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牛乳・乳製品の健康効果と日本人の体質—がん予防との関係性


牛乳や乳製品に関しては、「健康に良い」「消化に悪い」など、さまざまな意見が存在します。しかし、最新の研究では牛乳・乳製品の摂取が大腸がんのリスクを低減する可能性があることが示されています。一方で、日本人の多くが乳糖不耐症を抱えており、乳製品をうまく消化できない人もいるのが現状です。今回は、牛乳・乳製品のがん予防効果と日本人の体質に関する最新の知見をまとめました。


牛乳・乳製品と大腸がん予防の科学的根拠

イギリス・オックスフォード大学などの研究グループが行った大規模な調査では、牛乳や乳製品の摂取が大腸がんの発症リスクを低減する可能性があることが明らかになりました。
この研究では、54万人以上の女性を約10年間追跡し、「メンデルランダム化解析」という手法を用いて分析を行っています。その結果、牛乳や乳製品を摂取している人は、大腸がんのリスクが低いという明確な傾向が示されました。

研究チームは、その理由として牛乳・乳製品に含まれるカルシウムが、大腸内で発がん物質と結合し、それを無毒化する可能性を指摘しています。これにより、がんの発生を抑制する働きが期待されています。

また、一方でアルコール摂取は大腸がんのリスクを高めることも判明しており、飲酒習慣を見直すことも重要なポイントとなります。

日本人に多い乳糖不耐症と牛乳の消化問題

牛乳・乳製品には健康効果がある一方で、「日本人の腸や胃には合わない」と言われることがあります。その理由の一つが「乳糖不耐症」です。

乳糖不耐症とは?

牛乳や乳製品には「乳糖(ラクトース)」という糖が含まれています。これを分解する酵素「ラクターゼ」が不足すると、乳糖を消化できずに大腸で発酵し、腹痛・下痢・膨満感などの症状が発生します。
日本人を含むアジア人は、成人になるとラクターゼの活性が低下しやすいことが知られており、特に欧米人と比べると乳糖不耐症の割合が高くなります。

乳糖不耐症でも牛乳・乳製品を摂取する方法

乳糖不耐症の人でも、以下の工夫をすることで乳製品を無理なく摂取できます。
1. 少量ずつ摂る
一度に大量の牛乳を飲むのではなく、少量ずつ摂取することで、体が慣れる可能性があります。

2. 乳糖が少ない製品を選ぶ
• ヨーグルト(乳酸菌によって乳糖が分解されているため、消化しやすい)
• チーズ(乳糖が少なく、発酵過程で分解されている)
• 乳糖分解処理がされた低乳糖・無乳糖牛乳

3. 乳糖分解酵素(ラクターゼ)のサプリメントを活用する
乳糖を消化するためのサプリメントを併用することで、乳糖不耐症の人でも牛乳を摂取しやすくなります。

牛乳はどのように作られるのか?—生産の現実

牛乳の健康効果が注目される一方で、その生産過程には課題もあります。牛乳を得るためには、牛が妊娠・出産をしないと乳を出さないため、一般的な畜産では以下のような方法が取られています。

1. 人工授精による妊娠・出産の繰り返し

  • 乳牛は約2歳で初めて出産し、その後毎年人工授精で妊娠を繰り返します

  • 出産後、約10ヶ月間搾乳され、その後再び妊娠のサイクルに入ります。

2. 高い生産性を維持するための管理

  • 過剰な搾乳により、乳牛は栄養不足や乳腺炎のリスクが高まります。

  • 通常の牛の寿命(約20年)に対し、乳牛は5〜6年で淘汰されるケースが多いです。

3. ホルモン剤の使用

  • 一部の国では**成長ホルモン(rBGH/rBST)**を投与し、乳量を増やすことがあります。

  • ただし、日本では成長ホルモンの使用は禁止されています。

このように、乳牛は通常の自然な生活とは異なる環境で飼育されているため、牛乳を選ぶ際には生産方法にも目を向けることが大切です。

乳製品の選び方—より自然なものを取り入れる

牛乳・乳製品を摂るかどうかは個人の選択ですが、より自然に近い製品を選ぶことで、健康への影響を考慮しながら消費することが可能です。

おすすめの乳製品の選び方

放牧牛のミルクを使用した製品を選ぶ(ストレスの少ない環境で育った牛のミルク)
低温殺菌の牛乳を選ぶ(栄養価が高く、自然に近い製法)
無添加の乳製品を選ぶ(人工的な成分が含まれていないもの)

これらを意識することで、牛乳の健康効果を活かしつつ、生産過程の問題にも配慮した選択ができます

牛乳・乳製品の品質にも注目を

ただし、すべての牛乳・乳製品が健康に良いとは限りません。スーパーで売られている大量生産の牛乳や乳製品には、加工過程で添加物が加えられたり、栄養価が変化しているものもあります。そのため、できるだけ自然に近い製品を選ぶことが重要です。

選ぶ際のポイントとして、以下の点に注目すると良いでしょう。
• 低温殺菌の牛乳を選ぶ(栄養が壊れにくい)
• 無添加の乳製品を選ぶ(人工的な添加物が少ないもの)
• 放牧牛のミルクを使用した製品を選ぶ(栄養価が高い傾向がある)

まとめ

牛乳・乳製品には、大腸がんのリスクを低減する可能性がある一方で、日本人には乳糖不耐症が多いことも考慮する必要があります。
また、乳牛の生産過程には負担が伴うため、できるだけ自然に近い製品を選ぶことが重要です。

健康のために何を選ぶかは個人の判断ですが、科学的なエビデンスを基にした情報を知り、自分に合った乳製品の摂取方法を考えることが大切です。



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