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【詩】シルエット 

等身大の自分ほどパッとしないものはないよ
ありのままでいいんだよって誰かは言うけど
このままの自分に意味なんてあるんだろうか
そもそも生きるって何?
世界って何?
問いは山ほどなのに
答えはあまりにもあやふやで
何が楽しくてみんな生きてるんだろうって

ねえ、憧れのあの人のシルエットみたいに
着るものも話し方さえも近付けてみたけれど
ピッタリは重ならず
どこかがはみ出してて
はみ出したとこは削ぎたいの
それを僕らしさとはしたくないんだと
僕じゃない事が僕にとっての素敵で
僕を突き付けてくるものには蓋をしたい
そして幸せになりたい
僕は幸せになりたい

なのに憧れのあの人は
なのにあの人は笑われていたんだよ
なのにあの人も裏切られていたんだよ
なのにあの人も孤独で、世界を恨んでた
なのに、なのに、なのに
なのに、なのに、なのにさ

なのにあの人は笑い飛ばし続けたよ
なのにあの人は戦い続けたんだよ
なのにあの人は諦めなかったんだよ
だから、だから、だから
だから、だから、だから

僕はあなたに憧れたんだよ

僕と同じ戦場から抜け出したあなたへ
僕は早くあなたになりたい
ここを抜け出した後の世界へ行きたい
そこには何があるの、ねえ?
少し前までそこには
どんな美しい世界があるのかなって
思っていたけど
ここ最近気付いたことがあるんだ

きっと今と同じような時が続くよね?
きっと今と同じようにたくさん迷うよね?
きっと今と同じようにたまに泣くんだろう
でもそれでもいいや
もうそれでもいいや
あなたに憧れて
あなたに近付いてく
この今日が この日々が
僕は割と好きなんだ
それが嬉しいのさ
それが嬉しいから
一歩ずつ 僕のまま
一歩ずつ 戻って
一歩ずつ 進んで
僕でいる悲しみも
僕だけの拙さも
あっていいよとあなたが歌ってくれたから
もう何も怖くないよ
もう何も怖くないよ
それなりにやってくよ
僕なりにやってくよ
ねえ、ありがとう




憧れのあの人は苦労とか悲しみとかを知らない特別な存在なんだと思っていた。この世界にとって選ばれた一握りの特別な存在。
そうやって神格化することで自分と同じ人間だって事から目を逸らそうとしていたのだと気付くのにまだあの時の僕は幼すぎたのかもしれない。

けどその人の事を知っていけばいくほどに彼もまた彼にしかない悩みを抱え、苦労して、人並みに悲しみや寂しさを持っている事が分かった。それは何も特別なことじゃなくて、人の営みはしんどい事や投げ出したいと思うような事の連続で。
その中で見つけた一筋の光明だったり、人との出会い、音楽や小説との出会いに救われて明日に向かっていってる。朝になったら起き、昼間は働いて、夜には帰って飯を食って寝る。

同じ人間。


積み重ねてきたものが膨大だからあの人はあそこまでいけたんだろう。それでも同じなんだったら、毎日を憧れへ一歩ずつ近づけていく事なら出来る。
少し前に進めたかなって日は嬉しくて、中々前に進めてないような日に苛立って、一歩進んでニ歩戻る。それでも今日はもう三歩って前を向いてゆく。
そういう日々を頼りない自分でも歩いているって事自体が頼もしくて嬉しい。
そういう今の方があの人のシルエットに近付けている気がするし、私は私らしいシルエットになっていってると思うから。


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