#184 原穴というツボとは? 【太淵、合谷編】
私は鍼灸師としても活動しておりますが、
東洋医学の中では、未病という考え方
がございます。
未病とは、まだ病気にはなっていないものの、
健康な状態から離れつつある状態を指します。
未病という言葉は、代表的には約2500年前の古医書であります黄帝内経というものに出てきます。
また、約1400年前の千金要方というものにも
載っております。
それ以外にも載っている医書が
数多く存在しています。
これらの中では、古代の医者は
医術が高ければ高いほど未病を大切にし、
病になる前の段階で予防治療をすることができる
医者が高名であると言われておりました。
未病の段階で治療していくことを
未病治療と言ったりしますが、
未病治療とは、身体の状態を観察して、
患者さんのバランスを見極め、
「いまはこの状態でこの症状だが、
やがてはこんな症状も出るだろう」と予測し、
先回りしてアプローチをする治療と
いうこともできます。
その中で、経穴(いわゆるツボ)
を行っていく場合、仮に病の原因である臓腑に
焦点を置くのでありましたら、
臓腑の病に用いるツボに要穴というものがあり、
その中でも代表格のツボを原穴と呼んでおります。
原穴とは、東洋医学において、
臓腑の原気(各臓腑特有の気)が巡り、
とどまる部位を指す経穴(ツボ)の
ことをいいます。
各経脈の中で最も重要なツボとされておりまして、原穴の反応から臓腑の状態が分かったり、
臓腑機能の調整をすることも
できるとされています。
原穴は全部で12穴あり、そのほとんどは
手首回りや足首回りに存在しております。
これから、原穴の12穴を2穴ずつに分けまして
紹介していきたいと思います。
⑦手の太陰肺経:太淵
⑧手の陽明大腸経:合谷
⑦手の太陰肺経:太淵
太淵の位置としましては
【手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間,
長母指外転筋腱の尺側陥凹部】
となります。
ご自身で探していただく際は
手のひら側の手首のシワの線上、親指の付け根付近でくぼみがあるところがツボになります。
軽く押すとドクドクと脈打っているのが
分かりますので、目安にしてみてください。
手首をつかむようにして、反対の親指で優しく
押してみていただくと押しやすいかもです。
太淵を刺激することによる効能としましては
・咳や喉の痛み、鼻炎、鼻づまりなどの風邪症状に効果的
・咳嗽や喘息(呼吸器系)や、嘔吐(消化器系)、心痛(循環器系)などの臓腑の病症に効果的
・湿疹やじんま疹などの皮膚炎に効果的
・咽喉粘膜の渇きなどの頭顔面部の病症に効果的
・母指痛、肘・腕・手首の痛み、腱鞘炎に効果的
・肺の機能に病気などがあると、押すと痛みを
感じやすいところになります
などがあったりします。
手の太陰肺経は手の親指の先から始まり、
腕を通って肩に至り、最終的には
肺に繋がっています。
肺の健康、呼吸、免疫系に重要な役割を
果たしております。
太淵は肺の原穴であるため、肺疾患に対して
高い効果が見込めたりします。
⑧手の陽明大腸経:合谷
合谷の位置としましては
【手背、第2中手骨中点の橈側】
となります。
ご自身で探していただく際は
手の甲の親指と人差し指の骨が
交わる部分のくぼみ、やや人差し指寄りに
位置するところがツボになります。
合谷を刺激することによる効能としましては
・頭痛、生理痛、腹痛、歯痛、肩こり、下痢、便秘などの痛みを緩和する
・内蔵の不調
・血流を促し、筋肉の疲労回復や脳の活性化を促す
・自律神経を整え、イライラやストレスなどの精神的な疲れに効果がある
・精神不安定、集中力低下、無気力などの症状に効果がある
・肩こりや腰痛などの痛みを緩和する
・歯痛などの鎮痛効果が高い
・高血圧や花粉症、いびきや耳鳴りなど全身の様々な不調に効果がある
などがあったりします。
合谷は「万能のツボ」とも呼ばれ、
ツボを押すことで血液の流れが促進され、
様々な症状に効果が期待できます。
合谷は全身に365個ある経穴の中でも、
最も脳に刺激が伝わりやすい経穴だと
言われています。
研究によっては、右手の合谷を刺激すると左脳の血流、左手の合谷を刺激すると右脳の血流が活発になることが明らかになっています。
そういった意味でも、日々のセルフケアとして合谷のツボを刺激していただくことをオススメします。
ツボはピンポイントに思われがちですが、
500円玉ぐらいまでの大きさの範囲があるとも
言われておりますので、
触っていただきながら痛気持ちいいところを
探していただければと思います。
ツボ押しの「コツ」は少し強めに押すことです。(強刺激には要注意)
5秒くらい押したら5秒離すを1セットとして、
3~5回を目安に繰り返してみてください。
継続して行っていきますと、段々と痛みや
コリコリしたものが薄れていきます。
原穴を刺激して、より良い日々を
お過ごしいただけますと幸いです。