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【一千文字評】バズ・ライトイヤー - どっちつかずな誰得?スピンオフ

別に面白くはあるんだが、当たり障りがない
ピクサーにいつも感じる挑戦的な姿勢が希薄で、志の高さは感じられない
それってピクサー最新作としては致命的な気がする。

言わずもがな『トイ・ストーリー』の人気キャラ、バズ・ライトイヤーの単独主演作。位置付けとしては「オモチャたちの持ち主アンディが見た映画」という事で、この映画を見てアンディはバズのオモチャを買って貰ったことになる。

この「面白いんだけど、なんだかなー…」という感触は、率直に誰に向けて作っているのかわからない部分から生じているように思う。
言い換えれば「誰得?」感だ。

おそらく最大のターゲットであるトイ・ストーリーのファンたちからすれば「好きなのはオモチャのバズであって、スペースレンジャーとして悩み苦しむ実際のバズではない」と思うはずだ。ややリアル化された見た目や頭身、加えて声も違うので、皆んながよく知るオモチャのバズと、この映画のリアルなバズをどの程度の距離感で結びつければいいか困惑を生むことだろう。

しかし「アンディの見た映画」という位置付けにしたことで、トイ・ストーリー世界の余白を埋めるスピンオフとしての価値はきっとあったはずだ。
だが、そういう視点で見ても困惑を生じさせる要素が多い。

アンディが子供の頃に見た映画とのことなので、おそらく1995年頃に制作された作品なのだろう。またシリーズを通して描かれてきた情報を基に考えれば『バズ・ライトイヤー』という作品は子供向けスペース・オペラSFであると予測されていた
しかし蓋を開けてみれば、どちらかといえば『インターステラー』のようなハードSF路線。スペースオペラではない上、この手のSF映画のトレンドは2010年頃からのもので、アンディが子供の頃に見たという設定とも齟齬がある。現代っぽいSF作品として見れば面白くはあるのだが、そうであればあるほどスピンオフとしての困惑が生じるのだ

前作『トイ・ストーリー4』への激烈な拒否反応に対し早急なブランド・イメージの回復を狙ったのか、ピクサーらしからぬ周到さに欠ける作品になってしまったように思う。
脚本面で「過去の過ちを完全に精算したところで、事は解決するのか」というシビアなテーマ設定にピクサーらしさの片鱗を感じはしたが、それも大して深掘りされもしない。

ピクサーとしても、トイ・ストーリーとしてもどっちつかずな1本になってしまったのは残念だ。

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