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行政職員こそ普通の服装(ビジネススタイル)が大事【行政とまちづくり】

私が、いち公務員として地方行政で働くなかで、ひとつ服装について心がけていることがあります。

それは、常に一般的なビジネススタイルにすること
つまり、長袖の襟付きシャツにスラックスです。

別に、特段スタイルがいいわけでもお洒落なわけでもなく、特に拘りはないのですが、どの部署でどんな業務の担当になったとしても、基本的にはそうしています。
技師なので作業着も貸与されていますが、着替えるのは工事現場に行く日のみ。
夏でも冬でも長袖シャツにスラックス。暑かったら袖まくりするし、寒かったらカーディガンを羽織る。
(持病の関係で寒さに弱いので、体調の良くない日はその上にウインドブレーカーやダウンを着ます)

それはなぜかという、行政職員全体に通じるお話です。

※今時点の意見なので、今後社会常識が変化したらゆるっと変わる可能性もあります
※また、違う考え・行動の方を否定するものでもありません


1 理由①「市民からの信頼・安心感」

一つ目の理由は、我々は市民サービスのプロだからです。

役所に来る市民の方々は、当たり前ですが、私個人に相談来ているわけではなく、一つの行政組織に尋ねてきており、私はその一部の役割を担っているに過ぎません。
当然、私より年上の方々もたくさん来られます。
また役所なので、家族のこととか、お金のこととか、すごくデリケートな悩みを持ち、困りきってくる人が大変多いです。

そんな方が、家族にも親戚にも会社にも頼れず、藁にも縋る想いで役所の窓口に行ったときに、例えば年下の若造がTシャツ1枚で出てきたらどう思うでしょうか。
不安になりませんか。

行政窓口に来る市民というのは、往々にして、役所や手続きに不慣れだったり不安だったりします。
それでも、窓口の向こうの職員が、しっかりビジネスとして、毅然と対応することで、安心して大切な個人情報やデリケートな事情などを喋ってくれるんだと思います。
なので私は、どういう格好が好きかとかではなく、日々相対する市民の方々に安心して頂くために、ごくごく普通のビジネススタイルでいるよう心がけています。

出典:ネコの目

2 理由②「民間事業者への礼儀」

二つ目の理由は、民間事業者への礼儀です。

例えば、行政によくある規制部局は、元も子もないことを言えば、「民間企業が、民間企業の金で、民間企業のビジネスとして行う行動に、法令に基づいて、ノーを言ったり、ああしろこうしろと指示したりする」役割です。
法令上の責務とはいえ、相手にしてみれば、大して事業も技術も知らない役所の若造にどうこう言われるのは、気分が良くはないですよね。
ただ、相手もプロなので、こちらの立場・役割に敬意を払って、お互いの役割を演じているに過ぎません(大人の対応)。

であれば、こちらも役割に沿った、つまり民間企業と同じ、現代社会で一般的とされるビジネススタイルで対応するのが、極々真っ当な礼儀だと思っています。
そうでなければ、「所詮、役所の人間は世間を知らないぬるま湯だから、基本的なビジネスの礼儀も知らない・・・」と思われても、仕方がないかもしれません。

出典:いらすとや

3 理由③「技師である前に行政職員」

3つ目の理由。これは、特に作業着をあまり着ない理由ですね。
それは、技師だろうと専門職だろうと、基本的には全員が事務職と同じ「行政職員」だからです。

行政職員の基本は、契約・会計・庶務・経理・議会などの「基礎事務」と、電話・窓口・現場などの「市民対応」です。これは採用枠に限りません。
事務職も専門職もベース(メインウエポン)は同じで、それにそれぞれの特性に応じた専門性(サブウエポン)が乗っかっているだけです。専門職はサブウエポンが最初から決まっており、事務所は後から決まる(税・福祉・企画・広報など)、それだけの違いです。

なので、例えば、「自分は技師なので、図面や工事現場は得意だけど、廊下で困っているおじいちゃんの対応は管轄外だわー」、なんてのは通じません。

そのため、私は普段から、「自分は技師なので・・・」と言い訳がきくような恰好はしません。一般的な事務職の方々と同じ、きちんとしたごくごく普通のビジネススタイルで、ごくごく普通に窓口や出先で市民や民間企業の方々と話すようにしています。
なんなら事務職の方より、窓口対応も庶務も会計もできればいいと思っています。(実際、他部署の人に事務職と間違えられたこともしばしば)

