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昔の部屋とずっと好きな味
朝、窓から青白い光が差して、車の音や人が生活している気配がする。風みたいに車が行き交う音が響く。
久しぶりに妹の家に泊まり、こんなのだったなとしみじみ辺りを見渡す。
この部屋に妹と住んでいた。2年くらいわたしがひとり暮らしをして、妹があとからやってきて、わたしが夫と暮らし始めてからも妹はそのまま住んでいる。
近くの大きな神社お参りをして、妹の家の向きにある小さな祠にも必ずお参りをする。
くちばしが黄色い小鳥が草をつついていて、通勤の自転車がたくさん通り過ぎる。
散歩から帰ると、支度の済んだ妹がパンを焼いていた。
昨日の日帰り旅行で買ったパンとチーズに母からもらったいちごを食べる。
黄金色のざらざらしたとうもろこしパンに、とろりとしたチーズといちごをのせて食べた。
「あと10分」と妹が急ぎながら、おいしいねと言い合う。
妹が出かけて、食器を洗い旅行あとの散らかった部屋を少し片付けた。
ひとりで部屋にいると、懐かしさときつかった頃が合わさり心がきゅっとなる。
無理をたくさんしたり、仕事で気を使いすぎて体を大きく壊したりしていた。ひとり暮らしも妹との暮らしも良かったな、がむしゃらだったな。
玄関のドアの内側や、霞んで見える昔のガラスの窓にはわたしの個展のフライヤーがたくさんマスキングテープで貼られていた。
トレーシングペーパーで擦られたフライヤーは、陽にあたりインクは青色に抜けてぺらりとしている。わたしの名刺まではっていてふふふとなる。
無理をしないで、栄養をとって、よく眠りがんばろうと思った。
昼ごはんは旅先のベーグルと、母のお土産のおまんじゅう。妹はパンを魚焼きグリルで焼いていたので真似をしてこんがり焼いた。もっちりぱりっとした中にクランベリーとクリームチーズが入っていた。
おまんじゅうは蒸籠があったので蒸してほかほかさせて食べた。芋餡の黄色いまんじゅうは地元の食べ慣れた大好きな味がした。
夕方に街で働く夫が迎えにきた。
紙屋さんでいろいろな素材の白い紙を買う。
和紙や、薄いぺらぺらしたのや、小さかったり大きなロール紙をたくさん買った。ひらひらした柔らかい紙は100枚も買った。
店員さんに「何か作るんですか?」と聞かれ、「大きな場所で、絵を描いたりつなげたりして飾ります」とうまく言えなかったけど、少し話してお互いにっこりしてお礼を言い合った。
街の人と車の多さにおののきながら、夜ごはんのハンバーガーを食べに行く。
ハンバーガーにパインをトッピング。
夫はBLTにパインをトッピングして、ふたりともマンゴーアイスティのポテトセットにした。
わたしたちは、焼いたパイナップルが大好きで、びっくりドンキーへ行くと必ずパイナップルがのったハンバーグを即決する。パイナップルを食べに行っているのかもしれない。肉肉しい肉に、パイナップルの甘さが合わさり、ジューシーに広がるのがとってもおいしい。
家に着くと、外は真っ暗で静けさのなかふくろうの鳴き声が響いていた。早めにお風呂につかる。
ヒヤシンスの花がふんわりと膨らんできていて、水仙に似てるけど、より低い深い香りがした。