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2024年ことしのおかず大賞
ご来賓の皆さま――
本日は年末のお忙しい中、また多数の記事がある中で、2024年ことしのおかず大賞授賞式へお越しいただき、心より深く御礼申し上げます。
司会進行は2022年および2023年に引き続き、私、タベル・ノ・スキーが務めさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
ことしのおかず大賞は、本ページの著者であります LUCIA が2024年に食しました料理の中から、もっとも印象に残った逸品に贈られる賞です。独断と偏見のみで選出されたこの賞に、名誉なんていうものは一切ございません。よって賞典がないことも、言わずもがなでしょう。
本賞の目的は、1年間365日、貴重な命をいただきながら生かされていることを心に刻み、またこの受賞式を通して、命を生み出す母なる地球、食材を育ててくれる生産者、私たちのもとへ食材を届けてくれる運搬業者、心を込めて調理してくれる料理人、そして食に関わるその他すべての方々に対して日頃の感謝を表明し、さらには今回ご来賓の方々と共に、互いの命、すでに旅立たれた命、これからやって来る命を祝福することにあります。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、大賞の発表に参りたいと存じます。2024年ことしのおかず大賞は――
(だだだだだだだだ~~~~~~だん!)
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カンジャンケジャン
です。
(ぱちぱちぱち~!ひゅーひゅー。どんどん。ぱふはぷ~)
さて、まずはこちらの料理について、ご説明差し上げたいと思います。
カンジャンケジャン(간장게장)とは、新鮮な生蟹を醤油だれに漬けた韓国料理です。使用する蟹はイシガニやシナモクズガニ、ワタリガニなど、地域やお店によって異なります。
また、カンジャン(간장)は「醤油」という意味ですが、粉唐辛子や薬味を合わせたピリ辛のたれに漬けた、ヤンニョムケジャン(양념게장)という料理もあります。
日本にはないこのケジャン料理ですが、とある方曰く、和食にあっても不思議ではないほどに日本人の舌に合う料理だそうです。
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それではここで、唯一の審査委員であり、審査委員長でもあり、さらには主催者でもあります LUCIA から預かりました受賞理由を、僭越ながら代読させていただきます。
「結局、あなたでした。
初めて出会ったのは15年ほど前のことでしょうか。小さな頃から大好きだったワタリガニ。食べる前から嫌いなわけがないと分かっていました。そして、結婚前の旦那くんにご馳走してもらったカンジャンケジャン――。
もう、想像を軽々と超えていきました。
ワタリガニを生で食べるのは初めてでしたが、深みある醤油の香りをまとった新鮮な蟹肉と、そこに加わる卵とミソの濃厚さといったらもう、表現のしようがありませんでした。さらにほかほかの白米と一緒に食べたときは、別名「ご飯どろぼう(밥도둑)」と呼ばれる所以を感じた気がしました。
しかし、何せあなたは高級料理。
そう簡単に食べられるものではありません。新鮮な蟹を買って、家で作るのも大変(だし、そもそもやりたくない)。だから、今でもあなたと出逢えるのは年に1回程度ですね。
そんな中、今年の11月、あなたは我が家にやって来ました。
もちろん知っていましたよ。あなたが美味しいことなんて。だからこそ、期待はしていなかったんです。だって、美味しいのは当たり前なんですから。
それなのに、ひと口食べてびっくり。その期待を、あなたは再び、軽々と超えていったのです。
口の中に広がる蟹のうまみと海の香り。青唐辛子入りの醤油だれはさっぱりとしていて、蟹の美味しさを上手く引き立てていました。宅配技術が発達したというのもあるでしょう。新鮮でくさみは一切なく、ご飯が進んで仕方がなかったです。
正直、1年のおかず大賞にあなたを選ぶのは反則ではないかという気もしていました。なぜなら、あなたが美味しいのは当たり前だからです。
しかし、これは私が独断と偏見で選出する賞です。特に今年に限っては、あなた以外に思い浮かぶおかずはいなかった・・・。
その功績を称え、ここに表彰いたします。」
(ぱちぱちぱち~)
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さてここで、今回受賞されましたカンジャンケジャン様よりご挨拶を賜りたいところではございすが、皆さまもご存じの通り、カンジャンケジャン様は料理でいらっしゃいますのでお話しすることができません。食されるだけの運命です。
非常に残念ではございますが、もしお気持ちを伺うことができるのであれば、「世界でも生の海鮮料理を食べる文化はそう多くなく、日本の方々にはこの味を最高に堪能してほしい」と、そう仰るに違いないと、恐縮ではございますが、推測する次第でございます。
以上を持ちまして、2024年ことしのおかず大賞授賞式は終了させていただきます。
来年の受賞式に関しましては、どんなレストランのシェフよりも気まぐれな主催者でございますので確定ではない旨、予めご了承いただけますと幸甚です。
それでは最後になりますが、皆さま、どうか素敵な年末年始をお過ごしください。
なお、2025年にお越しいただいた方におかれましては、謹んで新春のお慶びを申し上げますと共に、本年も皆さまにとって一皮も二皮も剥けるような大成長の年になりますようお祈り申し上げます。
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