見出し画像

承認欲求と諸悪の根源はマズローだという話




僕は承認欲求について、実は昔から知っていたらしい。
学生時代に、マズローのうんたらかんたらで習ったからだ。

僕はマズローの欲求のうんたらかんたらピラミッドを否定する気持ちはないが、自己実現という言葉を生み出した罪は重いと思っているので、その点でマズローに対しては懐疑的であると言える。


人間の目の前にあるものすべて、名前をつけると命を持ってしまう。
だから人間の抱えるどうしようもない醜い欲求に、七つの大罪以外の名前を与えるべきではなかったのだと思う。

退治するためにどうしても必要だったのなら仕方ないが、僕は、マズローはそこにある不愉快なものに名前をつけてみんなに見せたくて、名付け親になっただけなのではないかと思う。
まさにマズローの承認欲求が、承認欲求を生み出してしまったという話ではなかろうか。

まあそんな話はどうでもいい、今回の肝ではない。


自身の承認欲求の強さに悩んでいるという人を見かけた。

ふむ、と思い、僕は一生懸命、その人の気持ちを考えてみた。
時間をかけて誠実に向き合ってみたのである。だが、あまり共感することが出来なかった。


なぜなら僕は、思春期の頃はモテたいとか人より良く見られたいとか褒められたいとかをめちゃくちゃ意識した典型的な中二病だったのだが、二十代後半~現在においてはそういった欲求が皆無だからである。



そりゃあ僕だってゴルフ動画とかを観ていて、「可愛い!」「スイングが綺麗!」「うまい!」と褒められている同世代の女性が出てくると嫉妬する。
動画を直視できないくらい悔しい。
その人と自分を比較して落ちこむこともある。


だがそこで夫が、

「これのどこが綺麗なスイングなんだよ。ただの手打ち」

「どの人も似た顔立ちしてるから、区別がつかなかった。整形してるのかなあ、同じ医師に頼んでるのかなあ」

ということを、僕を持ち上げる意図があってかないのかわからないが、スッと口にしてくれるのである(僕をケアする気持ちはたぶんにあるだろう)。


このことから、僕に承認欲求が無いわけではないことがわかる。

単に、夫が僕の承認欲求を満たしてくれているから、渇きを覚えることがないということなのだ。ありがたい話がここで発覚した。


また、僕は自分で言うのもなんだが非常に根気強い性格なので、その同世代のゴルフアイドル的な人と自分を比べて落ちこむ気持ちがあったとしても、黙々と日々の練習やトレーニングを続けていくのである。


今の自分が情けなくて悔しい、恥ずかしい。
だけどそれらはひたすらに適切な鍛錬を積むことでしか克服できない。
自分で、自分の目指したトロフィーをもぎ取るしか、結局のところ勝利などどこにもないのだと、僕は知っている。


承認欲求に振り回されて辛いという人は、やっぱり自身との対話をするしかないと思う。

自身のどんなところを認めてほしいのか。
自身の認めてほしいところを客観的に見た時、何が不足しているために、他者らの承認を得られないのか。

ここで他責をしてはいけない。
「私の容姿や経歴に嫉妬してるから評価してくれないのね」みたいな風には考えない方がいいということだ。

いろいろなケースがあるので一概には言えないが、働く職場全てでそういった感覚を覚える場合、ほとんどの場合、ご自身の能力が不足しているか、コミュニケーション能力が欠如しているかのいずれかまたは両方である。


夫が働いている姿を見ていて思うのは、周囲からの信頼だとか仕事の能力だとかへの承認というものは、一朝一夕に得られるものではないということである。


もちろん有能な人は勤務初日から有能なのだが、それが継続されるものかどうか・チームとして友好的に発揮される力かどうかというのは、少なくとも数か月働いてみないと自身にも周囲にもわからないことだと思う。


夫は僕から見ても非常に優秀で信頼に足る社会人なのだが、それでも部署の多くの人たちだとか上司の数人だとかが認めてくれるまでには、年単位の時間がかかっていた。

その間、夫は、周囲の評価を気にすることもなく、ただ淡々と、毎日自身にできる精いっぱいの仕事を続けていただけだ。

上司、同僚、後輩への気遣いという、社会人として人として必要なことを欠かさないようにしながら、ひたすらに仕事を積み重ねていたように見える。

書いていて夫の精神力の強さが怖くなってきた。


周囲からの評価だとか、自身が評価されたい気持ちがノイズになるという時点で、速度が足りないということなのかもしれない。

全速力で集中して事に当たっていれば、自身が評価されているかどうかということは二の次になり、いかに速く走れるか、この先の目標地点に到達できるかといったことしか気にならなくなるのではないだろうか。


マズローが生み出した承認欲求という言葉を、目の前のことに集中できない言い訳として使用しているということなのかもしれない。

まったくもって、マズローの功罪は大きい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集