも話好きそうな雰囲気。正直に言うと、会話が続くのは少し面倒かも…と思っていました。前にも書きましたが、私は社交的ではあるものの、内向的な面も強いため、特に疲れているときは一人で静かに過ごしたいと感じるのです。それでも、せっかく話しかけてくれたし、悪い人には見えなかったので、適当に相槌を打ちながら会話を続けていました。
しかし、話をしているうちに、彼がとても興味深い人だと気づくのです。
彼は幼い頃から、誰に勧められたわけでもなくギターに夢中になり、お兄さんが何となく持っていたギターを自分のもののように扱って練習を始めたそうです。左利きだった彼は、右利き用のギターに慣れるために矯正し、夢中で弾き続けました。いくつかのバンドを組んだものの、思い描いたような活動はできず、不幸にも病気を発症したことをきっかけに、ソフトウェアエンジニアとしての道を歩むことになります。現在はフィンランド最大手のIT企業で働きながら、就業時間後に音楽制作をしています。「自分は歌えないけれど、今はAIに歌ってもらえるから、音楽を作ることができるんだ」と語る彼の姿はとても楽しそうで、自分の得意分野を組み合わせて作品を生み出すことを心から喜んでいるようでした。
「大好きな音楽を手放すのは大変だったでしょう?」と尋ねると、彼は笑顔でこう答えました。
「僕にとっては、それは life expansion(人生の拡張)だったから、新しいことを始められるのは前向きなことで、寂しさを感じるものではないんだよ。」
その言葉に、私は心を揺さぶられました。
彼は人生経験が豊かで、とても聡明な人でした。私のさまざまな問いかけにも、真摯に向き合い、自分なりの考えをしっかりと伝えてくれました。
たとえば、「フィンランドは7年連続で『世界一幸福な国』に選ばれているけれど、それについてどう思いますか?」と尋ねると、彼はこう答えました。
「僕たちは福祉国家に生きていて、とても幸せだと思うよ。無償で教育を受けられるし、医療も保障されている。特に、僕が飲んでいる薬は、他の国ではものすごく高額なんだ。もし、その費用を毎月払い続けなければならないとしたら、日々の生活がとても苦しくなってしまうと思う。だから、こうして守られているという安心感があるし、本当にありがたいことだよ。」
また、「フィンランドで大切にされている『Sisu』という価値観は、どういうものなんですか?」と尋ねると、彼は少し考え込んだあと、こう話してくれました。
「難しい質問だね。でも、Sisuは、戦時中にしぶとく耐え抜いた祖先たちの精神が受け継がれているものなんだ。家庭でも学校でも、忍耐が必要な場面で親や先生から『Sisuを持ちなさい』と言われることが多かったよ。例えば、大雪の日に学校を休みたかったけど、結局行くしかなかったのも、Sisuがあったからなんだ。フィンランドの人々は、寒さやパーソナルスペースが侵されるような状況など、さまざまな困難に耐える力をSisuによって養っているんだよ。」
「寒い中、バス停でじっと立っている人を見ると、『あの人はSisuを使っているな』と思うよ。」
「アイススイミングもSisuの一例だね。忍耐を鍛えることで、感情のコントロールもできるようになるんだ。」
彼の言葉から、Sisuが単なる「我慢」ではなく、フィンランドの人々が受け継いできた精神的な強さや、困難に立ち向かう力なのだと感じました。
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「Sisu」が必要なときに食べてみよう
セレンディピティとよぶに相応しい、あたたかく素敵な出会いでした。
"I wondered on my way here that suddenly I just ended up chatting deep stuff, out of nowhere. You were the inspiration."
