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【千文字感想】ムーンフォール

「地球に月が落ちてきた!」
これまで幾多も地球をぶっ壊してきた、もはや“ディザスター・ムービー”とほとんど同義、破壊王ローランド・エメリッヒ。彼の最新作はこれまでにも増して荒唐無稽でバカっぽいぞ!

ある日、月の軌道が急に変わって引力で地球と衝突しちゃう!という思い切りの良い幕開けをして「月にいる謎の無機物生命体が軌道をずらしたんだ!」や「月は実は古代文明が作った巨大建造物なんだ!」なんて冷静に引いて見たら負けな展開の連続コンボが決まっていく。エメリッヒ映画なんだから、そういうもんだと割り切って優しい気持ちで見ていれば気にもならない。

エメリッヒの映画に求めているものと言えば、ド派手なディザスターシーンなのでそれさえ出来が良ければ満足です…と思っていたら、あれ? 今回はあんまり派手じゃないぞ…。『2012』などに比べると予算も少ないのか、ディザスターシーンが思いの外少なく、切れ味も鈍い。起こっている事態の規模はこれまででも最大級の危機だが「世界中でこんな大変なことが起こっています!」というシーンはほとんどない。強いて言えば切れ味の悪い洪水が街を襲うところくらいなもん。
後半で再接近した月の引力によって海水が巻き上げられたり、月の表面が肉眼視できるような距離で発射されるスペースシャトルといった絵面は確かにセンス・オブ・ワンダーがありはするんだが、やっぱり分量としては少ない。それ見るために話のグダグダさに目を瞑ってる部分あるんだからさー、勘弁してくれよ。

代わりにエメリッヒとしては、毎作 無理矢理でも捻じ込んでいた『2001年宇宙の旅』オマージュを正面から思い切りやれているので満足いったのではないでしょうか。もちろん、出来については期待しない方がいいと思いますが。

こんな感じで割り切ってだいぶ甘めにエメリッヒへ接してきたとは思いますが、一つ真面目に気になった部分もある。
作中で主人公の一人となるKCという陰謀論者の扱い。彼の唱える陰謀論が全て正しかっただけに止まらず、英雄として扱っちゃうのはどうなんだろう。『ゴジラvs. コング』でも気になったけど、昨今のご時世を考えると、そういう陰謀論者の溜飲を下げる作りってのは危ういバランスな気はする。

最後に、
エメリッヒの映画が映画館で見れないなんてのは言語道断です。
無茶苦茶なスケールデカい映像だけが取り柄なんだから、家のテレビで見てどうすんだよ!

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