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#おむすびの本棚 『猫を抱いて象と泳ぐ』

おむすびの本棚では私が読んだ本を紹介します。
お気に入りの本とあなたがむすばれますように。


ど〜も、おむすびです。



『猫を抱いて象と泳ぐ』 (小川洋子)

を紹介します。

2009年に単行本として発売された小説です。


あらすじ

友達もいない、寡黙な7歳の少年が主人公。
ある日、彼は使われなくなった回送バスに住んでいる大男、マスターと出会います。
そこで教わったのが“チェス”。
放課後や休日に回送バスを訪れるたびにどんどんとチェスに引き込まれていき、11歳まで成長します。
マスターとの別れを経て、彼はからくり人形を操ってチェスを指す“リトル・アリョーヒン”になりました。
“アレクサンドル・アリョーヒン”は“盤上の詩人”という称号を与えられた、伝記上のチェスプレイヤーで最も憧れていた人物です。
リトル・アリョーヒンも“盤下の詩人”と呼ばれ、それに相応しい棋譜を生み出す棋士となります。


感想

冒頭のエピソードから物語にグッと引き込まれました。

デパートの開業記念として招かれた象のインディラ。
子象のうちに返す予定が、大きくなりすぎたために一生を屋上で終えた象。
彼女を屋上という場所で宙吊りにしていた足輪を見つめる少年ーー。

小川洋子さんの作品は本当に美しいと感じます。
それも、ただ形が整っているとか色彩が鮮やかとかいうものではなくて。
輝かしい部分も醜い部分も全てを包み込んでくれるような世界
穏やかで、威厳があり、どこまでも静か。
物語にも何度か出てくる表現ですが、深い深い海のように壮大で神秘的な作品です。
ずーっとこの浮遊感に浸っていたくなります。

言葉でこの魅力を表現するのは難しいですね(汗)。
文章を書いていると、作家さんたちのスゴさが身に染みてわかります......。
ぜひ読んで、他にはない優しさを味わってもらいたいです。


むすびのひと言

「・・・最強の手が最善とは限らない。
チェス盤の上では、強いものより、善なるものの方が価値が高い。・・・」

マスターの教えの一つ。
どんなに弱い相手であろうと必要以上に傷つけず、互いに響き合うような歌を棋譜に残す“リトル・アリョーヒン
“強い=善い”、“安全=善い”、“美しい=善い”とは言い切れないという考え方はチェス以外にも当てはまるんじゃないかなと思いました。
困難にぶつかったとき。次のステージに一歩踏み出すとき。
それがどんな形であろうとも“最善”の選択を考える努力をしようと思います。


ここまで読んでくれてありがとう!

では。