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22漬物・1(基本を理解する事)

さて、今回記述からしばらくは、漬物製造に要する基礎を記述を続ける事にします。
漬物に対する熱意が籠り過ぎて、熱々でお節介な自己満足の記述内容になるかもしれませんが、そのような記述に付いては、ご容赦を頂き読み進めて欲しいと思う。
先ず、漬物製造を記述する前に、下記3項目に付いての基本思考を理解をして欲しい。でないと、漬物プロ製造者としての基本思考を記す内容が、理解できないと思うからだ。
その3項目は、《浸透圧》《発酵》《食味》の三つ。
先にこの頁では、基本思考を記述する事にする。ぜひ理解をして欲しく思う。そう、先に申し上げるが、漬物は漬けるモノではない。漬かるモノでもない。では?その作用は、野菜を【絞るモノで吸着させるモノ】とするのが適当で、漬物プロ製造者として認識の基礎である。

《浸透圧》
原料として白菜を調味浅漬に加工する場合を例として記述を始める事にします。当然、漬物を製造するには塩を使う(一部製品では砂糖の場合もある)が、なぜ塩なのか?を考えて欲しい。野菜の持つ組織水分を排出する為に塩を使用するのである。野菜に塩を振り強圧すると水分が排出されるのは周知であろうと思う。そこには、浸透圧作用が働いていて、細胞壁を浸透した組織水分を排出しているのである。決して、その組織構造を破壊する事無く、水分だけを排出しているのである。例として、一番最初の工程として、洗浄し漬けこみに適した形状に調整された白菜に、重量比で原材料重量に6%の塩を使用すると十分にその脱水効果を発揮する。しかし、それは白菜にのみ通用する比率である事を考慮して行う事が必要で、その白菜に収穫時期や産地、品種によっても塩の量は変化させる事が必要で、又、使用する塩の性質によっても変化をさせる必要が有る。この一番最初の工程(コロシ)は大切で、その行程期間は、原料白菜の上下を入れ替える作業(カエシ)を行っている。なぜなら、上部と下部とでは強圧度合いが違うので、顔料白菜の脱水状態を均一にする為に行う。記述したこの最初の工程(コロシ)が、後々の製品品質の食味良否を決める重要要因であるので、丁寧に慎重に行う必要がある。
次作業に移るには、原料野菜を必ず流水で洗浄と水切りを行う事が大切である。で、最初の6%から、使用する塩の量を極端に減らしていく。すると、その原料白菜の味は、塩味がまろやかに仕上がってくる。白菜が吸着してしまった塩味を塩分濃度が低い方へ排出していると考えるのが妥当であろう。

上記画像は、白菜漬の最初の工程(コロシ)で重石を乗せる前の状況である。
600ℓFRP製タンクで行う工程で、この嵩高が、3日後には半分以下になる。
より一層に強圧すれば、早く水分は排出される。が、原料白菜の厚みは薄くなり過ぎて
筋っぽくなってしまい、食味に悪影響を及ぼすので、適宜、重石の量の調整が必要である。

浸透圧作業を利用する工程の次は、本漬の工程である。ここで、味の創作と製品の特徴付けを行う。この時も塩を使用して浸透圧作用を利用する。この工程は、どうしても感覚的な作業を主とする記述になる。レシピでは表せない原料野菜の状態に合わせた臨機応変な作業が必要となる。しかし、その作業の目的は、脱水を期待するのではなく、創作したい食味の吸収を期待する作業を行う事。この工程に関しては、各々の漬物製品に付いては後述する。

《発酵》
発酵=私はあまり好きになれない言葉である。実際を知らない方々があまりのも重要な事のように扱いすぎるからだ。発酵のシステムを理解しようとするのなら、すさまじい吸収力を有する学力の所有と超遠大な範囲に及ぶ菌のサンプリングとその菌に対する研究が必要である。そして、私の知る範囲での話である事を前提にするが、農学部研究としての生命科学分野と医学部研究としての細菌科学分野として、研究内容が似てるようで似ていない両極が有るを知る事ができる。
一時期、ラフレ菌という文言が、しきりにその菌がインターフェロンを生成し抗がん作用を期待できると、医学的研究者から発表が有り漬物業界もその論文流行にあやかろうと、商標利用を始めた企業もあり、現在でも使用されているのではないであろうか。
先日、国に近いラジオ放送局発信の深夜ラジオ放送で、白菜漬物を何らかの研究家と称する者が発言を行っていた。漬物の製造と発酵に至る全てが理解できていない、ナンチャッテ評論な内容であったが、一般の視聴者にはどう届いたのであろうか?彼の言う発酵メカニズムは、全くの想像で実証をせずに実際を理解していない、嘘っぱち内容の放送であった。