(気づいたら突然、深い話をしていた。何の前触れもなく。きっかけは君だった。)
年齢も離れているし、バックグラウンドも大きく異なるけれど、それでもこうして誰かとあたたかいやりとりができること、心を通わせることができたことが、心から嬉しかったです。
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さて、授業も早いもので、後半に差し掛かりました。
相変わらず教授は素晴らしく、特に豊富な実例を交えながら共有してくれる点や、思慮深く考えさせられる問いを投げかけてくれる点が圧倒的に素晴らしい!! さらに、彼の魅力を引き出すクラスメイトの高いエンゲージメントも見事で、毎回の授業が本当に刺激的です。知的体力をフルに使うため、授業後はどっと疲れるものの、それ以上に心の奥底から湧き上がる深い喜びを感じています。改めて、私は良い学びを得たときにこそ、大きな幸せを感じるのだと実感しました。
授業でのキーラーニング
パフォーマンスマネジメント(業績管理)の目的:
Effort-direting/努力の方向づけ:何にどれだけ努力をすれば良いかを方向づける)例:基本給等のReward
Effort-inducing/動機付け:より良い成果を出そうと努力をするように動機づける)例:賞与等のIncentive
メルボルンでの学びを振り返りながら、HR領域で扱うのは、パフォーマンスアプレイザル(業績評価)だと認識しました。パフォーマンスアプレイザルには、報酬の分配と従業員の成長支援の目的があります
業績目標の設定の背景:
戦略的・長期目標(株主の期待)と年間短期目標のバランス
実務では、長期的な成長戦略と短期の業績目標が必ずしも連動していないことが多い。両者を適切に調整し、整合性を持たせることが重要将来的な成長率を現在価値に引き直した際に求められるキャッシュフローや利益の確保
企業が持続的に成長するためには、将来の期待成長率を現在の意思決定に反映させ、それに見合うキャッシュフローや利益目標を設定する非財務KPIの目標設定
企業戦略や組織の価値観、各種イニシアティブ(例:サステナビリティ、従業員エンゲージメント、顧客満足度など)に基づき、財務指標だけでなく、非財務KPIに対する説明責任(Accountability)が求められることがある。そのため、これらのKPIにも具体的な目標を設定し、成果を測定できる仕組みが必要
ボーナス支給に上限を設ける背景:
偶発的利益(Windfall Gains)への対応
市場環境や一時的な要因による突発的な利益が、過度な報酬に直結することを防ぐため長期的な利益を犠牲にする行動の抑制
短期的な成果を追求しすぎることで、持続的な成長や企業価値の向上を損なうリスクを防ぐため縦の報酬格差の調整(Vertical Compensation Equity)
部下が上司を上回る報酬を得る状況を避け、組織内の公平性を維持するためボーナスの変動を平準化する(Smooth Out)
従業員にとっては安定した収入を確保し、企業にとっては人件費の急激な増減を防ぎ、財務の安定性を維持するため
インセンティブ制度を評価する際の指標:
報酬は従業員にとって価値があるか?
過去に、コロナの影響を考慮し、特定の地域で勤務する従業員に対して特別報酬を支給したことがあります。その際、単に支給通知を送るのではなく、人事責任者が支給の背景についてZoomで丁寧に説明する場を設けました。振り返ると、これは単なる金銭的補償ではなく、その報酬が持つ意味や、組織としての意図(すなわち価値)を正しく理解してもらうための重要な取り組みだったと感じています。従業員にとって報酬が価値あるものとなるには、金額だけでなく、その意義が適切に伝わることが不可欠でしょう
インセンティブは十分に大きく、行動に影響を与えられるか?
人は報酬にすぐ慣れ、それが取り除かれると懲罰のように感じることもある。インセンティブのサイズには、単なる金額以上に、人のパフォーマンスを引き出すのに十分な意味を持たせることが重要
制度は理解しやすいか?
現在ではシステムが複雑になりすぎているという批判が多い。極力シンプルに!
報酬は適切なタイミングで支給されているか?
インセンティブの効果は持続するか?
インセンティブは調整・撤回が可能か?
基本給に組み込むと引き下げが困難になるため、状況に応じて変動できる仕組みにする
制度のコスト効率は良いか?(直接的な支払いだけでなく、管理コストを含めた利益がコストを上回るか)
制度は公正・公平だと認識されているか?
この他にも、主観的評価の是非や、目標のチャレンジングさの度合い、部下の目標設定への関与の程度、OKRの活用方法といったテーマについて活発な議論をしました。重要な視点がいくつも飛び交い、メモが追い付かず、字が大変なことになっています。(笑)
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これを2.95€で食べられるのは本当にありがたい…。
これまで人事として取り組んできたのは、経営が決定した所与の目標を部署や個人にどのように落とし込み、それをどのようにフィードバックするかという、いわば「大きな絵」のなかでのインプリメンテーション(実行)に重きを置いたものでした。しかし、このコースでは視座をさらに引き上げ、そもそも報酬をどのようにデザインするのかについて学んでいます。
その中で、問題が発生した際に、それが「デザイン(設計)の問題」なのか「インプリメンテーション(実行)の問題」なのかを整理する視点を持つ練習も行いました。こうした学びを通じて、企業経営に関する視野が広がり、大変有意義な経験となっています。
今週もあっというまに終盤ですが、よい一週間になりますように。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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エストニア❤