出典:資格の学校TAC
※筆者も受験のときお世話になりました

4 結論:個性を出すなら中身や人柄で

ということで、私は以前からずっと、ごくごく普通のオフィススタイルにしているわけです。
Tシャツジャケットスタイルとか、タートルネックスタイルとか、格好いいけど、一度もしようと思ったことはありません。

そもそも、3年異動が基本の行政にとって、職員の表面的なビジュアル個性アピールなんて要りません。そういうのは個人名で仕事する立場(市長・議員など)や広報的な部署の役割。
そんなことより、地味な仕事だろうが派手な政策・イベントだろうが、一人一人の職員がその時々の役割をきちんと演じて全うすることが大事です。
恰好で個性を出そうとする人ほど、属人的な自分のやりたい・得意な仕事だけやりがちなんじゃないかなーと、危惧しています。(もちろん、一般的なビジネススタイルでなおかつお洒落で気の利いたまじで格好いい先輩方もいます)

個性を出すなら、仕事の中身や人柄で出せばいい
そこに自信がない人ほど、一見わかりやすいビジュアルで周りとの差異化を図り、個性を出そうとしているのではないか、と感じることがあります。高校生のヤンキーがクラスで一人だけ茶髪にしてイキるのと同じ。
たまに、俺たちは他の部署のやつらとは違うんだ!クリエイティブな仕事しているからこの格好が許されてるんだ!みたいな集団を見かけますが、それはどうなのかなと。
本当にクリエイティブな仕事してたら、服装なんて関係なく、相手にもまちにも響きますよね。

※例外として、全庁的な業務改革の一環(リーディングプロジェクト)で、クールビズのように服装の軽装化・効率化を進めるために、まずは自分たちから・・・という趣旨ならわかります。

出典:wikipedia

5 補足:起きかねないトラブル事例

ちょびっと補足。
なぜこういう話をするかというと、行政で働いていて、服装でトラブルを誘発しかねないなーと思うシーンがちょいちょいあるからです。

前述したように、行政業務の基本は市民対応です。
ほとんどの部署は、仮に自分がその業務を担当していなくても、例えば、エレベーターホールで迷ってるおばあちゃんを案内することがありますし、それ以上に、他部署で厳しく指導されて憤ってる民間事業者と、廊下で対面することだってあります。
そんなときに、目の前の行政職員が、半袖Tシャツの兄ちゃんやノースリーブ媚び媚びの姉ちゃんだったら、どう思うでしょうか。
「お前ら公務員は俺に偉そうに言うくせに、自分たちはナメた格好しとるやないか!!」と怒鳴られるトラブルを誘発しかねないと思うんですよね。
やっぱり俺たちは違う・私は特別じゃなくて、自分たちも他の部署の方々と同じ、いち行政職員だと改めて自覚してほしいところだなと思います。

なので、単純に動きが楽だとか、暖房削減のための暖かくしたいとかで、Tシャツやタートルネック着る気持ちはわかりますが、せめて市民や民間事業者に会わない建物やフロアのときだけにすべきかなと。

また、特に女性は服装が難しく、人によっては過剰に薄着だったりノースリーブで腋見せたりと、正直あんた何しに職場に来てるんだよという女性は、今の時代でもたまにいます。おじさんのちやほや待ち。
流石に市民に失礼なので、毅然と上司や職場が注意すべきだし、それをセクハラと抵抗されないくらいぴしゃっと論理的に組織管理部門が守るべきだと思います。

出典:イラストくん

6 まとめ

以上をまとめると、「常に足元にいる市民の方々を意識し、責任感を持って仕事をして、相手(市民・民間企業)に敬意を払っているか」が服装に出るのが行政職員だと思います。

個人的には、シャツにスラックスの、ごくごく普通の見た目の役所の人が、実は難関資格持っててめちゃめちゃ技術に詳しかったり、困って相談したらめちゃめちゃ対応が優しかったり、ビジネスの話持っていったらめちゃめちゃ本質的でクリエイティブな意見出してきたりしたときが、いちばんかっこいいと思っています。
アメリカのヒーロー映画とか、某サンデー漫画の田中勤さんみたいななやつですね。
私はちょっぴりそれを目指しています。

出典:史上最強の弟子ケンイチ
(作:松江名俊)






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