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一千文字映画評

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2022年12月の記事一覧

【一千文字感想】『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』 造形にもお話にも、デルトロの美学がほとばしっている

*ちょっとネタバレあり 異界のクリーチャー、巨大ロボット、美しき半魚人… デル・トロの作品はどれも独自の美学に貫かれた拘りの造形物たちが登場する。前作『ナイトメア・アリー』では幻想は控えめに、堅実な演出な腕を見せつけたが、その反動は次なるこの『ピノッキオ』で爆発する なんせストップモーション・アニメだ!キャラクターも背景も、画面に映るその全てにデルトロの美学がほとばしっている 木彫りの質感をあえて残した人形たちが自由自在、表情豊かに画面を動き回る。そもそも『ピノキオ』は

【一千文字感想】『THE FIRST SLAM DUNK』漫画であることを忘れた真の“映像化”!

見始めてすぐに感動した。 そして、この感動はスラダンのストーリーより先にやってきた感動だった。 あの漫画の中にいた人たちが、まるでそこに生きているかのように躍動している。漫画のアニメ化では大なり小なりそんな感動はあるものだが、この作品のそれは比べ物にならない。 まさに「Anima =魂を吹き込む」そんな作品だった。 原作者 井上雄彦自身が監督・脚本を務めた満を辞しての劇場版。筆者はスラムダンク世代というわけではないので、一応原作を読み通している程度だ。それでも湘北高校の面

【一千文字感想】『ドント・ウォーリー・ダーリン』オリヴィア・ワイルドには期待するが、J. ピールを意識しすぎ

ここ数年で最もチャーミングな青春映画だった『ブックスマート』で監督としての手腕も証明したオリヴィア・ワイルド。 そんな彼女が次に手がけたのは理想化された郊外で暮らす“奥さん”たちを描いた『ステップ・フォードの妻たち』のような、『マルホランド・ドライブ』のような作品だ。 砂漠の真ん中にある、まるでリゾート地のような新興住宅街。1950年代風なオールディーズな街並みの中で、家事をこなし、料理を作り、夫の帰りを待つ“献身的な妻たち”が暮らしている。 過剰に保守的、亭主関白に疑問を

【一千文字感想】『ブラックアダム』流石セラ監督。アダムよりJSAを見にいくべし

あのロック様がアメコミヒーローにも堂々殴り込み。古代から封印された超人で街は破壊する、敵は確実に殺していくダークヒーロー“ブラックアダム”を演じる。 実は全然期待してない作品だった。 ロック様が暴れん坊のヒーロー役って通常運行だし、なによりコスチューム着た姿がロック様が黒いタイツ着ただけにしか見えなかったから。 「でも、一応見とくか」と見に行ってみると、これが意外にも面白い。思っていたよりしっかりとしている。そしてエンドロールで監督がJ. コレット=セラだとやっと知る。そ

【一千文字感想】『セールスマン』(1969) 訪問販売は絶滅したが、聖書は不滅である

セールスマンたちは家を訪問しては“聖書”を売りつける。 “ダイレクト・シネマ”と呼ばれるドキュメンタリー映画群の旗手であるメイズルス兄弟。その代表作が半世紀以上経って日本初公開となった。 “ダイレクト・シネマ”とは、文字通り“素材そのまま”を徹底した映画の作り方だ。ナレーションやインタビューなどの演出的要素を可能な限り取り除き、ただ被写体に密着してカメラを回し続ける。この演出を極限まで廃す作り方は状況説明などの逃げ場が一切ないわけで、作り手としては相当ストイック。1本の作