土足厳禁です。
外国人の人と日本を旅行していると、いつもとは違った視点で自国の文化を観ることができておもしろいなと感じたことはありませんか。
同じものを観たとしても、文化が違うだけで捉え方や感じ方は様々です。
また、「これはどういう意味なの?」と聞かれることも多いため、今までは勝手に知ったつもりになっていたことを、改めて調べ直し、教えるといった作業も加わったりします。これが結構勉強になります。
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数年前のこと、韓国人の旦那と日本を旅行していました。
その日はあるお寺を訪れ、それぞれ好きなように、別々に境内を歩き回っていました。
暫くすると彼がやって来て、こんなことを言いました。
「お寺の中に入るときは、上着を脱がなきゃダメなの?」
え、上着?
上着を脱がなきゃいけないお寺なんてあったっけ?
韓国でもお寺はたくさんあります。日本と同じく土足厳禁ですが、「上着を脱いでください」というお寺は見たことがないので、日本では一般的なのかと聞かれました。
いや、日本でも一般的ではない・・・。
すると彼は、
「やっぱりそうだよね。でも、服を脱げって書いてあるよ」
とのこと。
彼は、遠い昔に(←毎回ここを強調される)日本語能力試験(JLPT)で最も難しいレベルのN1をギリギリ(←さらにここも強調される)合格した実力があり、日本語はとても上手です。
そんな彼が言っているので、書いてあるのは間違いないでしょう。
しかし、上着を脱げというのはおかしい。むしろ、肌を露出することになるため、着ていた方が良いのではないだろうか。
東南アジアなんかだと、腕や脚が露出していると寺院には入れません。そのため、お寺に入るときには上着を着たり、布を巻いたりする観光客が多くいます。いくら国が違うと言っても、同じ仏教です。そのあたりは変わらない気が・・・。
「ということは、このお寺独自の理由かな。宗派と関係があったりするのかもしれないね」
なんて話しながら向かった先で見たものは・・・。
あ~~~~~は~~~~~ん。
どうやら、
ここでは きものを お脱ぎください。
と読んでしまったようです。
なるほど。確かに読める。そう読める。間違ってはいない。
「ここでは着物をお脱ぎください」と思った彼。
着物=着ている服。しかし、ここはお寺。「着ている服をすべて脱げ」ということはありえない。だから、「上着を脱げと言ってるんだろうな」と思ったそうです。
なるほど。すごく納得してしまいました。
私たちは無意識に、「履物以外を脱げなんて言われるわけがない」と思って見るので「はきもの」と読めますが、そんな先入観は一切ない人が見たら「きもの」に見えても不思議じゃないですよね。
こんなところで、無意識に潜む思い込みが人の言語理解に与える影響を感じたのでした。
そして、意味を正しく伝えるためには、句読点が重要なのだということを、改めて実感しました。
ここで、はきものをお脱ぎください。
たった一つの読点が、誤解を防ぎます。