見出し画像

手料理のようにキッチンをつくる。

こんにちは。
毎日推し建築家の設計した住まいを紹介している、一級建築士のこじこじです。


2つのキッチンのつくり方

キッチンのつくり方には2種類あります。

多くの人が選ぶのは、すべてセットになったシステムキッチン
大手メーカー各社が考え抜いているだけあり、使う人が何も考えなくても使いやすいよう設計されています。好きなパーツを順番に選んでいく、セミオーダー形式です。

もうひとつは、オリジナルの図面を元に大工さんや家具屋さんがイチからつくる造作キッチン。住まい手の要望を元に作るので、寸法から素材から完全にオーダーメイドです。

どちらのキッチンにもメリット・デメリットがありますが、それは誰かが書いた記事がネット上探せばいくらでも出てくると思いますので、割愛。
私は、この2つのキッチンの違いを心で考えてみました。

キッチンなので食事に例えると、前者はスーパーの総菜コーナーで買ってきた食事、後者は食材を選んでイチからつくった手作りの食事という感じ・・・?

出来合いのものをチョイスするラクさをとるか、食材の状態を見極めたり調理法を考えたりする手間を惜しまず家計や家族の安心をとるか、という違いに似ているなと思います。
特に素材の選び方やモノの考え方によってコストが安くも高くもなる、という点でも、造作キッチンと手料理は似ています。
(私が大学生の時に食材から調味料からすべて選んで作った手料理はたいてい高くつきました・・・笑「あれ?これ買った方が安いんじゃね・・・?」ってやつです)

手づくり味噌の良さ


そもそもこのことを書こうと思い立ったのは、この記事を読んだからです。

長野で生まれ育った私は、中学時代のある日、母と同級生のI君の家に行った。I君ちの自家製味噌がとてもおいしいと評判だったので買いに行ったのだ。彼の家は見る限り味噌屋ではなく普通の農家だった。だが、自宅用に漬けた味噌の味が評判を呼び、望む人には実費で売るようになったらしい。私はその時初めて、味噌はスーパーの四角いプラスチック容器に入っているのが全てではないと知った。普通の家庭で手作りできるものなのだと。残念ながら味は覚えていないが、手作りという衝撃だけは覚えている。地方にはどこにも地元の人だけが知る保存食の達人という人がいるものだ。
 それから何年かして私は上京した。東京生活は故郷で過ごした歳月よりはるかに長くなった。

味噌を漬けてみよう。そう思い立ったのは今から10年ほど前のことだ。たまたま加入していた生協の注文用紙に『味噌セット』という商品が載っていた。
 大豆、塩、麹。……え、それだけ? すぐさまネットで味噌の作り方を調べた。大豆をゆでてつぶし、塩と麹と混ぜて味噌団子を作る。それを容器に入れ、塩で蓋をする。半年後には出来上がると書いてある。あの複雑な味がこんなシンプルな材料でできるなんてと驚いた。これならめんどくさがりの私にもできるかもしれない。ためらいなく注文用紙に丸をつけた。
(中略)生協からセットが届くと、すぐ作業に取り掛からねばならない。麹が発酵してしまうからだ。水に浸した豆を圧力鍋で煮て、すりつぶす。1年分を仕込むとなると、煮るだけでも圧力鍋を何回も使う。煮てはつぶしの繰り返し。家族が寝静まってから、深夜の台所でやり始めた。なんだかそのほうが集中できるからだ。すりつぶす。混ぜる。丸める。空気を抜くため味噌団子を叩きつけるように容器に投げ入れる。無心で楽しい。家中、大豆のほのかに甘い匂いがたちこめる。
(中略)私の手作りを家族が1年間食べる。混ざりもののない安心の材料で作った、世界でひとつの味噌を1年分確保できる喜びと達成感は、想像以上に大きい。この白い味噌玉が熟成して褐色になる頃はどんな味になっているだろう。

大平一枝さん「【週末エッセイ】昔ながらの保存食作りは、面倒で大変とは限らない。
北欧、暮らしの道具店さんHPよりhttps://hokuohkurashi.com/note/86666

味噌って手づくりできるんだ!という発見。
このセリフ、「キッチンって作れるんだ!」という造作キッチンの存在を初めて知った人の衝撃と似ています。
(ちなみにキッチンって水回りとコンロとレンジフード以外は実はただのハコなので、つくるのはそんなに難しくありません)

そして、つくる喜び、達成感を知る。
これはキッチンづくり、ひいては家づくりにも通ずるところがあると思います。

家づくりは家族が増えるタイミングで行われることが多いので、どうしても忙しかったり時間がなかったりでラクな方に行きがちです。

でも、もしあなたが「イチからつくる喜び」を味わったことがあるのなら、是非「造作キッチンって選択肢もありますか…?」と設計士さんに聞いてみてください。

私の推し建築家さんが手掛けた造作キッチン

そんなわけで、今日は私の推し建築家さんが手掛けた造作キッチンの作例を紹介したいと思います。

ここから先は

936字 / 7画像

スタンダードプラン

¥500 / 月
あと31人募集中
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?