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輝いていた中学一年生女子

とある中学校の三学期のことです。

中学一年生女子の一人が、
登校途中に突然全身けいれんのような症状が出てしまい、
スーパーの駐車場で動けなくなりました。

学校はすぐに救急車を要請して病院に運ばれましたが、
何ら異常は見つかりませんでした。

その後も様々な精密検査をしましたが、
身体的な異常はまったく見つからなかったため、
ストレスなどの精神的なものでしょう、ということになりました。

この女子生徒は、この日以降いっさい学校に行けなくなり、完全な不登校になりました。この女子生徒は、小学校のときからモデルや子役等で活躍していました。

性格も明るく活発で、勉強で運動もとても良くできたため、クラス内ではとても目立っていました。中学校に入ってからも、そんな状態が続いていました。

そんな子が、突然不登校になったのです。


ただ中学生になってから、
テストの学年順位は下がり続けていました。

中一の始めは300人中60位くらいだったのですが、
一学期末テスト、二学期中間テスト、二学期末テストで毎回順位が下がり続け、三学期はじめの学力テストでは130位くらいになりました。

この順位だと、真ん中よりは上なので客観的には勉強はまずまずともいえるのですが、勉強がとても良くできて・・・という自己評価にはならないでしょう。

そもそもスタート時の60位でも、
とても良くできてと自己評価するには難しい順位です。

本人に勉強をサボっていたという自覚はなく、
一生懸命に努力しているのに成績の下降が止まらないという状態でした。

この女子生徒のカウンセリングはとても困難でしたが、
時間をかけて少しずつ関係性を築いていきました。

するとやはり、
努力しているのに成績が下がり続けていることへの不安感を語ってくれました。

そして、彼女はこんなことを語るようになりました・・・。

「あんなふうになったらどうしよう」

「頭が悪いああいう子たちと同じに思われるなんて、絶対嫌だ」



・・・。

あんなふう、
頭が悪いああいう子たちとは、
いったいどんな状態のことでしょうか・・・。

この女子生徒が、
成績下位グループの生徒たちのことをどんな思いで見ていたのか、
よくわかる発言です。

この女子生徒は、成績が低い他の子たちに対して、
見下した感情を向けながら見ていました。

小学校までは、それでよかったのです。

しかし中学生になって、
成績が順位というもので客観的に把握できるようになりました。

そして、これまでの自己評価が勘違いであったことに気がつきます。

そこからさらに、順位が下がり続けました。

「下位グループへ転落するかも・・・」


という恐怖心に耐えられなくなったのです。

今までは、何でもできる自分という姿で主役をはっていました。

しかし実際は、それほど大した主役ではないどころか、
脇役だったことに気がついてしまったということです・・・。

このような事例に類似したものは、現場でとても多く遭遇します。

この事例では小学校時代に輝いていましたが、
小学校時代に特別な輝きがなかったとしても、よく見られる事例です。

このような不登校は、本人が理由を語らないことがとても多いので、
原因不明の「無気力・不安」に分類されています。

不登校の原因を何でもストレスで片付けてしまう今の風潮には、
違和感を覚えます・・・。

※プライバシー保護の観点から、事例をアレンジしました。

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