乳酸発酵漬物の代表と言えると思うが、【すぐき漬】である。
私の先祖と親族は、長年この製造に現在も携わっている生産農家である。

発酵して、あの独特の香りと酸味を有するようになるのには、順序が有る。
【硝酸還元菌→乳酸球菌→乳酸棹菌】と存在する菌も多種にわたり、各々の性質はそれぞれに変化がある。最初から、乳酸発酵が始まるわけではない。
詳しく解説する事はここでは避ける。
私は、解明までに相当の時間労力を費やしたその分野を語るには、
対価を頂きたい。
一言申し添えると、漬物の乳酸発酵には空気に触れる事は良くない。
しかし、酵母発酵には、酸素が必要。
ぬか漬には、この両方を利用するので、ぬか漬床管理の難しいのは、ここを克服する技術を習得するか、避けて通るのが要。
安易に推測だけで菌発酵の作用を語る事は避けて欲しいものである。
その世界は沼である。沼にはまれば、まともに生還はできないし、
発酵食品を世界中を探し求めている、有名農学博士も居るようで有るが、
彼の書には、食味と食される地域評論に終始するので私は興味を引く内容ではなく面白くない。

何兆個というかそれよりも無限であり、数・量を表しようのない菌の中から、人類の幸福追求の為に、有益な菌の一つを見つけ出して、研究する世界に居る研究者達は、ある意味、底無し沼中に居ていると感じている。
その方々はそもそも世間の表舞台に現れない。
私も、その方々に遭遇し実際を教えていただけるまでに時間を要した。

発酵を語るというのは、生命科学分野の中でも、そういう特異な世界を理解し説明する事である。
安易に発酵の作用を推測だけで、その菌が素晴らしいと勝手に要因を決定して伝える事が恥ずかしい事を肝に銘じて欲しい。菌を食している事を認識する必要はない。必然、結果は、そうなってしまうのである。
加えて、近い所にヒトの消化酵素と結び付けば毒素を放出する菌の存在もあるからだ。

《食味》
美味しいものを求めるのはヒトの本能に近い所にあると思う。
だから、漬物も美味しくなくてはならない。しかし、漬物の提供される場所・場面に応じてそれぞれが適した漬物である事が大切だ。
昔、嵐山の高級料亭で京料理コースを食した事が有る。有名料理人と厳選食材を使用した美しい料理がどんどん出てきたが、私には、花と樹で飾られた貧相な料理の給食が仲居さんによって次々に提供されてくるだけで、なんか物足りなさを感じていたが、極めつけの事件が起こる。〆のご飯と香物。香物=市販のキューちゃん漬が出てきた。「これは無いやろ~~~!」と心の中で叫ぶまでに、同席した大阪卸売市場で働く友人が、女将を呼びつけて不満を述べてひと悶着。くそ高い料理の値打も、〆の最後の一品まで気を抜かないようにしないと、出来栄え最悪になるのも漬物である。
「二度と来るものかこんな客を馬鹿にした店!」なのである。

夏の夜中に、お中が減ればついつい。
赤紫蘇で調味と着色を期待しないで、自分用に自作した青シソを使用した無着色のしば漬。
お代わりを戒める心と容認する心の葛藤は、毎回である。

さて、本題の食味で有るが、味・噛みごたえ・見た目・鮮度が構成する要である。味は昆布を基本とした調味をすると簡易に製品を仕上げる事ができる。しかし、昆布は雑菌を多く持つので、取り扱いには注意を要する。その昆布調味液の製造方法に付いては【レシピまとめ】として、有償記事で後述します。

記述しようと思えば、色々浮かび過ぎて、ついつい本題から外れてしまう事をご容赦ください。

【基本を理解する事】と表題をしたが、実際の理解して欲しい事はこの3項目に尽きると言える。その項目についてはもっと詳しく説明を行う方が良いのかもしれないが、「私は邪魔くさい!」
それぞれ個人の知識学習程度の捉え方で良いので、漬物製造に関して知っていて損は無い知識として、保有していた方が良いという程度で十分である。

では、また次回。


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