翻訳者のためのおしゃべりサロン
先日、「翻訳者のためのおしゃべりサロン」に参加しました。出版翻訳家の方々が自らスタッフとして運営・開催してくださっている会で、茶話会のような雰囲気のなか、オンラインでプロの翻訳者のみなさんとお話しできる貴重な場です。
ちょうどその前日に、編集者であり翻訳家・作家でもあった石井桃子さんの生きざまがまとめられた『石井桃子のことば』という本を読み終わったところで、石井さんの作品や、児童文学・絵本を中心とした出版業界に関する話、子ども時代を支える本の存在などについてだれかと話したい気持ちがふくらんでいました。石井さんがいろいろな媒体に寄稿された文章や、共に働いた方々のエッセイなどを読み、「子どもが子どもらしくあること」の大切さや、その時期に子どもが接する本の重要さをあらためて感じました。石井さんが「子どものための本」に傾けた熱意と真摯さに胸を打たれ、「親業、しっかりおやりなさいね」と言われたように感じてもいました。同時に、ククが小学校でもまれつつあるのをどう見守っていけばいいのか、距離の取り方に迷っていたところでもありました。そのタイミングで、おしゃべりサロンのスタッフさんの「今日、まだ席がありますよ」というポストをSNSで偶然目にし、滑り込みで参加することができました。
サロンでは、スタッフさんが初参加の方や久々に参加された方にも水を向けてくださり、私も口を開く機会をいただきました。石井桃子さんのご本を読んだこと、子どもや本との向きあい方について反省した部分などもあったことをお話したところ、ほかの参加者のみなさんからこれまでのご経験やご自身の子ども時代を振り返ってのエピソードをうかがうことができました。みなさんの言葉の端々から「本だけが絶対ではない。幸せの形もいろいろ。大変なこともあるけどね、だいじょうぶ」というお気持ちが伝わってきました。「本とのつきあい方も、子どもとの向き合い方も、ほどほどでなんとかなっていくのかな」と思え、背中のこわばりが少しずつほどけていくように感じました。この日、「本のプロ」である翻訳者の方々からそういう空気を受け取ることができたのは、私にとって大きな意味があったように思います。
ほかにも、複数冊のゲラを抱えながらのスケジュール管理や、出版社が本を世に出すために負担している経費(書店に日参して営業してくださる社員さんの人件費など)、忙しいなかで根を詰めないためのコツ(ふわ~と楽しめるものを持つ)など、有益なお話をたくさんうかがうことができました。
そしてもうひとつ、翻訳家の倉田真木さんに「お訳書の『花殺し月の殺人』、大好きです!!」と直接お伝えできたのが、個人的にはとてもうれしかったです(推しに愛を伝えられた感じでした)。
申し込み履歴を見てみたら、実に2年ぶりの参加でした。前回と同じくみなさんにあたたかく迎えていただき、ありがたかったです(「プロの方々だ~!」と思って内心とても緊張していました)。
本好きからしてみると「プロの出版翻訳家」と直接お話しできるなんて夢のようですが、こんな場が本当に存在するのです。条件は「出版や翻訳に興味がある」ことだけ。相談、雑談、宣伝なんでもOK、学生さんや翻訳の勉強中の方でもだいじょうぶ。スタッフさんが会話の流れをじょうずに誘導してくださり、質問しやすく、経験者のお話を聞きやすい場を作ってくださいます。サロン以外に、リーディングやレジュメに関する勉強会なども開かれていて、X(旧Twitter)の公式アカウント等で情報を発信してくださっています。ご興味のある方はぜひ開催日等を確認してみてください。