日記1/2 【指導と信従】読後に【R15+じゃダメですか?】を読む
幸福すら覚える日常で
大事件を知ったときの信条は今昔も変わらないのだろうか。
上の日記文章を書いたのは
昨日も紹介した、詩人であり医師のハンス・カロッサ(1878~1956)。
ドイツ連邦(バイエルン)生まれで25歳にして医師となった彼は多忙の傍ら執筆を行っていた。
1915年にWW1が勃発すると軍医として従軍志願、18年に負傷した。
「ルーマニア公記」はその時期の体験を日記風に認めた自伝である。
現代の我々が歴史を振り返ると
世界規模の戦争という悲惨な状況を意識してしまう。
例え世界大戦でなくとも、
ウクライナ侵攻やナゴルノ・カラバフの一報を
半日もせずに現代の我々は知ったし、
これから起きる被害を想起せずにはいられない。
だが、テレビもSNSない時代
開戦の火種の音をすぐに耳にした人は少なかった。
あるいは、日常に中に影が近づくことを知る由もなかった。
そんな光景が、昨日の午後の震災と重なってみえた。
と、本を読み終えた後
ニュースをみると気が滅入るので、愛読書であるコミックDaysをネットで開き、連載作品をパラパラとスワイプした。
「忍者と極道」「K2」は熱い少年漫画として人気だ。
「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」は最近期間限定で無料となったときにネットのトレンドに入っていた原作ブレイカー。
「雪と墨」は追放された気高くも初心なお嬢様と、悪ぶりながらも優しさゆえに罪を負った従者の恋愛劇。1話目にして好き合ってはハートフルな2人の日常が続くので、読んだ読者の心が癒やされていく。
「この世界は不完全すぎる」はアニメ化決定して嬉しい。なろう系が異世界のテンプレ(勇者と魔王、ギルドや魔法)を用いたライトな方向に向かっているとすれば、こちらは徹底した本格ファンタジーな世界観に拘った漫画。「灰と幻想のグリムガルド」と似て非なる、指輪物語のような世界で繰り広げられる冒険……でなく検証者の世界探究。
でも、今回改めて読み直したときに思い返したのは下の作品。
当作品は、R15+映画をネタにした青春コメディ。
毎話ちょっとR15な表現のある映画を紹介してくれるけれど、
読み直していてその1話目で取り上げられた映画が引っかかった。
(漫画と映画のネタバレになるので注意。読んでからでも遅くはない)
初回で取り扱われたのは映画「愛を読む人」(2008)。
原作はドイツ語圏の人気作家ベルンハルト・シュリンク、監督はスティーブン・ダルドリー。第81回アカデミー賞で5部門にノミネート。
ヒロインのケイト・ウィンスレットは主演女優賞を受賞した。
WW2後のドイツを舞台に、15歳の青年と秘密を抱えた女性との愛を描く。そこに終戦直後のナチスやアウシュビッツといった要素が絡んでいく。
ただの単純で王道な甘いラブロマンスではない。愛の苦悩、本という存在の罪深さが表現された(15歳以上の)老若男女なら胸をぐっと締め付けられる恋愛劇だ。
2022年4月、この漫画の1話目を読んでから暫く後、他の「愛を読むひと」のレビューを本で何回かみかけたことがある。
特にアカデミー賞に選ばれるだけあり、ある映画本ではその演出のテクニック分析がされていた。
が、その文章の中には、上記の漫画で男の子がポイントとしていた女優のヌード演出について触れられていなかった。
同じ映画の分析ながら、他人の視点だけで作品を理解した気になってはいけないと正座させられた瞬間だった。
と、今日は小説と詩、漫画と映画。
現実の苦しさに寄り添ってもらった一日となった。
作品に触れられないことによる嘆きが作中で呟かれる。
WW1の開戦前でも、WW2の終戦直後でも。
創作は人の心が退屈や不安に落ちていくのを、はちきれそうになるのをつなぎとめる。
そんな作品たちが時を超えて、私たちに時間を忘れさせてくれる。
だから私は、作品を追い続けることをやめられないのだ。