甘い顔を見せると

 対人関係で求められる対応の選択を誤ると後が大変、そのためには…という話。

 小学生のとき鼻炎がひどく鼻水がずっと出ていた。鼻をかむのにポケットティッシュでは追い付かずボックスティッシュを学校に持っていき机の中に置いていた。周りの女子がやたら優しくて大変ね大丈夫なんて言ってくれた。

あいつボックスティッシュで鼻かんでるなというのが知れわたったある日、I君がこちらに来て言う。「ティッシュちょうだい」見ると手がびしよびしょ。私は経験をもとに瞬時に判断しI君はトイレに行って手を洗いハンカチがないからあいつのティッシュで拭こうという流れを理解した。こう返した「このティッシュは俺が鼻をかむために持ってきたものだ。お前が手を拭くためのものではない。だいたいお前んちPCエンジンあるのにハンカチ1枚買えないのか?」ってね。それからI君は2度とティッシュくれよとは言ってこなかった。当然だ。

 さて、これが断るのを躊躇して1枚くらいあげてもいいやとしてしまうと1回では終わらない。I君がトイレに行く度にティッシュを1枚あげることになり、鼻炎が治まってもティッシュをあげ続けることになる。あげるの嫌なら途中でも嫌だって言えばいいでしょ?確かにそうだがI君からすると「何で今までくれてたのに今日から嫌っていうの?ケチ!」との感情になる。何枚もあげたうえでのこの仕打ちは小学生にはきつい。やはり大事なのは最初のポイントで状況を判断して明確に理由を示して断ることだ。

 最初のティッシュくれよで断るのもケチと思われるんじゃないかと考えがちだが、そもそもハンカチを買わずに鼻炎で苦しんでいる友だちからティッシュをタダでもらおうなんていうのがケチ以前に人として間違ってる。

 この判断、言うは容易いが実行するのは難しい。まずなぜティッシュが欲しいと言われているかを理解する必要がある。I君が鼻や膝から出血していたらティッシュを差し出した方がいい状況。お菓子を持っていて分けてくれそうだったら喜んで机に敷けばいい。ただし今回は手を洗うという日常のルーティンに私のティッシュ1枚ゲットを取り入れるおそれがあったので出すべきではないとの判断が正解。

 I君友だちなんだよね?断ってその後の関係に影響しない?とかまだ言うあなた。私はこの日の放課後にI君の家に行って普通にPCエンジンやらしてもらってる。R-TYPEは難しかったな。おいしいロールケーキなんて出してもらって。I君ち結構裕福。

 このときの経験をベースに大人になっている。判断を誤ってI君の時のように出来ればよかったのになんてのもある。お金貸してくれって言われたりとかね。安易に甘い顔をすると自分のためにも相手のためにもならないよという話でした。

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