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繊細さと遊び心にときめく/須田悦弘@渋谷区立松濤美術館

先日、ある美術館へすてきなものを見に行ってきました。

この美しい花たち、何でできていると思いますか?

なんと、すべて木彫なのです。
須田悦弘さんという方の作品です。

薄い花びら、茎やつるの細くゆるやかなカーブ。

木彫りとは到底思えない繊細な草花が
美術館の壁や床にさりげなく
まるで生えているかのように置かれていて、
見る人は宝探しのように館内を歩き回ります。

サイズも、虫食いの跡も、色合いも
まさに本物の草花のよう。
雑草もそこかしこに生えています。
普通に見て回っていたら、見逃してしまうような場所にも生えている。

これも作品。

可愛らしく、さりげなくて、遊び心が満載。

「どうかな?全部見つけられたかな??」と
にやりと笑って
須田さんに見られているような感覚になります。

こんなふうに繊細さや植物への愛を、いたずらのような遊び心を含めて表現できるって最高だなぁ、と
須田さんへの羨ましい気持ちと尊敬の念を抱きながら美術館の中を巡りました。

美術館を出るとなんだか見疲れてしまう展示などもありますが、
この展示は、あー、楽しかった!美しかった!と大満足。
作品マップがあって、全部見たつもりでいましたが、どうやら2つ見逃してしまっているようです。やられた〜
もしかして、マップに載せてない作品もあるのでは・・・と思ってしまうような、謎解きのような楽しさです。

もう一回行こうかな。

こちらの美術館、存じ上げませんでしたが、
白井晟一さんという著名な建築家の方の建物とのことで、不思議な面白い構造をしています。

その空間の中に須田さんが作品を素敵に置いていて、空間全体がインスタレーションのよう。

須田さん曰く、
仏像をみるときに、お寺に行ってその中で仏像をみるときと、仏像それ自体を別の空間で見るときでは、
見る側にとっての印象もだいぶ異なる実感があることから、
須田さんは作品の置かれる空間にもとてもこだわりをもっているとのことでした。
そうか、だから、作品が佇む空間の余白も美しい。


須田さんは、自分のこの素敵な作品たちが
自分がいなくなったあと残らなくてもよいと思っているとのこと。

日々、自然の草花に向き合って
その咲くさま、枯れてゆくさまも
じっと観察しているであろう須田さんらしいお考えだなぁと思いました。
はかなさや諸行無常のようなものも感じる。

人間も、植物も、自然。
生まれてきて、それぞれの命を輝かせて、
そして老いて、土に還っていく。

作品も、土に還っていってもいいと
思っていらっしゃるのかもしれないな。
(こんな素敵な作品、そうなるはずがないけど)


須田さんの作品には、なんというか、押し付けがましさや見てみて!というような圧がない。

自然で、さりげなくて、やさしくて
何より、楽しんで作っているのがひしひし伝わってくる。

繊細さ、遊び心やユーモア。

ことばを使わずに、こんな表現ができるって、すごい。

とても素敵なものを観ることができて
嬉しい年明けです。

須田悦弘 /渋谷区立松濤美術館
2025.2.2まで

ときめきに満ちた、楽しいお時間をぜひ。







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