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【美術展レポ】遠距離現在Universal / Remote展ーわたしと「社会」の距離はコロナ禍でどう変わったか?

館内ポスター

2024上半期に見た展覧会の中ではこれが1番良かったです。
現代美術は解釈の自由度が高いからいろいろなことを考えられて好き。

「社会と人との距離感」というのが好みのテーマ。

コロナ禍初期には自分と「社会」との距離は遠くなり、自分と「世界」との距離が近くなったように感じた。

リモートワークが増えて家にいる時間が長くなり、毎日は妙にしんと静かになる。
この季節に夕方外を歩いてみると秋の虫が鳴いて日が短くなっていくのを感じて、生き物としての自分を意識するような気がした。

幻覚/トレヴァー・パグレン
幻覚/トレヴァー・パグレン

この絵は憂鬱なイメージを学習したAIが、さらに別のAIの識別訓練のために作成した絵である。つまり人間のために描かれた絵ではないらしい。
なんともいえない不気味さ。

AIはすごい速度で進化しているので、私は将来の芸能界では「美しい姿で写真や映像に映る」というだけの仕事はなくなり、接触イベントやライブイベントのように生身の姿で人に会うという仕事が残ると思う。

美しいだけではなくて「その人にぜひ会いたい、話したい」と思わせるキャラクター性が求められる。


心当たりのあるご親族へ/ティナ・エングホフ


この写真は福祉を考えさせられるもの。
デンマークは福祉が手厚いため、親族と没交渉で亡くなる人が多いという。
その時は、なんとこのように親族を探すために亡くなった時の部屋の写真を新聞に掲載されるらしい。
カーペットがはがれているのはこの部屋の住人が亡くなった場所だ。


床やベッドに染みがついて変色しているものや、他に何枚も展示されていたけど、あまりに重苦しい雰囲気でこれ以上撮れなかった。
自己責任論は好きじゃないけど、福祉国家にも色々な側面があるんですね……。

あなたが生まれてから/エヴァン・ロス

これはコンピュータのキャッシュに残った画像だけでできた部屋。
これが全て1度は見たことがある画像だなんて信じられない。でも私たちは毎日、意識していなくても色々な画像を見ている。……頭が疲れるはずだ。

画像は撮れなかったけど面白かったのが、全て防犯カメラの映像で作られた映画「とんぼの眼」(シュ・ビン)
男女二人が出てくるバラバラの映像をつなぎ合わせてアテレコして恋愛映画に仕上げてある。

これ成立しちゃうんだ……!! 
この映画が存在すること、それ自体が強烈な監視社会をあらわしている。

noteはマシだけど、他のSNSを見ているとものすごく疲れる。たくさん人がいて何かしら毎日揉めているので見ているだけで疲れてしまう。

私たちの脳は小さな村で一生を終えた時代から進化していないので、あまり多くの人と関わるようにできていないんだと思う。私は情報を処理しきれず常にキャパオーバーしている。

私と「社会」には自分のコンディションや色々な条件によって、その時々でいいかんじの距離感というものがある。

コロナ禍の時にSNSを全部ログアウトしてプライベートでは誰とも連絡を取らず、仕事以外の時間は本を読んだり散歩したりするようにしたら、寂しくなるかと思いきや妙に満ち足りた気持ちに包まれていた。

その頃たまたまメルカリで買い物をしたら「ありがとうございます♡♡」ときれいな字で書かれたプードル柄のメモが入っていた。

「私はこれくらいのつながりで充分なのかも……?」と何日もほんのり幸せだった。

でもそのうちに孤独に耐えられなくなってきた。
公園の池で見かけた鴨と目が合った気がして持っていたグミを投げたら無視されて落ち込んでしまい(今思うと喉に詰まらせたりしなくて良かった)その日に大学時代の友達に連絡を取ってみたりした。

あれ、何だったんだろう……?

近付いたり、遠ざかったりしながら、私と社会の関わりはつづく。
生きている限り、これからもつづいていく。











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