国立附属中のメリットデメリット

 筆者は首都圏のとある国立附属中に通っていた。小学校からの持ち上がりである。成績上位層は中学受験で外部に抜けることも多いが、筆者は最初から高校受験狙いだったので、そのまま中学校に進学した。

    今回は世間ではマイナーな国立附属中について語ってみたいと思う。

 国立附属中の立ち位置は地域によって異なる。地方の場合は地元のトップ公立進学校への登竜門として位置づけられることも多い。一方、大都市の場合は中高一貫校が君臨していることもあって、国立附属中の立ち位置は非常に地味である。附属小の成績上位層は中学受験で御三家等に進学することが多いが、中学校に内部進学して高校受験で上位校に進む者もいる。

 国立附属中の多くは中学受験的な尺度では有名中高一貫校には到底及ばないだろう。ただ、偏差値以外の良いところもあるし、母校愛も一応ある。今回は国立附属中のメリットデメリットについて考えてみたいと思う。

メリット

ヤンキーがいない

 家庭の価値観や本人の性格にもよるだろうし、多様な経験を積んだ方が良いという考え方もある。ただ、海外留学やスポーツと違い、ヤンキーと関わったことが社会人として有益な経験になるとはあまり思えない。筆者が以前住んでいた地域の公立中は半グレの巣窟になっていて、近所の公園で放火などを行っていた。このような状態の場合は公立中に通うデメリットは大きいだろう。

 この点、国立附属中は家庭環境はそれなりにまともな者が多い。基本的には大学進学を前提とする者ばかりである。学校のリソースが不良対策に割かれるといったこともない。問題を起こす人間は退学にすることもできる。

 ただ注意すべきはヤンキーが存在しない=トラブルが存在しないというわけではないことである。幸い筆者のクラスにはなかったが、均質性の高い環境のほうがいじめは起きやすいかもしれない。

教師の質が高い 

 国立附属中の授業のレベルら特に高いわけではないし、塾通いは必須である。それでも国立大学附属学校は学校の先生の間でのステータスは高く、教師の質は高いと思う。公立中の場合は民度の問題でどうしても上から目線の態度になってしまう教師も多いが、国立附属にはあまり見たことがない。暴力指導は聞いたことがない。

学費が安い

 これまたかなりのメリットである。環境を求めて私立中高一貫校に行ったとしても、学費が高額なことが多い。この点国立附属中は公立ほどではないが学費は安いことが多く、大変な経済的メリットがある。民度が高くて学費が安いというのは結構な強みなのではないかと思う。筆者は学費が安い分、塾にたくさん通うことができた。

部活が緩い

 人によって感じ方が大きく異なると思う。部活はやらないよりやったほうが良いだろう。しかし、公立中の部活はヤンキーの非行防止という要素があり、やたらとハードである。だからといって競技としてのレベルが高いというわけでもない。運動が好きでない者や、勉強を頑張りたいタイプにとって公立中の部活はちょっとハード過ぎるのではないか。

 この点、国立付属はそこまで部活文化が強くないし、ほどよく緩いと思う。先輩後輩もサークル感覚である。理不尽なスパルタ指導もない。参加しなくても文句は言われない。

レベルが高すぎない

 中学受験の名門校の場合、激しい受験戦争がトラウマになる者もいるし、入ってから周りが頭が良すぎて自信を喪失してしまう者もいる。国立附属中は学校にもよるが、そこまでレベルが高くない。小学校からは内部進学できるし、中学から入ってくる場合も御三家のような特殊な訓練は必要ない。

 この点、国立附属中はちょうどよい頃合いだと思う。進学先のボリュームゾーンもMARCHであるため、エリサラ家庭の平均という感じである。帰国子女で本格的な中学受験をするには時間がないが、公立中には行きたくないというパターンの者が中学校から入ってきたりもした。ある程度の素養があれば「とりあえず」でも入れてしまうのが国立附属中の良いところかもしれない。

 中学受験の滑り止め校の中には中学受験で失敗して歪んでしまった者が多い学校があるという話も聞くが、筆者の周囲にはあまりそういったタイプは見なかった。学校としても世間一般でいう滑り止め校というイメージは無さそうである。

「普通」の環境である

 御三家のような名門校は別学かつ超高偏差値集団であり、そこに存在する人間関係は独特である。発達障害傾向の人間の場合はこうした環境のほうが生きやすいと思うが、一方でかなり偏った環境であることも間違いない。校風が合わないと地獄だし、適応しすぎても別の問題があると思う。生徒とその親は競争社会の勝者として強烈なプライドを持っていることが多い。

 この点、国立附属中は「普通」の環境であり、一般社会の間合いに近いと思う(ヤンキーがいないという点も含めて)。共学で、男女の仲も良かった。カップルも中3になると結構出現していた。今から思うと良い思い出である。

母校愛がある

 有名中高一貫校のような偏差値の高さはないが、一応は名門校のくくりではあるため、同窓生の繋がりはそれなりにある印象だ。筆者も学生時代に中学校の先輩に良くしてもらったことがある。同級生を見た感想ではあるが、なんだかんだ附属(小)中への帰属意識が強いという者も多い気がする。

 マイルドヤンキーではない公立中の出身者で、社会人になってからもつながりがあるとか、愛校心が強いという者はそこまで聞かない。むしろ抜け出したという意識が強いのではないか。やはり公立出身者の原点は高校である。

余計な劣等感を抱かない

 公立中学校出身の高学歴の中には、中高一貫校出身の同級生に対して環境面で劣等感を抱くものがいるらしい。国立附属中の出身だとあまりそうした劣等感は抱かないかもしれない。

 筆者も超進学校の中学受験組に関して才能面で打ちのめされたことは多いが、環境面での格差を感じることはなかった。

なんだかんだ強い

 高校受験組は中学受験組に地力で劣るとか、素養面でハンデと言われがちである。ただ、少なくとも国立附属中の出身者に関してはあまり当てはまらず、周囲の国立附属中出身者は中学受験組に特に劣るということはなかった。超進学校に進んだ同級生はだいたい東大に合格していたし、公立高校に進んだものも予後が良かった。

デメリット

中高一貫ではない

 おそらく最大のデメリットである。国立附属中は学校にもよるが高校受験が必要なことが多い。最近の風潮は中高一貫至上主義であり、中高が分断される国立附属中の評価はあまり芳しくないだろう。どうしても先取り学習に制約がかかってしまう。高校受験で上位校に進みたい場合は良いが、そうでない場合はデメリットとなる。
 
 また、私立進学校や大学付属に進んだ場合は外部生になってしまうという点もある。

内申点がつきにくい

 これも大きなデメリットだ。高校受験で鬼門となるのが内申点である。公立中学校に比べると周囲のレベルが高いので、内申点は辛口になってしまう。絶対評価という時もあるが、何かと学校によっても左右される印象だ。ただ公立中ほど理不尽な内申点が付くことはないし、決して明示されないものの、お手盛りしてくれることもある。そういった点では致命的なデメリットにはならない。

レベルが高くはない

 国立附属中はそこそこのレベルではあるものの、中学受験の名門校と比べるとレベルは格段に低い。東大に行くものは上位数人である。早慶やMARCHに進む層はかなり分厚いのだが、最上位層となるとちょっと寂しい。中学生から国際大会に出場する者がいる超進学校とは大きな格差がある。有名中高一貫校のようなエリート集団とはなかなか言い難いかもしれない。学力的には中学受験が盛んな公立小の上半分を集めたくらいである。

フリーダムではない

「普通」の環境なので、スクールカーストは普通にあった。別学進学校のようなはっちゃけたノリはなく、一般社会としての同調圧力はそれなりに強かったと思う。

 校則もそれなりに厳しく、超進学校のように学校でゲームをでるような環境ではなかった。

まとめ

 今回は国立附属中のメリットデメリットについて考えてみた。首都圏においては(筑駒を除けば)国立附属中は地味な存在であり、特に名門校とはみなされていない。学歴厨からの受けは良くないかもしれない。東大進学者はそこまで多くなく、早慶辺りが花形といったレベルである。平均でMARCHくらいであり、サピックスの平均と同じくらいだろう。一般企業の間合いにも似ている。

 中学校は筆者にとっては良くも悪くも原体験になっているところがあり、それなりの良さはあったと思う。中学受験とヤンキーの両方を回避できたのは重要なメリットだった。しばしば私立中派と公立中派が論争しているが、どちらも一長一短だと思う。いじめやトラブルは私立中にも多いし、最近は中学受験でストレスを溜めた子供が非行に走るともいう。校風が合わなかったら地獄である。

 大学時代には劣るものの、中学生の時はそれなりに楽しい時期だったと思う。勉強が得意なことに気づき、自分にも長所があると自信を付けることができた。スクールカースト的な息苦しさはあったけど、青春らしきこともした。友達と何時間もカラオケでアニソンを歌ったこともあった。彼女はできなかったけど。。。

 子供時代を思い返して妙に幸福感が蘇ってくる辺り、筆者も老境に差し掛かっているのかもしれない。いずれ当時の同級生にも会いたいところだ。これが一般に言う「地元の友だち」の感覚なのだろう。

 

 

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